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3年目、5

 第二防衛ラインを飛び越して、第一防衛ラインから一気に第三防衛ラインまで後退している友軍に目をやって、殿を任されている私としてもこの死者数は想定外と思えた。

「数ばかり揃えても壁にすらなりやしないのに!」

 はっきり言って、国家を超えた合同作戦ということで無駄に兵士を多く用意したすぎたのが原因だ。マシンの体表にかすり傷一つ入れられない貧弱な魔術師に、マシンの節型の前足に一撃で剣を折られて腹ごと裂かれる稚拙な槍持ち。

 足切りラインであるはずのマシンの硬さに対応でない者はみな死んでいく。だというのに、対応できる兵士がしっかり配置されて防衛ラインを守って、ジャレッドが立っていた塔へ向かうマシンを破城槌のマシンが飛んでくるまで割られることがなかった。死んでいった誰も貢献できていない、こんなところに連れてこられた彼らはみんな無駄死にじゃないか! 


 下げるように具申しようにも、地平線から押し寄せる鋼色の虫の波に私はペン先のような形の魔剣の切っ先より飛ばされる高温の赤色の一線で、融解させて殲滅するので精一杯だ。

「大型は対処できない!」

 叫び声に応える。

「私が引き裂く!」

 インクのように空中に記され放出された光熱の金属粒子が私達を多い潰そうと立ち上がった虫を左右に引き裂いて、ひっくり返って動きを止める。

 この一線引くだけで魔力がごっそりと持っていかれて、鍛え直したというのにとっくの昔に体の芯から指先までへとへとだ。

 引き裂けた巨体の奥から波打つような大地を割って盛り上げて進む山が複数見ええた。

「まだだ! まだ何体も」

 空が一瞬、青よりも暗い違う色に染まって戻った次の瞬間に、赤く光る槍のようなものが落ちて向こう側のマシンを貫いて砂塵が煙になって私達を包んで、余波で吹き飛ばされそうになる。

「なんだこれ!」

「ぐっ、うぅ」

 止まった。衝撃波が途中で無くなったように静まって、塵が舞って埃で土臭い。

「みんな! よく持ちこたえてくれた! 次の群れがくるまでに第三防衛ラインまで下がりなさい! 君たちをここで無駄死にさせるわけにはいかない!」

「預言者……!」

「おぉ! みんな、下がるぞ! ここは預言者に任せよう!」

 そうか、預言者はルイスと同じで、たまにいる外れ値側の戦力か! 特に理由もなく生まれつき魔力の制御能力が高い。というような、


 ◆


 後方へ逃亡する中、小さなマシンの群れが徐々に追いついてきそうになると、砦から放出された赤い一線の粒子が第二防衛ライン以降に設置された塊に当たると周囲に薄く赤色の粒子を散布して滞留させ、半透明の赤色の立体の中に入ったマシンを融解を促し自爆させる。

「ジャレッドの攻撃だ!」

 最初は第二防衛近くの装置にしか粒子ビームを照射されないが、後退が進むほど広く目の細かい範囲に半透明の高熱化された金粒子をしきつめて、爆薬を体に有しているマシンはサイズに関わらず近寄れず、大型未満のマシンはそれだけで誘拐して動きを止めて、飛び道具を持っていない大型マシンですら動きを鈍らせる。

 それでも空中を飛ぶ超弩級マシンには届かないし、直接ビームを当てないとならないが、今は預言者が数を減らして、襲来の波が一旦止まっている。


 ルイスの魔術以外で聞いたことがない地響きを断続的に聞きながら、後退した砦で装備を交換して、余裕ができたので地響きが止まった辺りで状況を確認しに作戦参謀の元へいくと、ジャレッドやコエルレミアの他に、地響きの元であるはずの預言者シグフレドがまだ人も少ない詰め所で話し合っていた。

「いやでも飲め、糖の塊で飲みづらいかもしれないがこれを飲むと飲まないとでは栄養が全然違うから」

 ジェレッドはひどく憔悴した様子でコエルレミアが手に持ったドリンクを飲まされいた。嫌そうだったが、頷いて、えづきながら無理して飲んでいた。

「あぁ、いいよ。よく飲んだ。苦しいよね。でも、あと少し、頑張れるね?」

「無論だ」

 こっちに私が確認することもないだろう。

「よくやったね。ジャレッド、お前がいなければ何回死んだかわからないわ」

「えぇ」

「最後までよろしく頼む」

「もちろんです」

 それよりも、預言者に頼む。

「シグフレド殿! ちょうどいいところにいた。無駄に戦力が多すぎる! 未熟な兵士からどんどん無駄死にしていく! 拠点に移動して不要な戦力を下げるように指揮権を行使しろ!」

「参謀殿にいったらどうだ?」

「いや……それは」

「外国の隊員にお願いはできても、命令はできませんよ」

 預言者は顎に手を添え、首をかしげる。

「……いまさから、戦場で無駄死にすることを恐れる兵士がいるものか」

「いるに決まっているだろう!! 損耗は少ないに越したことはない」

「でもなぁ……」

 こうしている時間すら惜しいのに預言者シグフレドは視線を南側の見える窓に流して、もどして私に向けて頭をかく。

「アンタらメディテュラニス連邦は、ほとんど死んでいないでしょう?」

「だからって!」

「同じ家に住む同胞が死なずに、仮想敵になりえる隣人が多く死んだことを喜んだらいいんじゃないのか」

「は?」

 預言者は、今、何を言おうとしている?

「好都合だろ……? 事は大局的に見据えなきゃ」

「なっ……!?」

「どっちみち、もうすぐ、終戦だよ」

 私は、聖騎士としてそれを認められなかった。だが、転がっていた死体の姿を思い返して、その肉を包む布の色が意味することをメディテュラニスの旧貴族として、領主として、何も、言えることがなかった。


 赤熱を帯びた金属杭が降り注ぎ、地平線から押し寄せるマシンの渋滞を押しつぶすように生い茂った。

 ひどく、黒い蒸気が立ち込めて風とともに東に流れると熱を失って黒ぐろと変色した金属杭も魔力に戻って大気に霧散していった。

 この時に生まれた蒸発したマシンたちでできた雨は強い毒性をもったとされるが、時間をかけて、この地に住んでいた水銀の川の源たちを消し去り、長い時間をかけて無毒化していくと聞く。


 ◆ ◆ ◆

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