実感①-クラスメイト
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行間集ep3
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翌週、桜と葵も「お守り」の効果を実感する出来事があった。
春休みも近づき、桜の通う女子高では早帰り期間が始まった。
といっても、赤点生徒は補習がたっぷり待っている。実は理科系が大の苦手な桜は、生物だけ赤点を取ってしまった。その日の午後は、桜は同じ生物赤点組と机を並べた。
とは言え、いつもよりは早く帰れる日。たまには寄り道したって罰は当たらない、と街の小さな書店に寄る。最近は「なゐ」のことばかり調べていて、一般の本に触れていなかった。
新刊や流行の本を眺め、気になった小説を手に取る。装丁の風景イラストが橘平の描いた精密な絵に似ており、内容も確かめず、いわゆるジャケ買いをした。
書店を出ると、クラスメイトの大石朋子が、何人かの女子生徒に囲まれ、どこかへ連れていかれるのが見えた。
朋子は明るくはきはきしたタイプで、ソフトボール部に所属するスポーツ系女子グループの中心的な存在である。囲んでいるのは優等生系グループの女子たちだった。
異様な雰囲気を感じた桜は、こっそり後をついていった。
朋子が連れていかれたのは、常駐する者がいないこじんまりした寺院に隣接する墓地だった。
「カナの万引きチクったの、あんたでしょ?」
「悪いことだから通報するのなんて当たり前じゃないか。何逆切れしてんの?」
7人相手に全く怯む様子のない朋子に、周りはイライラし、なんだかんだと罵倒を浴びせ続ける。
優等生系グループの柄の悪さに、桜は驚きを隠せなかった。先生の言うとおりに学校生活を送り、成績も行儀も良い人たち、という印象だったが、裏の顔もあったのだ。万引きもして、じめじめと呼び出して。
罵倒の効果がないと分かり始め、リーダーの格の女子が朋子の頬を叩いた。朋子も負けじと叩く。すると周りの女子たちも手や足を出し始め、朋子はさすがに劣勢、袋叩きになってしまった。
これは見ていられない、いや傍観しちゃいけないんだ!と桜は躍り出た。
「何やってるんですか!!」
精一杯の子猫の大声に、優等生たちは手を止める。
「なーんだ、一宮さんか。粛清だよ粛清。あんたも誰かにチクるわけ?同じ目に合わせるけど」
武道をやっていたとはいえ、多人数を相手にしたこともなければ、ケンカするようには稽古をしていない。あくまで自分の身を守る手段としてしか身についていない桜だった。朋子とともにこの場を出る方法を一生懸命考えたが、全然浮かばない。
優等生グループたちが桜に向かってくる。逃げても追いつかれる。立ち向かうしかないと腹を決めた。
「一宮さん!!」
優等生たちの手を離れた朋子が桜に駆け寄る。
殴られる、と桜がカバンを顔の前に出し盾として立っていると、優等生たちは桜の顔や体のすれすれのところで手を出せないでいた。
これ以上、桜に近づけない。
そんな風だった。
「あれ、なんで」
これ幸いと桜はこの空間を抜け出し、朋子の手を取って走り出した。
バイクを駐輪していた書店の近くまで逃げてくると、桜は朋子の手を離し、頭を下げた。
「あの、大石さん、差し出がましい真似を」
「顔上げてよ!」
朋子は桜の両肩に手を載せ、そうするよう促す。桜はゆっくりと頭を上げた。
「ありがとう一宮さん。一宮さんいなかったらあたし、ボロボロだった。助かった。ってか、めっちゃくちゃ勇気あるんだね。尊敬だよ、あたし同じことできないって」
「ゆ、勇気だなんて」
「そういや話したの初めてじゃない?ねえ、ちょっと時間ある?」
「あ、は、はい」
「そこの喫茶店よってこ。あたし、一宮さんともっと話したい。いい?」
「…もちろん!」
桜って呼んでいい?うん、じゃあ朋子ちゃんでいい?そんな「どうでもいい」会話が帰るまで続いた。
向日葵との女子会も楽しいけれど、同年代の女子会はまた違った楽しさがあった。学校という共通の話題や悩み。電話帳の連絡先が1つ、増えた。
朋子と話していて分かったのは、彼女の母親は桜の住む村の出身であり、お伝え様にも毎年初詣に来ているということだった。多少の縁もあったのだ。
それにしても、女子たちが止まって見えたのはなんだろうか。桜はバイクに乗りながらずっと考えていた。
その夜、明日の準備のために通学カバンの整理をしていると、橘平がイラストを描いてくれた小袋が目についた。袋の後ろに描かれていたはずのお守りマークの部分だけ、切り取られたように穴が開いていた。
桜は早速、橘平にメッセージを送った。
〈お守りすごい!!〉
〈え、なんかあった?〉
〈あった!〉
〈なになに?〉
〈文字無理。電話していい?〉
〈OK〉
ワンコールで橘平は出た。
いつもお読みいただきありがとうございます!
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ごきげんよう!




