2年目、10月 中
「…………様、連絡です」
息の上がった軽装の騎士の彼が言って僕に読ませた内容を位置枚の絵画を記憶ようにサラサラと目で覚え、頭に浮かんだ手紙の図面を思い浮かべながら、上がることを抑えられない広角を釣り上げて、怒りと悲しみでせり上がる目尻の隠しもしない笑顔をハイグ元議長へ告げる。
「命令が下りました。これから我々は差し押さえに入ります」
決まった兵士にあらかじめ説明されてたルールのことを反芻するように、事務手続きとして以外に必要な理由のない命令を言っておく。
「許可がでた。抵抗していない全員もまとめて拘束しろ。この邸宅も差し押さえだ。信号弾頼む」
「はっ」
拘束していた老人が暴れ出すから拘束していた兵士が新たな拘束具を出してハイグ元議員を縛り付ける。
「っ、痛っ愚図ども! 私を誰だと思っている!」
「……ハイグ。お前には理解できないのかも知れないが、組織というものは決まりがあるものですよ? そして、国という組織には法律というものがある。それが全て正義とは思わないが、それを護ることが正義に繋がると僕は信じている。なのでね……。形成は変わりました。我々有志の果たしている責務は議会の任務を兼ねることとなった」
僕の説教にしかなっていない言葉を無視して、老人は拘束をきつくまとめて兵士に怒鳴る。馬の耳に念仏を唱えても何も意味がないのだろう。
「なっ、離せ! お前ら後で覚えていろよ」
「皆さん。その調子で全員拘束して乱暴しないようにしろよ。我が国では、本当は人を一人処刑するのにも、理由が無くてはなりません! 使用人のみなさん怪我をしたくなければ抵抗せずに拘束されてください! 我々の目的は処刑ではなく処罰なのですから」
信号弾が出てからバタバタと混乱して湧き出すように出てきた兵士たちに拘束される使用人たちと兵士の混乱に向けれ大声で指示をだしておく。
「だから! 奴の魔術は危険だから、規定を無視して処刑さざるを得なかったんだろうが!」
「麻酔で四肢の自由を奪えばどうにでもなるでしょ、そんなもの」
面倒くさくなった。もう、こいつの容疑が確定していた。議会にも承認をもらった以上、もう証拠を引き出させるための駆け引きも要らない。
「私は、なんの権限で特別処置を決定したのかと聞いているんです。臨時処置をするにしてもそもそも貴方たちには無かったはずです。判事を決定する権利がそもそも! と、言っているのが馬鹿な貴方には判らなさそうなので説明してあげましょうか?」
「何を説明するって」
「現在開会中の臨時議会、貴族議院と都市議員全体から4分の3の有効票により貴方の議員解任決議が決まりました」
「……なに? 今、開会しているだと? いや、まだ……」
「理由は国家反逆罪、カヴァデイルへの放火を依頼、虐殺の命令、犯人隠避、脱獄とか逃亡の幇助ですかね? どれが直接的な名目になっているかは量が多すぎてもはや、僕の知るところではありませんが……」
「…………違う。なんのことかもさっぱりわからん!」
「違うだろう?」
なぜ、なんだろう。僕の顔をみて老人は青ざめる。もう、駆け引きの価値も感じないので、勝利宣言の代わりに手持ちの情報というカードを開示しておく。
「何のことかは今言っているのだから、貴方のセリフは罪を認める『何故、そのことを』か、白々しくも罪から逃れる『私はそんなことはしていない』のはずだがなぁ? まぁ、いずれにしてもカヴァデイルの脚がついて生存が確認された以上、貴方には同じ未来しか手続きできないのだから」
「…………。…………!」
「あぁ、名乗りませんでしたっけ? 曲がりなりにも 教会より聖騎士称号を襲名させていただきましたクロヴィス・カンビオンと申します」
「お前が、そうか、あぁ、……そういうことか!? だから、こんな無茶な動員や……!」
「違う! この全員、僕じゃない誰かの意思で集まった、軍属でない騎士、教会や領地所属の騎士の有志連合だ誰も動員なんか僕にはできなかった! …………まぁ、いいや。いいんだ。臨時議会での解任決議は総勢20名に下った、これだけの数があれば議席数の優位もひっくり返りますからね。抵抗も予想されましたよ。ですが、たって一手で彼らは今までの自分の強情さを忘れたように貴方を切り捨てて、解体されかねないからって自分達の所属すら切り捨てる段階に入ってもう滑稽でしたよ! はは、ははは」
「どこの話をしている……?」
「質問が多いのは、本当に馬鹿だからってオチですか? 貴方の所属する貴党派の話に決まっているでしょう。他になにがあるんだ。くははははは」
笑うしかない。こんなに、怒りで溢れているのを抑えて、いらだちで眼の前のクソジジイを殺さないためにっ!!
「はは……はぁ、そんな無様を晒せるおつむだから、彼らはあと数年したら入れ替わりで貴族院制度の再構築を避けられないでしょうね」
強さは正義を作れる。
「いいか? 私は仕事をして、正当なる手続きをしただけで、全てはお前が不正をした上でそれを隠せるほどの強さも、狡猾さも持ち合わせなかった弱者だったからこうなったのだ」
正義はそのまま正しさだ。
「貴様という弱者が貴族主義の間抜けどもの頭目をしていなければ、アイツらももう少し祖先の受け継いだモノを守り、維持できたであろうかな? だがしかし、全ては貴様は無能な癖に悪事などして楽をしようとした弱さが台無しにしてしまったのが悪い」
正しくなくては力をそがれ悪の烙印を受ける。
「本当に悪いことをしたいならな、悪事をするより大変な苦労をして正しい行いをして積み重ねた力を使って悪事をする必要があった。それは何故か? 社会とは正義を定義する概念だ。貴様はその社会に定義された正義、法律から死刑は免れないほど逸脱してしまったんだよ」
悪は弱さだ。力が離れていく。
「お前には祖先の遺した正統なる積み重ねがあった。力があった。だが、貴様は愚かにも使いこなせず腐らせ、お前の代で枯らしてまう。お前の一族で歴代最も弱く、不当なる恥となってしまった。そういう弱さをお前は持っているということを自覚してたらこんなに弱くはならなかったんじゃないか?」
正しければ力の方からよってくる。
「わかるか? お前は正しい手段を使い続ければ未来はもっと明るかった。だが、お前は弱いから楽をした」
正しさは力だ。
「楽をしたくなるほど弱いものに悪事を正当なる手段で実行できる強さなどあるはずもなかった」
正しさは力を生み出す。
「獄中で自分の弱さを加味し見続けろ末代までの恥」
力があれば、もう悪人を全部滅ぼしても許される。
「まだ、あるぞ貴様は」
「そ、それくらいにしましょうよ。クロヴィス様……」
理不尽に命を奪う悪を全部殺す力を得られる。その力の名は――――――
「あぁ、ありがとう。少し熱くなっていた。べつに僕が処罰する訳でもないのに……すまなかった」
「いえ、いいのです。それだけのことを言いたくなるのも、分かれないほど馬鹿じゃないので」
「あぁ、……ありがとう。ごさいます」
うなだれた老人が目に映り、自分がこんなものに熱くなっていたのかと、恥じらいをもって熱くなっていた耳がさらなる熱をもつ。
「では、逆賊を護送します」
「あぁ、後は頼む」
「私は……、逆賊なんかじゃ……議長なんだぞ…………」
こういう悪をあらかじめ殺せたなら母さんは生きていたんだろうか? こいつが弱い計画を立てなかっただろうか?
「こんなやつのために……」
「クロヴィス様」
「何?」
「すみません。仕事を引き継げません」「え、」
――――――ゴッッッ!!!
歯が飛んだ。老人の形からして前歯と奥歯だ。器用に抜けて飛ぶ。
「なにやってるの!? お前!」
「甘んじて厳罰を受け入れます」
さっきまで老人を拘束していた彼が殴った拳を開いて両手を掲げて、周囲の剣を向けてくる同僚に申し訳なさそうな顔をする。
「はぁ!?」
「すみません。私も若いので、最後になりそうなこいつには一発入れたくなりました。いままでの夢が叶いました。ありがとうございます」
「お前…………ダメだろ!?」
「えぇ、ダメですが、どうしても」
「どうしても!?」
「げぁ、わふぁしは、げふぁあ……ふぇ、ひゃふほすはんはひゃ…………」
伸びても転がっても後ろ手に腕を拘束されたまま死んでないし、ただ気絶しただけの老人を見てまぁ、殺さない手加減は僕よりも上手いんじゃないか? って職人の技を見た気分だ!
「どうしても、今この場で殴らないと……なんというか、変な予感が、その……。クロヴィス様はこいつの末路に興味無くして、気持ちが晴れることが無いような気がして……」
「はぁ? 何いってんの?」
「すみません、上手く言えないくせに変な言い方をしてしまいました。その、……えっと、復讐の是非をどうこう言うつもりはありませんが、貴方の復讐は誰かを守るための正当なる職務だと……任務ならみんなが求める必要なことなので」
拙い。が、言いたいことは数十秒前の僕にはわからなかっただろうが、今の僕ならわからない内容じゃない。
「そうか……うーん、一旦君らはソイツ護送して、君は僕と……上司に報告だね。懲罰は覚悟して、名前は」
「カールと言います!」
「そうか、カールくん、その、……やったことはバカだし、懲罰は免れないが……気を遣ってるのは一人の人間として『ありがとう』と言っておく」
僕は、どんな顔をして感謝したのかな。私は、不満そうな気がしていた。
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