安楽椅子ニート ショートショート スマホを置き忘れただけなのに
瀬能さんが居酒屋にスマホを置き忘れた。
「お前、瀬能さんの話、聞いた?」
「聞いた?・・・いえ、特に何も伺っていませんが。」
「瀬能さん、スマホを飲み屋さんに置き忘れて来たんだそうだ。1か月前くらいに。気が付いて、店に戻ったけど、たかが十分くらいで無くなっちゃったって。ああいうのって、盗られたって言わないそうなんだよな?盗られたっていうと盗難になるから。あくまで、お店は責任、負いたくないから、見てない、触ってない、しか言わないって。」
「まあ、お店も、お客さんの失くした物の責任を負いたくありませんものね。気持ちは分かります。」
「そんなんで瀬能さん、スマホ無くなっちゃったらしいんだよ。十中八九、盗難だけどな。」
「瀬能さんも災難でしたね。・・・あれ、紛失の手続きとか、大変でしょう?木崎さん、瀬能さんにその手続き、頼まれたんですか?」
「いや、違うんだよ。ところがな、失くしたスマホが出てきたんだそうだ。」
「ああ。良かったじゃないですか。瀬能さん、運がいいですよ。普通、出てきませんよ?海外に売り飛ばされるか、中のデータ、抜かれて犯罪に使われるか、どっちかですよ。」
「それがな、驚くなよ。届けてくれたのが、スペイン王朝の末裔。超がつく、金持ち。そいつが瀬能さんに求婚したんだってよ!」
「あの、木崎さん。・・・スマホを失くしたら、資産価値が倍、倍、倍になって返ってくるような、わらしべ長者の物語ではないですよ?」
「ちがうの?」
※本作品は全編会話劇となっております。ご了承下さい。