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1年目、2月のある長い1日3/3

 四角い、箱のような石造りの部屋。窓がない、地下なのかな?

「単独での空間転移……こんなことを当たり前のように」

「当たり前なものか、これを極めるまで私がどれだけ煮え湯を……まぁ、さすがに着地地点は予測できないとどうにもならないけどね。残りも合流して連れてくるからちょっと待ってて、先に向かってくれ司令部に」

「わかった、私達は……」

「我々が司令部へ案内します」

 空間移動を使ったサリヤがスッと風景に溶け込むように瞬間的に消えて、

 開いた長方形の視覚から明るい外の風景が差し込んで、そこから外へ案内されるより早く見知った女が笑いながら少し短い段差を降りる。

「ハハハハハっ! 待っていたぞ! ルイス!」

「コエルレミア? なぜここに」

「戦闘に駆り出されると聞いて試作品を急いで持ってきた! 外に置いてある! いくぞ!」

「試作品……前に話した弓の換えのことか?」

「あぁ!」

 本陣に行く前に彼女が浅黒い肌の兵士たちになにか話して、先に外の広場に向かうように促して移動先を変えたようだ。

「君に頼まれていた方の装置の試作品だが、まずは草案通りに分子散布傘を砲塔にしてみたり色々したが全くもって上手くいかなかった! 自分で金属種類を操作できる鋼の魔術の練度が必要だからルイスには使えないねぇ。じゃあ、別の仕掛けも試して予定の機能を満たそうとなったので、まともに稼働できるものもまだコレ2つしか仕上げられてないよ! 練度が必要な方は最悪……ミリアちゃんが、いや他でも誰か使えばなんとかなるかな? 無理だったら捨てるつもりだ」

「ミリアちゃん?」

「コエルレミア!」

 フェルメイアが恥ずかしそう怒鳴る。

「フェルメイア、私と貴方の関係だろう! 戦場でまで硬いこと言うこと無いよ!」

「戦場!? マシンが暴れているだけなんだろう」

「あぁ、マシンが暴れているだけだが……そりゃ、人同士よりも酷い戦場だろう?」

「?」

「まぁ、いい。出してくれ、じいちゃん」

 広場につくと、なんどか仕事で魔剣と聖剣の説明をしてくれた爺さんが人の死体だって入るサイズの棺のうような2つの木箱を一つずつ開き、中から2つの魔剣に類する兵器を起こす。

「万年筆?」

 その槍の先端を見て、俺はそう見えた。

「そう! 構造を流用させてもらったよ! ペンの下側にあたる部分が外側になるように取っ手を、……軽く振って使う方が易し、か。うん、周囲から離れて、マシン用の兵器の稼働テストだから、注意して……」

「飛び道具じゃないのか?」

「実際に動かしてみないとわからんな。……威力を抑えて、地面を向けて……」

「わかった!」

 地面に文字をかくつもりで、『a』のように削ってみると万年筆と同じ構造の槍の先端からいつも使う金属と比べるとずいぶん柔らかくて熱くなりやすいサラサラした液体の金属が、魔槍が僕から吸い取った魔力で出力する。

「軽いな」

「え、マジ? デカくね?」

「いや、質量的な重さじゃなくて、出てくる鋼の魔力属性因子の変換率のことだ」

 少しの魔力で4000℃を超える熱量を持った液体が出て地面をaの形に融解してへこませて、金属が魔力に戻り僕の体にもどってそこに熱があったというのに周囲へ少し照り返すような熱を感じさせる程度で済んでいる。

「放熱がずいぶん抑えられている。これは……いいな」

「えぇ、擬似的に金分子に変化した魔力をプラズマ化させて結合した物質にのみ熱を伝える構造にしたことで、貴方が普段使う魔術よりも魔力の消耗を抑えられる……はずよ? たぶんね。大気に伝わる熱が抑えられているのは、熱をプラズマ分子内の局所的な温度にした6000℃だが結合していない物質には伝導しずらくしたおかげよ」

「だが……これ、威力が足りないな。しかし、いいな。防衛向きだな。これなら、仲間への誤射の危険も……いや、その使い方だとしたら、いつもの魔弓でいいな」

「そうだね。そうなるか、ヴァルト様の実家の製品、あれは名品だ。目的を考えるとやっぱりそうなるか、この槍はミリアちゃんが使って、こっちの失敗作の傘は……考えがある」

 そういって、日傘をひっくり返したような向きに広がった持ち手に共通の形状をもった槍を爺さんから受け取って、片手で持ち上げたままこの2つのやりより小さい長方形の箱を押し付ける。

「はいこれ、そろそろ聖剣認定されそうな魔弓」

「あぁ、いつものボウガンだな!」

「この槍は、ミリアちゃんが持ってて」

「わかったわ。この万年筆槍は私が使おう」

「普通の魔剣と同じで鋼魔力だけで使える。使い方は今のルイスが使った感じで、近接戦闘を任せる。この赤いは一応、ルイスの一撃と同じ熱量がある。触らないように細心留意を頼む」


「こっちだ!」

 戻ってきた促されて見張り塔の階段近くへ寄らせて南を凝視するロセウスへ、外国人の彼女が疲労を隠しもせずに文句を言う、

「外様を仕事させずじゃない? 疲れちゃったー!」

「サリヤ様のおかげで予定よりも早く要人、非戦闘員の第四防衛ラインまでの避難補助は完了しました」

 ロセウスとは関わりたくないが、仕事だと抑えて睨むだけで済ます。

「じゃ、貴方達の大切な聖騎士の働きを見せてもらえますか? 私達の大切な聖女が言うからなんでもかんでもしてあげてますけどねぇ。こんなの仕事として割に合いませんよ。できるからって何度も気軽に空間転移連発させられているんじゃ、ボーナスで別料金でも貰いたいものです。まぁ、やってるのはただの儀式装置動かすための補助だけどさ!」

「……バルカンのコーカサス正教のお前がここにいるのは、我々の雷霊神聖山岳教会の要請ということになっているはずだろう?」

「ボーナスって誰に請求できるのかな?」

「お前の上司は誰なんだ?」

「……お兄ちゃんに文句言ったら確実になんか貰えそうな気がしてきた」

 ロセウスがいきなりなにもないところから4つに折りたたまれた紙をつかむ。

「敵戦力は動いているもう既に避難は500万人以上は完了済み、既に被害はでている」

 つかんだ紙を読み上げているのか、状況を僕へ向けて説明しているのだろう。

「万人って、大げさすぎない?」

「おおげさ!? 君は何を言っているんだ。アレは……貴様はもう実質的に唯一無二に聖騎士なんだ、もう少し自覚をもってくれ……」

「――――――!」

「――――――――――――!?」

「――――――――――――――――――!!」

 離れた場所で双眼鏡を覗いていた兵士が悲鳴をあげるような声でまくし立てる。

 でも、そんな怯えた声じゃ、何を言っているのかなにもわからない。

 怖くて、早口になっても言い切って仕事をしようというのだ。その姿勢に敬意を評したいけど。

「……敵、視認位置にきます! 飛んできます!! うわああっ」

街を囲う獣除けの壁にして立派な石と土作りの仕切りの関節になる角度を変えるたびに置かれる見張り塔を登って、壁の上と空中を仕切る落下防止のレンガを乗り出してみたそれは……あまりにもでかい。山というほどじゃないが、あきらかに人工物の寄せ集めのようなそれは、

「城! ……に、脚が、生えている……?」

 それから壁へ向けて一斉に砲撃が放たれる壁のブロック石が砕けてめくり上がった泥のような暗い色の土の層がむき出しになる。

 城の脚が縮こまって、これはまるで力をためるバッタのような、

「おいおいおいおい、まずいって」

 俺はもう、確認をとる時間もないので、そのままほぼ垂直に飛び上がる。

 魔術で拡声された同じ大声がそこら中から響く。

「総員撤退。第二防衛ラインを突破される転移魔術で第三防衛ラインまで撤退! 撤退できないものは各自退避、隠れろ! 総員撤退! 繰り返す! 第三防衛まで撤退!!」

 ほぼ真上から見ると、その通ってきただろう進路がヘドロの上をはいっずった後のように、ぶつぶつとした溝がくっきりと乾いた大陸に刻まれていた。

「跳躍、またくる! 砲撃も、構えて!」

 俺の魔術は指が一本でも無事なら発射だけは可能だ。だが、力いっぱい金属の棒を投げて、飛んでいる棒が自ら熱とジェット自分を融かすジェット噴射で推力と高熱を持って進ませた方が威力が強い。

「遅い!」

 その城から足が生えたカエルのような姿勢でバッタのような脚を持つ丸く潰れたような金属の塊に僕の投げたオレンジ色の棒が排熱しながら突き刺さる。

 衝撃の余波で着地する前の地面が土埃のようななにかで薄ら白く波打つ。

「うわあああああ!」

「なにが、起きて」

 もともと泥でつくられていたように金属の体を持った城のマシンの丸い駆体は、打ち込んだ金属杭を中心に飴細工と粘土細工の作りかけのようにドロドロと大きなくぼみになって融ける。

 悲鳴や困惑がうるさい。それでも兵士か?

「戦えないやつは下がれ!」

 情けない叫び声を上げて士気を下げるなら居ないほうが良いことくらいチンピラの喧嘩でよく学んでいる。金持ちの訓練じゃそんなことも学べない貧相な学習形態なのか?

「邪魔だ! 泣きたいなら帰れ!」

 荷物を守りながらよりも、僕一人の方がマシだ。

「い、たった一撃で……あの、マシンを」

「この程度なら、ね」

 前に見たように地面と空の半分側を埋め尽くすような数を僕一人で処理したら、また疲労で身動きが取れなくなってしまうだろうが、この一発じゃ疲れるようなものじゃない。

 半分とけたマシン下半身の下半分が金持ちの一軒家の本館よりも大きい塊が発射されるような速度で吹き出して、完全に推力を制御しているように飛行して広がる。

 まず、左半分を慌てて杭をばらまいてその金属の肌を抜こうとするが、感覚でばらまいたそれらを正確に見定めるように地形の隆起などを利用して低空飛行で交しまくる。

「取りこぼしも多いのか!」

「一旦後退しましょう。あの数は……!」

「なんで? 僕は取りこぼしを全部追う!」

「はぁ!?」

 両翼に広がったどでかいそれは、速く、飛行してるが100匹よりも少ない。あんなのに体当たりをされただけで、そこら辺の民家は沈む

 感覚で魔術の金属をばらまくのではなく、狙って、腕で魔力でできた金属棒を掴み、思いっきり投げ、投げながら魔術の排熱で棒自らを加熱させて排熱と融解する金属の魔力を噴射して、狙えば、一発の速さはより早くなる。

「放射じゃなくて、投げれば当てれる! 全部壊すまで耐えて!」

 先に広がった左側の4つの飛翔する塊を狙って金属棒を貫き、穴凹でその身に空白を作って動きを止める。

「わかった! 城の周りは私が止める。数を減らしてくれ!」

「わかった」

「おいおい、フェルメイアも何を言い出して」

 フェルメイアが先端が万年筆のようになった槍を担いだのを確認して、僕はまっすぐ前へ跳躍して、低空飛行で当たりにくいとはいえ、いくらでも数を減らすために疲れることをして、全力を尽くす。


 ◆


「な、え!? なにが……起きて」

「空が、オレンジ色の花? 太陽が咲いた!? なにが、落ちて」

 残った私が槍を持って、レンガ造りだった半壊した塀を飛び降りるさなか、後ろからルイスの魔術への間の抜けた驚嘆の声が聞こえた。

 後ろ側にまったく飛んできていないオレンジ色の塊は下半分だけ咲いた花弁のように、オレンジ色になったと思ったら先端から枯れていくように真っ黒に染まって、ジェット噴射で標的へ飛来する。

「後は、どこにいる?」

 ルイスの攻撃の余波で地鳴りが酷い。いや、まるで地面がシャッフルされているようにグラグラとかき乱されているのだ。

 二匹、飛来した。

 その巨大な塊は見ると巨大すぎるアブのようだがアブにしては丸く、顎が噛み砕く構造ではなく、突き刺す構造になっているのだかた、どちからと言うと蚊のような姿なのだろう。

 ペンのような切っ先の槍に鋼属性に類する魔力を注ぐと赤いインクのような物質がペンから持ちての外側になるように吹き出して走る私の軌道を流星の残照のように居残って刻む。

 ――ヌル、り。――まだ地面がグラグラとかき乱れる。

 ちょっとした倉庫くらいの大きさのアブに吸い込まれるように飛びかかる私の切っ先を滑り、通りすがった奇跡に赤い色を滞留させて、崩れていくアブの巨体をまた巻き込んで融解させる一撃で大型マシンを屠った!?

「腕が枯れる……」

 その威力に見合うだけの魔力は持っていかれる。

「まだ一体」

 すでに魔力を大量に消費して頭が痛くなっているというのに、もう一体とんできるハエの向こう側に、中型のマシンがぞろぞろと走ってくるのが見える。

 討ち取ったマシンの死体、アブにおける腹の部分から数倍大きい馬のような車輪のまとまりにまたがった人の上半身に近い形の塊がゾロソロと走り出す。

「は、どこにいたんだよ!?」

 このマシンは攻撃用ではなく移動用? そう思っていたが眼の前のマシンの口元が熱を帯びる。なにか、発射された。熱を感じて障壁をつくらなくては防御が間に合わなかった。事実、余裕をもって作った障壁は半分を超える30枚まで熱だけで貫かれた。

「コレも十分、戦えるのか」

 このインク、勢いをつけられる。そういうことに気づいてしまっている以上、背後に置いてきてしまった死体から走り出すマシンが地面についたその瞬間、薙ぐ以外の選択は出なかった。

 アブの頭の後ろ回ったというにに、背中まで回ってきたアブの節足に脚に痛みを入れられながら、右腕を軸に持った槍を体の左側から右側へ一本の巨大な赤い筆を振り回すように、吹き出す赤いインクの一線を地面からアブの頭と死体と、地面に降り立った騎兵たちをまとめて、蒸発させる。いや、これは、インクで溶けただけ? どっちでもいい!

 ありったけの魔力で横薙ぎにすると、さっき私が落ちてきたところから真っ赤な板のように

「壁になってくれ」

 インクのようなプラズマが滞留して私の側面に散るマシンの移動を阻む。

 こいつらはダンゴムシがそのまま車輪になって転がっているような気持ちの悪い金属共だ。

「そして保ってくれ! 私の体! 魔力!」

 出の悪くなったインクを刻み込むように輪っかに押し付けると、量は足りなくなってぷつぷつとしていても一瞬押し付けただけで溶けて動かなくなる。

 あと、5体。

 上から飛んできたニ体が一方が譲らないと私に当たらない位置に移動して、お互いに衝突したところを従事に降って、小文字のLあるいはOのような形の切っ先をつくって、そのままもう一回跳躍で落下を避けたところに、飛んできたマシンにプスプスとガスのように出なくなったインクを突きたてた切っ先で放って、爆散させる。

 あと2体。

 インクが出なくなった。一体、突っ込んできた。側面からもう一体。

「ダメだっ」

 一体、インクのでなくなったやりで受け止めるが、普通の威力の魔術ではこちいつらに有効打は与えられない。もうすぐ、プラズマの残照の壁が消える。

 先ほどニ体を破壊した締めたリボンのように残ったへ投げるように押し込んで体が仰向けになって魔槍が腕から離れる。

 側面からそれが熱をもった高速回転をしながら迫る。

 死んだ。

 静かだ。これは、死ぬ直前のもうどうしようもない一瞬はこんなにも長く、穏やかに感じるものなのか……。

 眼の前の高速回転していた輪っかが爆発した。

「地鳴りが止まっ――」

 土埃が巻き上がるると、正面にまだ明るい色が滲んだ金属の柱が突き刺さっている。

「……え……え? は……? 何が、いや、……」

「馬鹿ヤロウ! 戦えないなら下がれっていっただろうが!」

「ルイス……あぁ、悪かった」

「……はぁ、無事でよかった」

 自分の無力を感じる。あぁ、だからこいつはあんなにも不遜な態度だったのか、それは当然だ。ルイス、いや、クロヴィス・カンビオンから見たら我々は等しく戦えないのと同じだ。……だから! だからなのか!?



 「……マシン、壊滅を確認。目視範囲内のマシンの全滅を確認しました! いますぐ、本部へ連絡を」

 連絡種の兵士が慌ただしく駆け回り、マシンの動きを確認する兵士たちを少し前までマシンから人々を守る堅牢な街の塀だった盛り土と瓦礫の上で、眺めていると脚を怪我したらしく杖をついているフェルメイアと外国の使者とは言え、同年代っぽいサリヤさんが器用に瓦礫にてを着かずに登ってくる。

「ルイス……お前のこと誤解してた」

「あん?」

「尊大なだけのやつだと、こんなに強いと知っていたら、……いや、いままでの非礼を謝罪します。貴方は実力に見合った態度を」

「は? 選定の儀のことを言っているんだよね? そんなわけがないだろう? あんなのは、無理難題をふっかける必要が……まぁ、裏でいろいろあるからあんな態度をしているわけで、え、全部が全部本心だけど無駄な態度じゃないよ? だから、苦言を呈してくれるフェルメイアが不問になっているというか、これかたもよろしく」

「よろしくというと」

「これからも態度を悪くするポーズを取るから、そのたびにつかかってくれると嬉しいな」

「そういうことであればなんなりと」

「無論、本心で言ってね?」

「それは……」

 なぜ、口ごもる。命の危機を救われたから? 騎士を目指すなたこれから何度だって有ることだぞ? 覚悟しとけよ。

「えーっと、サリヤさん? なにか」

「クロヴィス・カンビオン、いえ、ルイスって呼べばいいのでしょうか? 貴方を、この方をなんと呼べばいいので、なんでこんなに強いんだ?」

 僕の反応が悪いせいか、途中からフェルメイアに話しかけている。

「? ルイスでいいよ」

 フェルメイアが持っていた共通規格の声を送信する装置に音が入る。

「『本部へ、増援の攻撃により視認範囲内のマシン全滅、第一師団は壊滅的な被害を受けながらも、推定5000万人の避難を確認。被害は、……推定、……いえ、行方不明者の捜索をしてから被害推定を連絡します。ですが、死者は多数。検討もつきません』」


「それは?」

「緊急の連絡手段だ。緊急性の高い情報がこれに入って声を出す魔術装置だ」

「死者……出たのか」

「あぁ、だがお前のすごい威力の……、あの魔術でその数が大きく抑えられた。普段はこの魔術を使わなかったが、隠していたのか?」

「いや、『すごい』ってこれはいつも使ってる魔術と同じものだよ」

 『死者は多数』……『検討もつかない』……? なんだ、これは、目をそらしたくなる。だけど、そろそろ気づきそうな。なにか、強い、違和感が。

「なに? いつも使っている……どれだ?」

「棒状のこれを発射して、先端を加熱するあれ、同じ魔術を全力でやったらこんなもんだよ」

「……? だが、すごい威力を出すのは研鑽故の技だろう?」

「なにを言っているの? こんなの、いや……、なんだ?」

 手元に発生させた棒を見て、割と余裕のある自分と、フェルメイアの満身創痍の姿の、違和感。

「私など、ルイスが『魔力の消費が軽い』といった魔槍を少し使っただけで、魔力が枯渇してさっきまで死にかけていたよ。お前の魔力はそれだけ鍛えてふやしているんだろう?」

「…………」

 体が暑い、汗が冷たい。凍えるようだ。後ろから掛けられる驚きの声を無視して、瓦礫の山を駆け下りて、塀の中を少しだけ進んで防衛本部へ向かう。彼ら士官からねぎらいの、いや、少し違う。感動のような言葉をかけられ、でも、それどころじゃなくて、頭を抱え唸って魔術装置とにらめっこをしている連絡手の兵士の肩を掴み、質問してしまう。

 たぶん、みんな驚いていた。

「おい君」

「はい、なんでしょう」

「聖騎士代行、クロヴィス・カンビオンとして質問する。推定被害規模……予想される数はどれほどのものだ?」

「それは……その」

「いったい、何人死んだ!」

 どうようしいたせいか、遅かったのかあまり速くなかった僕に追いついたフェルメイアが部屋に入って、外国の方と一緒に文句を言いたそうだ。

「おい、急にどうしたルイス!?」

「え、結構気難しい人なの?」

「それはそう」

 あぁ、そうだ。サリヤさんへの答え通り気難しいんだ。そんな必要なかっただろうがっ!

「……避難が遅れてしまった街が、避難先ごと、……いくつか……力及ばず、……我々の力不足のせいで、10万人、いえ、少なくとも20万人以上に死者が出たと、予想……されます」

「なにを言っているんだ? あんなもので、なんであんな……あの程度でそんなに人が死んだの……か?」

 意識が遠くなるような感覚がうするが、同時に明瞭になるような血の引ける感覚が頭に殴りかかってくる。

「なんだ? それ! なんなんだっ! 人がそんなに弱いわけがないじゃないか!? そんな簡単に、死ぬわけがないだろ!?」

「ルイス? ……何を言っているの?」

 フェルメイア、素で困惑したような顔をするなよ。

「いやだって、そんな、嘘だろう? コエルレミア! そんなに、死ぬわけが……」

「死ぬだろ。人は、あんなのに襲われたらどうようもない」

「だって、あんなの、俺が、一撃で倒せるようなやつが……、そんなに……そんな強いわけがないだろう!?」

 フェルメイアは叱責されたのだと思ったのか、申し訳無さそうに答える。

「……倒せないわ。そんなに誰も、あの小型のマシンでさえ、勝てるものは数少ない」

「なら、必死で逃げれば! なんとでもなるだろ! 勝てるやつが、俺がくるまでに……なんとか」

「いや、…………必死だったはずだよ。誰も彼も逃げるだけで命がけだ。騎士団だって防衛ラインを築くだけでも必死で、それでもどうしようもなかったはずだ。アレは、それだけおそろしいもののはずだろう?」

「そんな……じゃあ、俺は、僕が……真面目に……なんで……、そうか……聖騎士にしたいのは、僕じゃなきゃ倒せないとでも、言いたいのか? お前らは、あいつが、そんなに強いって……」

「なにをいまさら」

 サリヤさんが、引いている。意味がわかった恐怖のような顔。

「待て……ルイスさん!? 貴方、まさかっ!」

「あぁ、わからなかったんだよ! 僕が、こんなに強いなんて!」

 あぁ、クソ。理解してしまっただよ僕は! 自分が、だとしたら怠けていたのは僕だ。怠慢なのは兵士じゃない!! クソ、クソッ、僕が悪いんじゃないか!!

「だとしら、……僕が、僕が……もっと頑張っていたら……こんなに、死ぬことは」

「いや、それは考えすぎだ! お前は十分戦った、最善も……」

「本気なんてだしちゃいない」

 作戦本部が静まりかえる。

「最善なんて尽くしていないんだよ……僕は、そんなの死んだ人たちが、そんな話ないだろう!? 僕が真面目にやらなかったから、死んだなんて、理不尽な話があっていいものか!」

 膝をついた僕を彼らはどう思っていたのだろう? 僕が、真面目にやっていたら、いったい何人死なずに済んだのか……。

 涙を抑えられなかった。

 混乱していたんだ。

 僕は、酷いやつだ。




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