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(旧版)神社の娘  作者: 坂東さしま
豪雪の桜
16/77

超能力は不便なものだった

いつもお読みいただきありがとうございます!

 それからしばらく、桜の木の周りや広場を探索した。


 けれど橘平が再生した神社以外に手掛かりもなければ、鬼も妖怪も出なさそうだったので、今日はこれにて引き上げることとした。


 桜のことをまた背負おうとした橘平だったが、そうする前に葵がひょいっと横抱きにしてしまった。桜は「大丈夫」だと抵抗したが、無理して具合悪くなったらどうする、と切れ味鋭い瞳と言葉で刺され観念した。


「葵さん、俺が桜さんを」

「大丈夫だ。向日葵、すまんが俺らの前歩いて誘導してくれ」

「はいよ。ほら、きー君、ぼーっとしてないで行きますよー」

「桜さん、懐中電灯つけて。念のため方位磁針も」

「は、はい」


 見目のいい葵と子猫のような桜の組み合わせは、橘平の思うか弱い姫と助けに来たかっこいいサムライそのものだった。「桜さんを守るのは俺のシゴトなのになあ」と悔しかったけれど、サムライには勝てないな、と弱気になった。


「俺、ちゃんと桜さんを全力で『守れた』かなあ」


 と、つい、こそりと心の声が漏れてしまった。


 ごく小さなつぶやきだったが、隣を歩く向日葵には聞こえていた。向日葵はぽん、と隣の少年の頭に手を置き、


「超守れてたよ。だから生きてるんじゃん。きっぺーちゃんがいなかったら、桜ちゃんアイツに潰されてたと思う」と、優しい声で伝えた。

「わ、え、聞こえてたんすか」

「ふふん、地獄耳だから。ってかさ、目なしの奴、二人の前で止まったよね。何したの?」

「いやあ何も。わっかんねーけど、これ以上踏めないって感じでした。誰かの有術なんじゃないんすか?」

「…きー君じゃないの?」

「え、俺、超能力ないし。じゃあ奇跡かな」


 おそらく橘平の能力だ。向日葵はそう確信していたが、本人には何の自覚もないらしい。これ以上聞いても何もでてこないし、確証となる出来事を自身の目で見ていないので、向日葵はこれ以上つっこまないことにした。


 そういえば、と橘平は有術の話題つながりで、二人の能力について尋ねた。


 葵の能力は、物体で物体を破壊する、というものだった。実態のある物以外は破壊できないという。


 当たり前ではと思ったが、きっと空気とかが切れる術があるのかもしれない、と橘平は考えた。日本刀のような物体に有術を纏わせることで、物体や怪物を破壊できるという。彼の有術を纏わせた武器に少しでも触れると、並の人間は一瞬で死ぬかもしれないらしい。


「え、やば!!葵さん怒らせたらまじ死ぬじゃないっすか!!」


 素直に恐れ驚いた橘平の声はよく通り、後ろの葵に十二分に聞こえていた。


「じゃあ怒らせるなよ少年。別に刀じゃなくてもいいんだからな」

「え、刀じゃなくていいんすか?」


 その辺の小枝でも定規でもなんでも、物体であれば有術を通して何かを破壊することはできるという。

 だが、さっきのように怪物などを殺したりするほどの力に耐えきれるのは、「いろいろ試して、思いっきり有術を使ってもOKだったのが刀。俺と同じような能力を使える人はだいたい刀系使うな。理由は知らん」ということだった。


「鉛筆で有術使ったとして…まあ、せいぜい病院送り程度だよ。俺はな」

「…怒らせないよう気を付けます」


 向日葵の能力は、相手の気の流れを狂わせて体を倒す、というものだった。


 なるほど、「攻撃的じゃない」といったのはそういうことだったか、と橘平は納得した。確かに転ばせたりするだけでは、打ち所が悪ければ大きな打撃を与えられるかもしれないが、それに頼るのみだ。拳を磨かざるを得なかった理由は、ここにもありそうだった。

 また、使うには十分に接近する必要があるという。


「あ、じゃあ葵さんと手合わせしたくないっていうのは、刀の距離の分、近づけないから?」

「刀相手だって、接近することは可能だよ。背後とったりもさ。まあ一応さ、アイツ刀持つとけっこー強いから簡単には接近させてくれないわけ。万が一カタナにあたったらって思うとね~」


 漠然と、「超能力って万能でかっこよくて強くて、いつでも好きなように使えて便利で」のように考えていた橘平は、実際は制約や能力にも種類や相性があって、なかなか自由にならないものなんだと知った。

 桜の能力だって、相手の目を見なければならないのだ。


「目がないモノには無力で役立たずで本当にすいません…」


 手の中のミニ神社を見つめながら桜はしゅん、と答える。


「あ、そういうつもりじゃ!桜さん!治すのすげーっす!今度ケガしたらよろしくです!」

「はい」


 そう答えた桜の笑顔は暗くて橘平にはよく見えなかったが、葵たちがいままで見たことないほどの笑顔であった。


 今日は悪神とは出会えなかった。いつその時がくるか知りようもないが、橘平はそれまでこの3人と付き合う。それを抜きにしても、もっと彼らのことが知りたいと強く思った。


「それよかさあ、学校どうよ?楽しい?あ、今高校生の間でさ何が人気~??」



「ひま姉さん、すっごい楽しそう」

「橘平君のこと、気に入ってるみたいだしな。良い子だって」

「うん。とても素直で面白くて。私とは全然違う」


 誰にも明るく接するように見えて、桜とは一線引いているところがある向日葵。彼女の本当に気取らない会話の風景に、桜は「私に付き合わせて申し訳ない」気持ち、「やっぱり橘平さんに来てもらって良かった」という気持ちが入り混じっていた。


「…桜さんも素直で良い子だよ」


 彼女の内心を察している葵には、その一言を返すのが精いっぱいだった。おそらく、素直で良い子な彼女は、葵にも申し訳ない気持ちでいっぱいなのだ。


 葵も「なゐ」が消えてほしい。自由になりたい。


 桜が素直で良い子だから「なゐ」の消滅に彼女を利用しているのではないか。


 いや、そもそも言い出したのは桜であって、彼女も悪神の消滅を望んでいる。ウィンウィンなわけで。


 3人で悪神を倒すんだ。

 そう決めた日からずっと悩んでいる。


「…ありがとう。そういえば、葵兄さんメガネは?」

「壊れた。たぶん吹っ飛ばされた時だな。家に帰れば予備あるから」

「そっか。なら良かった。また作ってくれるよう頼んどくね」

「ありがとう。あれ、桜さんメガネは?」


 おっと忘れてた、と桜はコートのポケットからメガネを取り出し装着した。


「まあ、付けなくてもいいくらい疲れちゃったけど」

「俺も」

今回もお読みいただきありがとうございました。

よい一日をお過ごしください!

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