朝陽と鳥居
二人は鳥居に駆け寄る。桜は真っ先に、額束に彫られている模様に目が行った。お伝え様の神紋である。
「え、これ、お伝え様の鳥居なの?」
「もしかして…あのミニチュア、森の前に鳥居があっただろ?これなんじゃないのかな」
「そうか、そうかも…あ、写真撮ろう、二人に送らな…」
とは言ったものの、二人とも写真が撮れる道具を持っていなかった。スマホはテントでお休み中だ。
「いや、二人も連れて来よう。写真より見てもらった方がいいよ」
「そう、そうね…あ」
かがんで鳥居をくぐろうとした桜は、目の前の風景からあることに気付く。
「目の前にお伝え様がある…」
八神の鳥居は、神社の正反対にあったのだ。
鳥居からまっすぐ見える景色。円形の森、そしてお伝え様。あのミニチュアが示していたのはこれだったのかと、二人は解釈した。
「もしかしたら、ここが一の鳥居、神社の入口にあるのは二の鳥居。ここから何かが始まっている?」
「何か、何だろう」
「うーん、きっと封印の何か!森だって誰かが言ったわけじゃないのに、入っちゃいけないって、みんな思わされてる。この山の頂上もそう、きっと、何か、何か…」
「それは、今ここで考えても分からないけど、一歩前進できた。きっとそうだよ」
それから二人はテントまで下山した。
ちょうど、テントから這い出てきたぼやけ顔の優真に遭遇した。
「あれ?もう起きてたの君ら?」
「ええ、優真さんよりちょっと早く。お散歩してきました!」
もー誘ってよお、と言いながら、優真はよいしょと四つん這いから進化した。
朝ご飯はカップのコーンスープとコッペパン。
鍋でお湯を沸かし、お玉で即席カップに湯を注げば、あっという間にできあがり。昨夜の即席ラーメンの匂いも、朝の山に広がるインスタントスープの香りも、一生の思い出に残りそうだった。
そして桜の持ってきた「とっても美味しい」コッペパン。缶詰のツナとコーン、マヨネーズを混ぜ、切込みに詰めた。
パンは桜と母で一緒に作ったという。温かみのある家庭の味で、本当に「めっちゃうま!」な味で、男子二人のテノールユニゾンに、桜の可愛いソプラノの笑い声が重なった。
「桜さん、よく聞くとかわいい声だね。やっぱアイドルだ。歌ってほしい」
「優真、そろそろ気持ち悪いからやめてほしい」
「え?」
顔だけ笑う桜だった。




