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狩人は言った「聖騎士にはなれない」と

 ギルベルトか、あぁ、ひさしぶり、元気か? いやっ、その……傷は

「あぁ、元気だ。この通り五体満足、怪我の跡もない!」

 そうか、なら、聖騎士隊に復帰しないのか?

「流石に、そこまでは治ってないな。というか、治らないな。いくら治癒や再生の魔術士が優れていても治療を受ける側の魔力も身体も限界がある」

 そうなんだ。……そうか、僕はこんなに元気なのに

「うぅん」


「この教会が祀っている精霊って何か知っているか?」

 ごめん。わからない。

「そうだな。昔はやって廃れた宗教で伝えられた有名な、狩人の悪魔だそうだ」

 だから、弓を奉納するの?


「あぁそうだ。ここじゃ、悪魔も神もない。同じだ。生きとし生けるものとそうでないものも含めたすべて、死んでしまったらそれは等しくただの魂だ」


「……悪魔になる前は、ベルベル人の神様だったんじゃないか? って説があるが、実際はどうか知らない。当時生きていた者もいないし、誰も確認できない。ただ、語感が似ていたから、仲間はずれは可哀想だってんで、当時の皇帝がこの教会を建てたそうだ」

 そう……。


 俺はこれから、狩人を狩る鬼になる。

 どんなに、高邁な精神を掲げて逃げ道を塞いでも、力のために正義に身を捧げると誓ったはずなのに、

 ダメだった。

 僕は、聖騎士にはなれない……。

 誰かも知らない僕と同じような悲しみを受ける人のために、正義が欲しかったのに、

 ……そんなに大切だった全部!

 捨ててしまうほど、この憎しみが抑えられない。


 せめて、任務ということにした。

 そんな言い訳をしてしまった。僕は!

 あいつが、この空の下、生きていると思うだけで気が狂いそうになる。私怨でしかないんだ! それなのに、僕は『これは任務で、聖騎士の義務』って……嘘ばっかりつくんだ!!

 そうじゃなきゃ、僕は、誰にも許されなくなるから……私は……聖騎士に……なっちゃ、

「なれないんじゃないだろ」


「ならないんだ。最後に一つ、大仕事を終えないとまだ聖騎士になるわけにはいかないんだ! だから、君はまだ使命がある。果たすまで聖騎士にはなるな」


 ……でも、

「その憎しみを晴らして、誰が誰を救えるか、君なら知っているはずだろ?」

 知らない……。

「なら、考えるべきだ。君は正当なる手段しか使っていないはずだ。聖騎士として任務に就き、聖騎士として弱者を殺す狩人を狩る狩人になるんだろ!?」

 ……そんなの建前で、本当はもっとやるべきことが

「ない! そんなものは! ないんだよ。君が君の正義を証明するために、後顧の憂いを断つことより優先するべきことなんて」

「ルイスにはそれだけの力があるはずだ。それだけの研鑽をどうやって積んできた!」


 努力したわけじゃない。


「ならその才能は両親から受けたものだろう? 弔いのために復讐をして何が悪い!」

 そんなの、……職権濫用じゃないか!

「それが正義ならいいんだ!」


「君は、まだ聖騎士にならなくていい。だけど、任務の裏で復讐を遂げて、今度こそ正義にすべてを捧げるという誓いを果たせると思った時は、ルイスも自分を聖騎士と認めてほしい」

 僕は聖騎士にはならないよ。

「使命を果たしてから確認しにくるよ。君は」

 ならないっていっているだろうっ!


 うっうっ、ごめん。俺は、……強く……ならなきゃ……。

「いいんだ。その力を正しいことに使う意志があるなら」

 そんなの、同じだけの力なら、正しいと言えたほうが強いからじゃないか……。



 ◆

◆ ◆

 ◆ ◆ ◆


 全身が肌の内側から避けて吹き出すように刺す痛みが収まらない。焦げ臭い。眩しい。

「――――! ――!」

 うるさい。だまれ。眠たいんだ。久しぶりに、眠れそうなんた。

「――――――!」

「――――――――――――――――!」

 誰かが泣いている声が聞こえる。高い声? 女? いや、違う気がする。

 体がすり潰されるように肌が痛い。かゆいのか? いや、違う、そうじゃない。触れる空気が何もかも痛い。全てじゃない、ヒリヒリする。なんか眩しい。そうか、全身が燃えて、僕は地面に突っ伏したまま動けずにいるんだ。

「ハハハッハッハッハッ、やったぞ! やってやったぞ! 化け物を、バケモンをやったぞ! ついに、あの、聖騎士クロヴィス・カンビオンを!!」

 子どもが泣いている。そうか、そうだった。あの声はミリアじゃなくて、人質の子だった。


 狙撃位置に控えていて、人質をとってきたから魔剣の威力じゃ面倒で、殺したら発動する爆発魔術を人質から解除するために二時間は殺さずに泳がせるために追跡しようってなって、

 そうだ。村とは別に人質がもう一人いたんだ。

 抱えやすい子どもを抱えて、威力を抑えた鉄棒を肩に突き刺したはず、

 乾いた荒野に放り出されたあの子どもが奴の感染爆発魔術で自爆させられそうになったから、魔術を僕の体に移植して、

「お前はまだ俺の逃亡のために付き合ってもらうぜ」

「いやっ」

 !!

 駄目だ! 動かなくてはならない。動けないとしても、今立ち上がらなかったら僕が求める力になんの価値もないじゃないか!


 口の中の砂を吐き捨てて、声のした方を向いて立ち上がる。なんだ、俺の体が赤く輝いている。全身の傷口という傷口から炎を吐き出しているのか通りで全身痛くて痛くて仕方がないというわけか……!

「止まれ」

「お前、……なぜその状態で生きている!」

「一歩も動くな……その子に手を伸ばすな」

 腕を下げなかったから。全身の魔力の巡りを遮断して爪先のだけの魔力だけで、鉄の棒を射出して腕の中程から衝撃で穴をあけるように腕の先の手を吹き飛ばす。

「ぁ……? いっ……!?」

「腕を下げろ」発射した。

 追撃で放った鉄の杭がカヴァデイルの腹にあたって金属が熱を放たずにカヴァデイルの腹をえぐって吹っ飛ばして血が吹き出すように地面にめがけて垂れる。

 魔力が枯れたようにしぼんでいく体から勝手に漏れる炎、それが子どもに当たらないように傷口と吹き出す炎の向きを意識して距離をとって子どもとカヴァデイルの間に立つ。

「そうか、いままで炎の魔術で加速させているから速いのだと思っていたが、どうやらこの魔術は指の力と、金属生成する魔力の余波で乗った慣性ものすごく素早く飛ばせていたらしい」

「なんで、俺の自爆馬術を食らって生きてるんだよぉ…………」

 喋ったので、金属の棒を掴んでカヴァデイルの脚を払って足先の骨を砕いて、地面に転げる。

「貴様は、炎の魔力操作においてこの世で右に出るものはいない天才だ」

「なんで、生きて……」

 地面を恐るべき速さではって逃げるカヴァデイルを、痛む全身を誤魔化しながら歩いて追い詰める腕にもったの魔力で形成した擬似的なタングステンの棒で頭を潰せば終わりだ。

「だが、貴様はそれだけだ。あまりに弛んでいる。そんな鍛え方では魔力の量が少ないのは悲しいかな、持ち主に恵まれなかった才能が泣いている」

「仕方がないだろう? お前みたいなのと違って俺は生まれつき魔力が多いわけじゃ」

「魔力量は魔法使いみたいな例外を除いたら鍛えたら増える量はともかく増やすだけなら簡単だろう?」

 歯ぎしりをして、仇は僕を睨む。

「凡人の気持ちがお前みたいな天才にわかるかよっ!」

「わからないな。悪党の気持ちなんて」

「くるな! 喰らえぇ!!」

 炎の魔術、特別強いということはないが、……魔力をまとった指で払ったらあらぬ方向へ飛んていく。

「この程度か?」

「ひぃ、あぁ!」

 ションベン垂れ流して腰を抜かし、後ろ手に地を這うこんな惨めな生き物のために?

「本当にこの程度なにかと聞いている」

 母も、父も、多くの未来を奪ったクズが、この程度のつまらない男だったのか?

「そこ……」

 狂って弾けた炎が千切れて放られた奴の腕が弾けて極大の炎を放つ!

「ぐっ」

 炎の直撃は受けなかったものの余波で、腕の真横にいた僕の体が吹き飛ばされた転がって、その隙に子どもへカヴァデイルが迫る!

「逃げ」

 大丈夫、追いつく! 子どもが奴の魔術の餌食になる前にカヴァデイルの頭を潰せは、

 カヴァデイルは首をぐりんと回して、無事な方の腕を俺に伸ばす。

 そうか……! 狙いは、ダングステンの棒を触った瞬間鋼の属性の魔力でできていたはずの棒が炎に変質して腕から融かしてくるような熱に変わって胸と腹を焼いてくる。

「ならば、好都合」

 他人の魔力を操作して炎の魔術に変更させるのは奴の得意魔術だ。むしろ、やつにしかできない奥義だ。だがそれには弱点がある。

 触っていないと他人の魔力を操作して魔術構成式を刻むことができないということだ!

 触れてきたカヴァデイルの一本だけになったその腕をへし折って掴む。絶対に離さないように自分の胸に押さえつけながら魔力の錬気でデタラメに強化された跳躍で子どもから離れる。

 方向は――もちろん、できるだけ被害を抑えられる場所がいいだろう。


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