表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧版)神社の娘  作者: 坂東さしま
妨害と桜
70/77

大人気ロボットアニメ鑑賞会ファイナルシーズン②

少し書き直しました;;

「今日はすっごい楽しかったね~さっちゃん」


 運転しながら向日葵が声をかけるも、桜から一向に返事がなかった。疲れて寝たのかと助手席をちらと見ると、桜は無言でぼろぼろと涙を流していた。スカートには池ができている。


 楽しかったはずなのに、なんで!?


 向日葵は急いで車を脇に寄せて停めた。


「も、もうアニメは終わったよ~?思い出してかんどー?」


 桜はこらえきれなくなったのか、わーと声をあげて泣き始めた。

 これはアニメを観た感動の涙ではない。


 向日葵は原因が全く分からず、手を握ったり開いたり、服のすそを掴んだりしている。

 同年代の子たち、しかもみんな優しい子、遊べて楽しかった、嬉しかったはずで、悲しくなる出来事はなかったはずなのだ。


「さくら、ちゃん」

「ごめんね」

「え?」

「本当にごめんね。ひま姉さんと葵兄さんが、危険な仕事してるのは、私のせい。私が、二人を、巻き込んだから」

「なな、何言ってるの~?さっちゃんのせいなわけないでしょ、役場は親戚に言われて」


「封印、解いちゃったから、妖物、強くなっちゃったんだもん。わ、私が、解こう、なんて言わなければ、二人は危険な仕事をしなくて…ううん、私なんて人間が、私がいるからだ」

「さくら…」

「死なないでぇ!!」

「ええ?」

「さっき、よっしーさんが、クララがひま姉さんに似てるって。ヨハネスも葵兄さんに似てるし、あの物語みたいに、二人が死んじゃったら、私」


 幼子をあやすように、でも力強く、向日葵は桜を抱き寄せた。


「大丈夫だよ。私も葵も死なない。さっちゃんを守るんだから。それにさ、始めちゃったら終われないでしょ?再封印するって言っても、やり方がよくわかってないんだし、早くやっつけちゃおう。そうすれば全部解決だよ」


「ううう、ううう、ごめんなさい、二人を…二人を私から解放したくて。解放してあげたいんだよぉ。二人が、私のせいで苦しむのは、もうイヤなの。わ、私は、二人が大好きだから!!」


 一つ大声をあげ、桜はしばらく呼吸だけになる。落ち着いたように見えたが、また静かに、ぽとん、ぽとんと落ちる涙とともに話始めた。


「いやなの…私何度も死のうと思ったけど、でも、私が死んでも二人は…村から解放されない…それに椿が犠牲になる、だけ…やっぱり、なんとか、なんとかしないと、私が」


 なぐさめる言葉なら、いくらでもある。しかし、それはただの言葉であって、桜を真にほっとさせることも、ましてや問題の解決にもならない。


 桜が最後に泣いたのはいつだったか。向日葵は記憶を辿る。

 おそらく菊が死んだ時だ。


 あれ以来、桜は泣いていない。ずっと、辛い気持ちに蓋をして、釘も打ち付けて、絶対に開かないようにしていた。今日をきっかけにそれは釘ごと吹き飛んで行って。


 彼女はただ、泣き続ける桜を見守る事しかできなかった。



 ばいばい、とメッセージを送りながらも、向日葵は葵にケーキを届けにきた。

 玄関を開け、彼の顔を見た途端、ぎゅっと丸めて心の中に押し込めていた感情が飛び出てしまった。もう、抑えきれなかった。


 彼女は桜の倍の時間は泣き続けた。本当にひたすら泣いただけで、桜のように涙のワケは話さなかったし、葵も聞こうとしなかった。

 彼はただ、彼女の側にいた。


 向日葵は涙が止まると同時に、電源が切れたようにぱたり…と倒れそうなところを葵が受けとめた。すーっ、すーっと静かな寝息を立てる彼女を、そっと、横抱きで寝室に運んだ。



 次の日、まだ空が明るくなるかならないかという時間。向日葵はぎゃーっと叫ぶことになった。

 その声に、隣で寝ていた葵も目を覚ましてしまった。


「うるっさ!なんだよ!?え、まだ夜中?」

「なんだよじゃないよ!!私はなんでここにいるのー!?えー!?また酒飲んだ!?」


 早起きしたおかげで、向日葵はなんとか、朝帰りがばれずに家の門をくぐれた。らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ