誕生日と正月とクリスマスと夏休みが一気にきたよ!!
新学期が始まった。
橘平は二年生に上がったが、学校環境に特に変化はない。変化があったことなんてあったかも、定かではない。小1から同級生はみな一緒。変わるのは学年と教室と担任と勉強の内容と…それはそれで大きな変化ではあるけれど。
時間のあると思っていた春休みはあっという間だった。夏休みはやっぱり短いけれど、春休みはもっとだ。この間の大きな収穫と言えば、鳥居を発見したことだろう。
桜曰く「絶対、封印の秘密がある。神社の娘の直感」。
橘平もこの鳥居には何かあると感じている。今まで「入ってはいけない」とされていた山の道を抜けると出現した鳥居だ。封印を解かれないように施された何かに違いない。
朝、橘平が席に着くと、優真がダッシュで近づいて来た。
「おはよう。向日葵さんのこと、本当にありがとう。ほら、帰りは感動しすぎて感謝できなかったから」
「わざわざそんな」
「誕生日と正月とクリスマスと夏休みが一気にやってきたみたいな感じだよ。ありがとう、誕生日プレゼント、クリスマスプレゼント、バレンタインチョコ、お歳暮、お中元、旅行のお土産」
「えええ、そこまで」
「橘平くんへの誕生日プレゼント、どうしよう。向日葵さん以上のもの、それか同等の価値の物なんて…ないよ」
いいすぎでは、と思った橘平だけれど、「好き」とはそういうことなのだろう。推し量れない無限の価値。好きな作品の話をする優真も、向日葵とお近づきになれて興奮する優真も(だいぶ面倒くさいが)、強いエネルギーに溢れている。
優真と友達になったのは、橘平に決定的に圧倒的に足りないものを持っているからかもしれない。
「俺も優真と友達で良かったよ。ありがとう」
橘平の率直な気持ちに、優真は照れ臭くなったが、それを隠しつつ「まあ、そうだね。僕もだよ」と返す。
「君と友達になったのは、向日葵さんと出会うためだったのかもしれないな。つまり君はアレの天使として僕の前に現れたんだね」
「ん?」
橘平の友情と優真の友情には、交わらない道があるようだ。すべて分かり合える相手などいないのだから、それは諦めるしかない。それでも友人は友人だ。親友だ。
「向日葵さんってさ、お付き合いしている人いるのかなあ…」
「い…やあ、そういう話はしたことないから知らないなあ?」
優真は橘平の前の席の椅子に座り、友人にぐいっと迫る。
「じゃあ、いないかも?」
あの二人が正式にはどういう関係なのか。
橘平にはわからないので、「いる」とも「いない」ともいえない。どちらも不正解なような気がしていた。
お互いを想いあっているのは確実なのに、もう一歩も二歩も三歩も、踏み越えられないものがあるように見えた。
「知らないから…いない可能性もありえるし、いる可能性もありえるし」
「ふむ、思考実験だね。開けてみなければわからない何が入っているか分からない、箱のようなものか。いない可能性があるなら、僕がアプローチして成功する可能性もあるわけだ」
「はあ?いや、こんなガキ相手にしないっしょ」
「そんなに年が離れているわけじゃない。うん、僕、頑張ってみるよ。どんな人が好みなんだろう、知ってる?」
仮に葵のような人が好みだとすると、面倒くさそうな性格はクリアしているかもしれない。失礼だがそれは短所だ。
二人の長所、重なるところが見当たらなかった。
見た目なんて正反対どころじゃない。別の生き物だ。
強いて、一つ上げるなら。
「本…が似合う人かな」
え、僕じゃん、と優真は期待のこもった目をしていた。
「あと、愛のために命を捨てられる人かな」と橘平が付け加えると、え?という顔をしていた。
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