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(旧版)神社の娘  作者: 坂東さしま
物語と桜
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大人気ロボットアニメ鑑賞会-第一期

『ありがとう』

「何が?」

『森の扉の絵、描き始めてくれて』

「ああ、うん」

『君のおかげだよ。これが終わったらさ、次は神様を描こうか』

 神様ってなんだ?




 終業式に返された通知表は、可もなく不可もなく。

 橘平にとって今、成績の優先順位は低いので赤がないだけ御の字。


 それよりもだ。


 明日から春休みなワケで。


 宿題は大してないし、残りの時間は悪神に関することや、自分の身を守れるよう鍛練することに費やせるワケなのだ。


 ゆる陸上部の練習も、最近は鍛練のつもりで励んでいる。そのおかげか、タイムが著しく伸びていた。大会に、という顧問に張り切って反対して、橘平は春大会を辞退した。


 桜たちのために頑張れる時間が増えるのは、嬉しいことだった。


 今日も今日とてそうしたいところだが、高校生にも付き合いというものがある。


 一番の友人、大四優真とのお付き合いだ。最近、土日はあの3人とばかり会っていて、優真の誘いを断りまくっていた。 そろそろ遊ばないと友人が消えてしまう。


「昼ご飯食べたらさ、うち集合ね!実は観たいものがあって、一緒にと。よっしーもくるよ」

「ああ、いつもの鑑賞会か。いいよ。何の映画?宇宙?魔法?サメ?ナマケモノ?」


 優真は海外映画、特にファンタジーやSFといった空想ものが好きだ。たまにドン引くほどのB級映画も持ってくるが。


 今日もきっとそういう類のだろう、と踏んでいると。

 ううん、ええと、と優真は顔がほんのり赤くもじもじと言いにくそうである。


 もしかして、言えないような作品なのだろうか。もしや向日葵さんに似た人が出てる、そういう何とか?それは…。


「もしかして、その」

「クラシカ・ハルモニ」


 先日、桜と作り損ねたロボット。あのアニメである。


「なんだよ、それか。なんで言いにくそうに」

「ほら僕、アニメ全然見ないからさ、なんか恥ずかしくって」


 オタクっぽい、というよりオタクの優真だが、アニメは専門外なのだ。


「ほとんど見ないからさ、ひとりで見るの恥ずかしくって。子供っぽいかなって」


 二度も恥ずかしいというのだから、優真にとって未知のジャンルだからなのかアニメだからかわからないけれど…恥ずかしいのだろう。


 橘平には一人でアニメを見ることの何がそうさせるのか、全く理解不能だ。

 子供っぽい、ではなくまだ子供であるし。


 でも、つい最近、クラシカ・ハルモニの話をしたばかりで、次は組み立てる約束。素直に見直したいと橘平は思った。


「うん、じゃあすぐ優真んちいくね」

「待ってる。あそうそう、もっと大事な事。橘平君にしか言えないから今言わなきゃ」

「何?」

「いつ野宿する?」


 さっぱり忘れていた橘平だった。調べる、という予定もすっかりどこかへ消えてしまっていた。


「え、今?」

「春休みじゃん。これ逃したら夏休みじゃん。暑くて死ぬじゃん。今じゃん」


 どうもこれは逃れられないらしい。

 自らが招いた事故とはいえ、友人がここまで本気とは思わず。


 過去の自分を恨む橘平だった。GWもあるよ、と言いそうだったが、結局は逃れられなそうだ。


「えー、うん。防寒、しっかりして。す、スケジュール確認して折り返す感じで?」

「即折り返してね!!春休み中だよ!!」


 もう逃げられない。



 橘平と優真はよっしーこと五社良則(ごしゃよしのり)の解説付きで、クラシカ・ハルモニの第1期を鑑賞した。


 よっしーは坊主頭のアニメオタクだ。スタッフとか作画とか、シーンの深読みとか、理解が追い付かないほどの詳細な解説である。


 放送当時はメカデザインや戦闘シーンばかり目に入っていた。


 しかし先日の桜と祖父の考察を聞いた後に見直してみると、全く違う視点で見ている自分に気が付いた。


 この物語が伝えたいことは別軸にあって。


 当時も切ないストーリーだと見ていたけれど、記憶以上に辛くて悲しい物語だった。ロボの激しい戦闘がないと耐えられない。


 ああ、だからこんなにキレイな絵柄で、かっこよく戦いのシーンが描かれていたのかと再発見した。


 物語の色どり、緩衝材。

 受け入れるための仕掛け。


 さらに困ったことに、「主人公、葵兄さんに似てるでしょ」という桜の言葉によって、もうそれにしか見えない。


 じゃあヒロインは向日葵に見えるかというと、どちらかというと桜タイプだ。

 葵と桜と思って視聴するのは奇妙すぎて混乱する。


 この物語には親友同士の女子二人組も登場する。

 しかし、のちにラスボスと判明する男性に騙され、二人の海より深いはずの友情はあっという間に崩壊する。


 この展開を見て、ふと、まもりさんと一宮のお嬢さんの友情も壊れてしまった、なんてことはないだろうかと橘平は考えた。


 そこに無理矢理、一宮に連行されてしまった理由があるとか。


 ただの想像だけれど。


 結ばれなさそうで結ばれて結ばれない展開に、自然と涙がこぼれていた橘平だった。

 よっしーに「お、いいところで感動するじゃないですか、橘平殿」となぜか褒められた。



 毎夜、今日の出来事を桜とやり取りするのが日常になってきた。


〈今日友達とクラシカ・ハルモニ鑑賞会した〉

〈何それ楽しそう!〉

〈見直したらつらかった。あんな辛い話だったのか〉

〈そうよ〉

〈あーそれとさ、野宿することになって困ってる〉

〈おうち追い出されたの!?〉

〈違うよ~かくかくしかじか〉

〈ええ…楽しそう…私も一緒に野宿したいいい〉


 桜のまた変わった食いつきに、橘平はどう返事していいかしばらく固まっていた。


〈うーん、女子が男子たちと野宿は…良くないと思うけど〉

〈ひま姉さん来てくれたらなあ〉


 それは…優真にとって毒だな。

 桜の野宿は阻止したい橘平だった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

お体に気をつけてお過ごしください。

それではごきげんよう。

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