表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧版)神社の娘  作者: 坂東さしま
豪雪の桜
14/77

二人じゃないと倒せないよ!

 骨の何本かは折れているだろう。


 それでも葵はなんとか起き上がろうとするが、精神力が痛みに勝てそうにない。


 目が開かない。でも死ぬわけにはいかない。

 向日葵を一人で戦わせるなんて。


 その時、桜が葵に馬乗りになり、「目を開けて!葵兄さん!」と呼び掛けてきた。桜はなかなか開かない葵の瞼を無理矢理こじ開ける。そして、葵の瞳と自身の瞳を近づけ、じーっと見つめた。


 この行動に橘平は驚いた。けが人にまたがって目をこじ開けて。一体何をしているんだ。しかも顔の距離が恋人同士のように近いのだ。


 桜に5秒ほど見つめられると、葵は体が熱くなり、痛みが軽くなってきた。


「ありがとう、起き上がれそうだ」

「良かった!」


 桜は葵の上からどき、起き上がるのに手を貸した。起き上がった葵は、「向日葵!」と叫び、広場へ走っていった。


 満身創痍の青年が、少女に見つめられて走れるほどに回復した。


 これは聖人の奇跡なのか。橘平は自分が何を目撃したのか理解が追い付かなかった。


「さ、桜さん、今の」

「これも有術。壊して、治す。私のはそういう力」


 葵が倒れている間、向日葵はとにかく逃げ回った。


 その間に、奴らにはおおまかな動きのパターンがあること、共闘はせず個人で動いていることが分かって来た。


 片手が無くなった怪物が残った方の腕で襲ってきた。拳が向日葵の2、30センチほど前に来たところで、彼女は怪物の拳の前で自身の手のひらをくるっと返した。


 すると、片手のカオナシは仰向けにばったりと倒れた。死んでひっくり返った虫のような恰好だ。そこに己の拳を突っ込んでみたが、全く無意味だった。村の周辺に出てくる「ちっちゃいバケモン」とは比べ物にならないことがわかった。普段相手にしている奴らは、隙さえ狙えば人間の拳でも多少のダメージは与えられる。


 まだ両手の残る二本角の方が、向日葵を殴ろうと拳を横に振りぬく。すんでのところで避けられたが、倒れた片手が起き上がってくるのも時間の問題だろう。


 こいつらは別格だ、私一人じゃ何もできない。

 どうしよう。


 いつも陽気な彼女が心折れそうになってきたころ、激しい青白い閃光がみえた。同時に、恐ろしい断末魔もこだまする。


 葵がひっくり返っている怪物の胸を一突きにしていた。限界まで刃を刺し、思い切り引き抜くと、怪物はドロドロに溶けていく。


「向日葵!!」


 ドロドロから素早く降り、葵は向日葵の方へかけていく。


「大丈夫か!?」

「私は全然!そっちこそケガとかいろいろ!?」

「治してもらったから。早くもう一匹を」


 と声を掛け合っている間に、バケモノは広場の端に避難していた二人に向かっていた。


「桜さん!!」

「さっちゃん!きっぺー!」


 橘平は桜の手をぎゅっとにぎり、森の中へ逃げた。


 しかし、真っ暗で木々が生い茂る中、なかなか全速力でまっすぐすすむことはできない。怪物は木をなぎ倒し、もうそこまで迫っている。


 ぼこりと地上にでた木の根に、桜が躓き転んでしまった。


「桜さん!大丈夫!?」

「は、はい、っつ…」


 素早く桜の腕を取り、立ち上がるのをサポートする。相当、足を勢いよくぶつけて転んでしまったようで、足全体が痛そうである。足首あたりは腫れているかもしれない。


 背後に殺気と寒気がする。

 もう逃げられない距離だ。


 橘平は手のひらに子供のころから親しんでいるおまじないを描き、その手で桜の手をしかと握った。こんな状況でも「死ぬかもしれない」という考えは浮かばなかった。


 桜もこの状況で絶望はしなかった。なぜか「守られている」気がしたからだ。神か仏か、何から守られているのか全く分からない、不思議な感覚であった。


 怪物の右足が、二人の頭上にあった。


 右足は二人の頭上すれすれで止まった。怪物はそれ以上、踏み込めないようだった。


 何が起こっているか考えられない二人の前で、怪物が右横にゴロンと転がった。そして日本刀を高く振り上げた葵が飛び上がり、左わき腹から真向に切り下した。


 激しい光とともに体は見事に真っ二つに割れ、溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ