半分ずつあわせて一つになるもの
「わ~!!間に合ったー!!だいじょぶだいじょぶ!?生きてる?ケガしてない~!?」
向日葵は桜と橘平を一緒に抱きしめ、半泣きで叫ぶ。
「ひま姉さん、く、苦しい」
「あーごめん!いやでも、ほんと無事っぽくてよかった~」
「向日葵、まだ『なゐ』がいるだろう」
「あー!!そうだ!!」
葵以外は巨大な怪物を無事に倒せたことで、安堵しそうであった。
が、本来の目的はそれではない。「なゐ」の消滅だ。そしてそれは、桜にしかできないらしいのだ。
先ほどの怪物が木々をなぎ倒してくれたおかげで、4人のいる場所から桜の木が見えた。
桜の花びらが次々と落ち、急速に緑の葉に変わる。そして葉も落ち、あっという間に枯れ木になっていった。
しばらく様子を見ていたが、何かが現れる気配はない。ゆっくりと、警戒しながら、4人は桜の枯れ木に近づいていった。
足を痛めた桜は橘平がおぶった。彼女は抵抗したが、これ以上足を痛めて悪神退治できなくなったらどうすんだ、という橘平の強い意志と、他二人のこれ以上無理するな、という圧力でしぶしぶ同意した。
全くの役立たずで、足まで痛めてしまって。
桜は悔しくてみじめな気持ちでいっぱいだったが、村のために、そして葵と向日葵のために「なゐ」の消滅までくじけていられないのだった。この恩はいつか必ず、何倍にしても返すと決意して。
桜の木の周りに、神社のミニチュアはどこにも見当たらなかった。怪物とともに消滅したのだろう。用心しながらあたりを見回したり、木や地面を観察する。
「悪神とかでてこなさそうっすね」
「まだ分からない…先生から聞いていたのは、神社を壊せばヤツの封印が解けるということだったんだが。もしかしたら、先生はそこまでしか知ることができなかったのかもしれない。『なゐ』を直接封印したのは一宮の先祖だ。詳しい伝承は、一宮が所有する史料か何かにあるのかもしれないが、今のところ見つかってない」
「ねー!!なんかあるよ!!ここに!!」
声の方に注目すると、向日葵がドロドロの怪物の死骸の側にいた。葵は日本刀をまだ手に持ちながら、橘平は桜をおんぶしながらそちらへ向かった。
「あの、もう降ろしてもらっても…」
「だめ」
葵がどろどろの中から何かの物体を拾い上げる。手のひらサイズの置物のようなものだったが、よく見ると神社の形で、それが真ん中できれいに割れていた。
「また神社だ。今度は半分。もしかして、壊す神社は一つだけじゃないのか?」
「半分ということは、もう片方の死骸に片割れがあるのかしら…」
その言葉通りで、広場の外の死骸の中にも、半分の神社が落ちていた。向日葵が拾い上げ、葵が持っていた方と割れている面をくっつけた。
「あ、ちょうどペアみたいだね~木工用ボンドでくっつける?」
「違うだろ、さすがに」
「だよね~うーん、でもこれが手掛かりっぽいしねえ…」
「あの、橘平さん、降ろしていただけますか、神社をよく見たいから」
橘平の背から降りた桜は、半分の神社を上から下、左右によく観察した。先ほど壊した神社には、お伝え様の神紋が描いてあった。この神社にも神紋、もしくは何かヒントが隠されているかもしれない。
二つを並べてみたときに、あっと気づいたことがあった。
「これってお伝え様の本殿だ!」
「え、そーなのさっちゅん?」
「うん。さっき壊したのは拝殿のミニチュア、これは本殿のミニチュア。本殿は普段見られないから、あんまり知らないよね。神紋とか家紋とか…なさそう」
半分に割れている方から中身をのぞくと、八角形と丸のような形が小さく彫られていた。
「何かの記号かしら?うちでは見たことないなあ」
桜は三人にこの模様を示す。葵と向日葵も同様に分からない、という顔だったが、橘平だけが反応した。
「あ!お守りじゃんこれ!」
「え、なにきーくん知ってるのこれ?」
「はい、これうちに伝わるお守りの模様なんです。八神の人が書かないと効果ないとか。あ、おまじない、って言ったほうが分かりやすいか。例えば自転車にこの模様を書いておくと事故が起きないとか、教科書にかけば成績が上がるとか。あ、上がんなかったけど。迷信だと思いますけど、今も癖で書いちゃうんすよね」
よく見せて、と橘平は桜から神社を渡してもらった。模様部分をよく見る。確かに八神家のお守りの模様だった。
「うんうん、そうだそうだ」といい、神社の割れた面を合わせて桜に返そうとしたとき、
かちゃ
と、橘平の手のひらで何かがはまる音がした。手を目の高さに上げ、手の中のものを眺めてみると、神社が継ぎ目なくくっついていた。
「え?!」
「わー何なんで?!さっき私と葵で合わせたとき、くっつかなかったよー!?何したのきー坊!?」
「な、何もしてないっすよ!勝手に…えど、どうどうしよう、くっついちゃった…直ったの?」
この現象を前に、葵は向日葵の言葉を思い出していた。
一般人じゃない、私たちみたいに「使える」。
もしかして、こいつの有術なのかと、鋭いまなざしで橘平を見た。
「じゃあ、明日八神家に行くか」
「え、おれんち??」
「そーだよね、ほかに手掛かりなさげだし。行くべ!」
明日はきーくんち~楽しみ~と向日葵がいつもの軽いノリで言いながら、桜の両手をもってぶんぶんふっている。
「え、でもさ、俺きょうは優真んち泊ってることになってて、明日、友達じゃない人が三人も家に来るってさ、どう言い訳すれば」
「えー、優真君と遊んでたら私らに出会って仲良くなって、そのままお茶に誘っちゃった的な??そんなんでよくない??」
すでに親にウソをついてしまっている。
また言い訳を考えなければならないのか。橘平はとんでもない犯罪をおかしている気持ちになった。
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