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狩り完遂

 「ゴミども、連邦の代表者を任されるこのルイス処刑しに来たぞ」

 爆音とともに壁が崩れ、気取った態度だがやや小汚い、キレイな街のチンピラのような青年が金属の棒を一本持って、ロビーに侵入した。そう、僕だね。

 それを困惑して即座にブチギレして吠えたゴロツキの喉を金属棒の一突きで千切るように体から離し、髄液と血液の海にゲル状に固まった明るい色の粒が散りばめられる。

「お前、せめて扉を破壊しろよ。建築物のない世界からのエイリアンか?」

「ははは、罠があるかどうかわかんないんだから、敵地で扉は開かない主義なんだよ。私は、ね」

 両手に随分重い金属の棒を作り出し、自分の魔力から生まれたタングステンの安心感に気が大きくなってしまう。

「今日はルイス・リックマンと名乗らせて頂きます。聖騎士、クロヴィス・カンビオンの代行官として皆さまを……捕縛するように言われているのですが……できればせめて、抵抗してください。そうしていただければ、現場判断として皆さまを駆除しても許してもらえるので」

「保安官か、俺等の兵隊はどうやって振り切った?」

「えぇ、塵芥には未だにもぬけの殻の保安所の周囲にとどまってもらっています」

 ニコリと笑って目を細める。嘘は言ってない。みんな死んでいるだけだ。

「ではまず、質問させてもらおうか、人質はいるなら、今のうちに言っておくと良いよ。始まってからじゃ脅しも効力を失うから、うん。もう一度質問する。人質になるような者はこの建物の中に居るな?」

「……どういう質問なんだそれは? 人質が居るって知っていて殺したのか?」

 腕が、いや、壁が、投げつけられた鉄の棒が防御に回した魔術も剣も溶けて割って、貫いて、その実、ただ投げられただけの鉄の棒が貫通した断面を焦げた炭と融解してねじれた残骸に変えながら、アジトの壁の先の土の路面に突き刺さり、土を黒々と焦がす。

 お前を無力化した理由は会話したから、

 絶叫がうるさい。

 人質になりえる市民の存在が確定した。居るという前提で質問されたとき、居ない場合には居るとも居ないとも嘘も真実も答えられる。居るとも居ないとも答えるのは、居るときだけだ。居るときは真実も嘘も言えるが鈍色の答えは出せないものだ。それが個人ではなく集団という仕組みだ。これがもしもはっきりと嘘か本当のことを言っていたら味方の視線を集めただろう。

 だが、二階には居ないことは突入前の調査と目視で予め確認済み。

 ならば地下だ! 残った数十人の動きを見る。視線の向き。見る必要なし、調理台の裏で梯子階段の蓋を空けたバカ発見!

 向かってくるその全部の戦士を、鍔迫り合いを金属棒の硬さと身体能力の差で、剣の腹を叩き割って貫通、頭蓋を粉砕してゲル状の白い塊が脳症と血液とともに飛び散る。攻撃の軌道に迂闊に近づいてかすめた数人は腕や腹の骨を砕き、直撃させた5、6人くらいは頭を粉砕して殺害。投擲により手が空になったと突進したバカには新しい鉄の棒を手のひらに集めた魔力から生み出して貫いた胸ごと壁に突き刺す。

 床の蓋を空けたバカは投擲した鉄の棒でもう死んでた。

 下の階は制圧完了。まだ動けそうな悪党は両足を加熱した金属で焦がして無力化、千切ってないで金属棒を関節に指して焼いただけ治療しやすさに配慮してんだ。感謝してくれよな!

 上の階、誰か来る。扉が開く。こういう場所で扉を開くのは下っ端の仕事。なので、思いっきり鉄棒の打突扉ごと発射、余波で周囲の壁ごと粉砕された男の上半身はミンチ肉になって、奥に居たスーツの男にぶっかかる。

「なん」

 スーツと、身につけた貴金属。あぁ、周囲より値段の違うだろう上品室な服装。ボスはこの男だ。なら、ほかは死んでいいだろう。

「十人もいないか」

 言葉を漏らすと6回の打突が男の周囲のゴミどもの上半身をミンチにして奥に飛ばす。

「あ?」

 なにかされても面倒だ。

 熱を持ってない金属の棒を男の鳩尾に死なないように小突いて苦しんでいるところに、髄液まみれで汚っぇ顔面に手のひらを近づけ口の中に格子状の金属アートを組み込む。

「あがか、あが」

「魔術をしようとするなよ。それが発熱するかもしれないから」

 絶対とはいえないが、魔力で作った疑似金属だから魔力で変な影響をうけることはよくあることだ。

 嘘を言っている雰囲気も感じないだろうから、脅しとしては十分だ。実際、やろうとすればいつでも焼ける。

「ルイス! おいなんだこれ、ほとんど死んでるじゃないかっ!? 目標聞いていなかったのかよ! お前、何考えてんの。一応聖騎士だろそれでも!!」

 アンビーの常識的な悲鳴を聞いて、心のなかで殺せるだけ殺したほうが楽だろうと反論しそうになったが、そういう大義名分で殺してないから困ったな。笑って言い訳をするしかない。

「偉そうなやつは生かした。一番偉そうなこいつは自決も防止した。人質は見取り図のキッチンの床下収納に閉じ込められているみたいだから、助けてやってくれ」

 服の下から伸びてくる皮素材のようだが実際はなんの素材でもない謎素材の魔術的な帯で生存者を拘束しながら、死にかけの何人かに依存性もある強い気付けの魔術をかけて、蘇生なども試みる彼女の仕事熱心さに涙が出る。これでギャンブル癖がなければなぁ。

「こいつはヴィンセントさんに引き渡す。拘束が全部終わったら本隊を待って後始末を任せる。調書関連の前に戦闘記録も紙にまとめておく必要があるから、お前も文書の内容は考えておけよ」

 そういって、彼女は床下に魔術を先行させてなにかしてから開いて、なにか物音をたてて、速やかに戻る。

「要救助者の安全を確認!」

「ご苦労。じゃあ、引き上げてやってくれないか?」

「はい。……この惨状は見せられないので、……あぁ、安心して君たち、戦闘の後が酷いから、目を閉じて、匂いも嗅がないで、私の作った布に捕まった顔を埋めて身を委ねてくれたら安心だ。こんな死体は見るものじゃないよ」

「……待機しないのか?」

「えっ? ここで待つの!? 嫌だよ!! 汚ぇ!」

「……確かに汚いが。仕事だ。我慢しろ。現場保存もそこに人がいなけらばできない。文句を言いたいなら労役を果たせ。お前は借金を自力で返せ」

「はい……。だが、建物の外には行かせてもらう兵士でもない彼女たちにこんなものを見せられるか」

「わかった。建物外に言ってくれ、捕縛者は私が見ていよう。いいな?」

「それが望ましいかと」

 本当に嫌がってるけど、仕事はできるんだよ、こいつ。

 一般市民への気配りなって戦闘一辺倒でまともな学を積んでいない僕にできるものか、

 これで汚職で捕まるような不良騎士じゃなければなぁ……。仕事仲間としていい人なんだけどなぁ。


 ◆ ◆ ◆

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