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才女なのに悪役令嬢ポジの私が、腹黒ヒロインをたたきのめすまで

作者: Arcanum

 「あなたが今言ったことは噓でしょ?エミリー。」

 「そんなわけないですよ、私が第2王子の許嫁フィアンセでいらっしゃられるオリビア様に噓をつくわけないじゃないですか。」

 相も変わらず彼女は真剣な表情で首をかしげる。でもそれは確実に嘘だ。だって私は、嘘をついている人がわかるのだから。

 いくら仮面顔ポーカーフェイスだろうが、いくら嘘をつく時の声が普段の声と変わらなかろうが私にはわかる。勘じゃないのかって?違うね。それがこの世界の転生する時の条件だったからだ。

 過去の話をしよう。

 

 私には小学3年生の子供がいた。夫は不倫をして家を出た。消息は不明だ。残業ではなく、女の家で、夜の残業をしていたらしい。私の思いは何だったんだ?生きるのが嫌になる。でも、めげることなくシングルマザーとして子を育てる。私はペンのバネづくりをする会社に勤めている。その道では、大企業と呼んでもいいほどの会社だ。そして、そんな私も今では部長という立ち位置だ。そして部長とは毎日がストレスなのだ。

 「君たち、しっかり仕事をしなさい!」

 私はいつも新入社員の二人組に声をかける。彼らはずっと談笑している。しかも私の席の前で。叱るのももう疲れた。いい加減にしてほしい。だが、これは日常茶飯事だ。まぁ、日常なんてものは、崩れ去るから日常なんだけどね。私の小言に嫌気がさしたのか、ある日彼らは逆ギレした。

 

 「部長、いつもいつも真面目にやれとか、うるさいとか言ってますけど結局仕事は終わらせるんだしいいじゃないですか。」

 「君たちの声で、集中できず仕事が進まない人たちもいる。ここは君たちだけの会社じゃないんだ。」

 「ペンのバネを作るのに必要な集中力は、この程度の声で乱されるほど低レベルな物じゃないと思いますけどね。」

 私は言葉に詰まった。彼らの態度はおかしい、言ってることも暴論だ。ただ、思ってしまったんだ。一理ある、と。

 すると立て続けに言った。

 「桜の花小学校に刃物を持った男が侵入したらしいですよ。」

 は?桜の花小学校は私の息子が通う学校だ。そう思った時には体が動いていた。そして、冷静ではなかった。

 「あぁ。部長、冗談ですよー。」

 という新入社員の声が、耳に入らないほどには。


 そして、あとはテンプレだ。それが嘘だったことに気づき、急いで会社に戻ろうと右折したとき、前から直進してきた車とぶつかった。自分でも、言ってて馬鹿らしくなる。

 死んだと思ったとき、私はすべてが真っ白の空間にいた。すると、ゆらりと人影が現れる。

 「私は女神です。あなたには異世界転生していただきます。才女の悪役令嬢として。いきなりこんなことを言われて驚くかもしれませんが拒否権はありません。お詫びに、一つ、どんな力でも差し上げましょう。」

 不審なこいつは何なんだ?そんなことを考える間もなく先に口走っていた。

 「嘘を、嘘を見破れる能力が欲しい。3度も嘘のせいで辛い目にあいたくはない。」

 「わかりました。それでは良い人生ライフを!」



 

 ということで、噓を見破れるのは本当だ、と分かってもらえただろう。でも、噓を見破れるといったところで信じない人間が多いのも事実だ。いや、大半の人間はそうだろう。そして今、腹黒ヒロインに許婿を寝取られそうになっている。



 「エドガー。そろそろ結婚しませんか?」

 「いいね、そうしようか。」

 私とエドガー、そして、エミリーの三人は幼馴染というやつだ。しかし、エミリーは引っ越してきたのでつながりは厚くない。上級貴族のエミリーでなく、下級貴族の私が第2王子と結婚できるという話が出るのもすべて幼馴染で、エドガーととても仲がいいからだ。しかし厄介なのが、この世界の設筋書き上、エミリーがヒロインで私が悪役令嬢ポジ、というところだ。つまりこのままいくと私は許婿を寝取られる、ということだ。それは何としても避けたい。この世界に転生した以上、この世界では楽しい人生ライフを送る義務がある。いつまでも悪役令嬢ポジ、というならそんな筋書きぶち壊してやる。すると、やはりエミリーが動いた。

 「エドガー。」そういうと、彼女は服をはだけた。その体は青あざまみれだ。

 「助けてください。私は常習的にオリビアに暴力を受けていました。」

 「嘘だろ?オリビアはそんなことする奴じゃない。」

 さすがにそれは無理がある。タイミングが良すぎるし、何より、信憑性がなさすぎる。

 「これを聞いてください。」

 「この、エドガーに群がる害虫が。お前みたいな豚、早く死ねばいいのに。」と私が言っている声が録音されている。

 だが、私はそんなこと言っていない。つまり、魔道具で捏造しただけだろう。エドガーもそれは分かっていた。

 「そんなことあるわけない。俺とオリビアの結婚が嫌なのかもしれないけど、それならストレートに気持ちを伝えるべきだ。」

 あれ?待てよ。そんな見え透いた嘘をエミリーが、こいつがつくはずがない。そうか、こいつが服をはだけた時点でもう術中にはまっていたのか。

 「はっ。私としたことが、ごめんなさい、いや、ごめんね。エドガー!私はあなたのことを昔から愛していたの。ずっとずっと好きだったの。でも、言い出せなかった。5年前、あなたとオリビアが許婚になった日からオリビアに釘を刺されていたの。エドガーは私のものだから、手を出したらダメだって。でも、権力が怖くてこんな姑息な真似しかできなかった私はエドガーのような清廉潔白なお人にはふさわしくないわ。最後に気持ちを伝えられて良かった。今までありがとうエドガー、そして、さようなら。」

 「まて、エミリー」

 「どういうことだオリビア?

 「今のは根も葉もない嘘よ。」

 「そんなはずないじゃないか。彼女は、彼女は泣いてるんだぞ!」

 ダメだ、エドガーは優しすぎる。そして物語は初めに戻る。


 「あなたが今言ったことは噓でしょ?エミリー。」

 「そんなわけないですよ、私が第2王子の許嫁フィアンセでいらっしゃられるオリビア様に噓をつくわけないじゃないですか。」

 相も変わらず彼女は真剣な表情で首をかしげる。つくづく腹黒い奴だ。でもそれは確実に嘘だ。でも、それが証明できないことがとても歯がゆかった。エドガーが彼女に味方してしまえば言い返せるはずもなく、私はあえなく許嫁フィアンセではなくなった。ただ、とても悔しかった。


 私は幼少期から、彼女は才能がある、何をやらせても一番だ。王族に嫁がせたらどうだ?なんて話が山のように噂されていた。でもその頃の私はそんなことなど微塵も思っていなかった。


 才能、才能と人々は私をほめる。でも、才能だけでは何もできない。身長230cmの人間がいるとしよう。その人に何も教えずに初めてバスケットボールをさせてみるとする。プロ並みの活躍は出来るだろうか?確かにある一定は出来るだろう。でも、努力しないと意味がない。この子には、才能が、とか潜在能力ポテンシャルが、とか。そういうことを聞くたびにイライラしていた。そんなわけないじゃないか。才能とか、潜在能力ポテンシャルなんてものは努力しないと何の意味も持たないんだ。それに、人が見切れる才能なんてものには限度がある。だから、才能があろうがなかろうが私は私のやりたいことをしてきた。

 その結果が才女とよばれ、腹黒ヒロインに許婿を寝取られるのが関の山なんて皮肉なものだ。でも、何とかして一矢報いたい。あいつを、たたきのめしたい。そうして私は、王城に潜入する。彼の、「許嫁フィアンセ」として。そして数日後、この国の闇は大体すべてつかんだ。あとは潜るだけだ。権力をフル活用して、騎士団の娼婦となった。辛かったが耐え忍んだ。すると、上級貴族であるエミリーの父、モルロットの目に留まり、王城の地下牢へと連れていかれた。ほかにもたくさんの女がいた。吐き気がする。あとは、開けて穴から脱出して外に言いふらすだけだ。私は急いでここを出た。

 すぐに騎士団が来て対処してくれた。この国で違法の性奴隷を所持していたモルロットなどその他大勢の貴族はみな牢屋行きだ。そして、その子供のエミリーも数々の悪事が露呈した。

 そんなこんなで、「才女なのに悪役令嬢ポジの私が、腹黒ヒロインをたたきのめすまで」の道のりは終わりを迎える。




 「エドウィン、はしゃぎ過ぎてはだめよ。」

 「いいじゃないかオリビア。」

 「もう、エドガーはほんとにエドウィンに甘いんだから。



                                            ~完



 

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