表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧版)神社の娘  作者: 坂東さしま
物語と桜
55/77

アニメも社会も裏を読め

 ついに、プラモデルを、作る。

 

 桜はニコニコ顔で午前中から寛平の家にやってきた。桜は寛平のしっかりした指導の下、クラシカ・ハルモニの主人公機体を組み立てていく。


 橘平は横でずっと見ている。


 のもヒマなので、久しぶりに絵を描き始めた。組み立てに夢中の祖父と桜をモデルに、鉛筆でさらさら、すらすらと。


 少し前まで、この家で女の子の孫たちと暮らしていた祖父はきっと、桜をその子たちと重ねているだろう。橘平が子供の頃よく見ていた表情をしていた。


 静かに流れる時間、パーツを切り離す音、組み立てる音、寛平の説明。どれもが桜にとっては新鮮で楽しかった。


 もちろん、初心者の桜が午前中だけで組み立て終わるはずもなく、昼休憩となった。

 祖母は友人らとおしゃべり会らしく、三人での穏やかな昼食だ。


 橘平の祖母が用意してくれたご飯、味噌汁、肉野菜炒め。


 そして手作りたくあん。

 大根そのままの白と、クチナシ色の2種類だ。橘平は祖母のたくあんだけで何杯でもご飯が食べられるほどで、今日も肉野菜よりもたくあんをポリポリしている。


「桜ちゃんさ、ここまで、すごーく丁寧でいいよ。完成が楽しみだ」

「お褒めに預かり光栄です。おじいさまのご指導が素晴らしいからです。ありがとうございます」


 いやあ良いお嬢さんだ、と寛平は桜のことがかなり気に入ったようだ。

 そういえばさあ、と橘平はアニメを見直して、二人のおかげで見方が変わったことを話した。


「お話だけじゃない、社会で起こっていることも、表面だけの情報じゃなくて、裏も読めってな。橘平はこれをアニメで学べた。いい勉強になった。桜ちゃんのおかげだねえ」


 こうした出来事を桜にリンクさせるほど、寛平はもう桜にベタぼれだ。


「そうだ、じいちゃん。仏間にあった神社のミニチュア。あれ出してよ」

「どうした?」

「午後はあれの絵でも描こうかなって」


 ああ、はいよ、と、寛平は食後にミニチュアを持ってきた。

 とても精巧なお伝え様。橘平は模写をしながら、ヒントはないかと探してみるつもりだった。


 ついにクラシカ・ハルモニ主人公機が完成し、今日の目標は達成した。


 初めてなりにはうまくできたわ、と桜は上機嫌だ。寛平も素晴らしいと持ち上げ、また一緒に作ろうね、などデレデレだ。


 完成してしまったが、まだ帰るには早い気がした桜は、橘平に「もうちょっとお喋りしていい?」と聞く。「もちろん」と橘平は答えた。


 二人は庭へ出た。桜が若い男といるところを見られないよう、かつて捜索した蔵がある家の裏あたりをぶらぶらしながら話す。


「野宿っていつするの?」

「え、桜さん本気?」

「本気と書いてマジだよ。お泊り会ってやつみたいで楽しそう」

「お泊り会は家でしなよ…まあ来週を予定してるけど、俺の友達来るんだよ?いいの?」


 そう、ついにスケジュールが決定したのだ。場所は八神家の裏山。山の中でも寝やすそうなポイントは事前にチェックしてある。


 また幸次に事情を話したところ、親戚からテントと寝袋を借りてくれることになった。


 もう野宿というかキャンプだ。そう、ただの春キャンプ。夕飯はBBQ、とはいかないが焼肉でもしようかと思っているくらいだ。


「別にいいよ。『なゐ』も大事。でも今しかできないことも大事。ヘンかな?」

「変じゃないけど、お家への言い訳は?」

「ひま姉さんの所に泊まる、のつもり。おじい様とプラモ合宿でもいいけど」

「プラモ合宿?いやあ、どうだろう…それってお家の人許すのかな…」


「おじいさんだから大丈夫よ。あ、そうだほら、神社見つけたことも話さなきゃいけないし、また4人で集まれないかな。日曜とか…橘平さん今度の日曜大丈夫?」

「OK」

「ありがとう。二人にも聞いてみるね」


 あ、そうそう、と橘平はこの間の試合動画を桜に見せた。桜は葵に変化を感じる、と話す。


「変化?」

「うまく言えないけど、うーん、やっと本気出したって感じ。できるのにできない、自信が無かった。よくわかんないけど」


 橘平はもっと分からないが、最近の葵は出会った頃より表情が豊かになったな、とは感じている。


 そういえば、葵さんに書いたお守りは効いたかなあ。


 橘平はもやもやと、昨夜の惨事を思い出す。また酔っぱらった向日葵から電話があったことだ。


 あれは誰のせいの電話なんだ?


 聞きたくなかった…。隣に誰かいたような気がするけど…葵さんかなあ。葵さんも聞きたくなかっ…いや、あれってもしかして…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ