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お試しパーティ結成

半年以上ぶりの更新となります。

ギルドに向かうと、昨日救った少女――アリシアが、受付カウンターの横で立っていた。


「あっ、ユウトさん!おはようございます!」


「お、おう。もう平気なのか?」


「はい。お姉ちゃんも落ち着いてきて、今は医務室で眠ってます。今日は……ちゃんとお礼が言いたくて」


アリシアは深く頭を下げる。


「それと……お願いがあるんです。少しの間だけでも、一緒に冒険してくれませんか?」


「……一緒に?」


突然の誘いに驚いた。

ずっとソロで動いてきたし、誰かと組むことなんて想像すらしていなかった。


「お姉ちゃんが治るまで、私1人で依頼に行くことになるんですけど……やっぱり、まだ怖くて。でも、諦めたくないんです」


俺は、昨日のダンジョンの2層での苦戦を思い出す。

たしかに、1人じゃ限界もある。


「……分かった。今日1日だけな。お試しってことで」


「ほんとですか!?ありがとうございますっ!」


アリシアの顔がぱっと明るくなる。その笑顔を見て、少しだけ胸が温かくなった。



今日の依頼は「鉱石採取」。

森の奥にある岩場から特殊な結晶を採る仕事だ。


俺たちは道具屋でピッケルを借りて森へ向かい、目的地の岩場に到着した。


「これが……採取対象の鉱石ですね。黒くて固そう」


「うーん……普通のピッケルじゃ無理かもな」


試しに叩いてみたが、全く歯が立たない。

その時、俺は荷物袋を漁るフリをして、木製ピッケルを5本取り出し――周囲に気づかれないよう、陰で【オールシンセシス】を発動した。


「合成完了:強化ピッケル」


光が弾けると同時に脳にシステムアナウンスが流れた瞬間、俺はそれをすばやく荷物の中に突っ込み、何気ない顔で取り出す。


「これ、予備のピッケルなんだけど……ちょっと丈夫そうだったから持ってきたんだ。試してみるわ」


俺は合成でできた銀色の“強化ピッケル”を岩に打ちつける。

「ゴリッ」という音と共に、黒い鉱石が削れる。


「すごい……!ユウトさん、準備いいですね」


「ま、道具だけはちゃんと揃える主義なんでな」


内心ヒヤヒヤだったが、なんとかごまかせた。



採取を進めていると、茂みからずるずると何かが這い出してきた。


「アーススライム……!」


4体。こっちに向かってくる。


「アリシア、後ろで待機!回復を頼む!」


「はいっ!」


俺は剣を抜いてスライムに斬りかかる。

攻撃パターンは単調だが、粘液のせいで手応えが鈍い。

さらに剣の刃が欠け始めているのが分かった。


「くっ……やっぱり耐久がもたないか……」


荷物袋を再び探るフリをしながら、木剣を5本取り出し、影に隠れて【オールシンセシス】。


「合成完了:スウィフトブレード」


現れた新しい剣をすばやく抜く。


「これ、さっきの予備の中にあった。軽くて扱いやすいな」


「それ、初めて見る形ですけど……すごく強そう!」


「ちょっと知り合いからもらったやつでな。限定品らしい」


適当なウソでごまかしつつ、スウィフトブレードを振るう。

軽量な分、連続攻撃がしやすく、一気にスライムを斬り伏せていく。


最後の1体を斬り終えると、周囲に静けさが戻った。



「ふぅ……助かったか」


「ユウトさん、すごかったです!連撃、めちゃくちゃ速かった……!」


「まあな。武器に助けられただけだよ」


アリシアは少しだけ顔を赤らめながら笑った。


「でも、やっぱり……ユウトさんと一緒だと安心します。よかったら、また一緒に行ってくれますか?」


「……今日だけのつもりだったけど。まあ、気が向いたら、な」


俺は少しだけそっぽを向きながら言った。

アリシアの「ふふっ」と笑う声が、森の中に心地よく響いた。


ギルドに戻り、報酬を受け取ると、受付嬢がほっとしたように微笑んだ。


「今日はお二人とも無事でよかったです。ユウトさん、すっかり頼れる冒険者ですね」


「……そう見えるだけですよ」


そう言いながらも、内心では少しだけ――

“誰かの力になれた”という実感が、誇らしく感じていた。

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