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狩り中断

 すでに着弾と放熱は終わっている。

 その粗雑な連射を気配と反応が、魔力が動いた気がする全方向に金属の塊の熱で人を焦がす。軽い動作のそれに反応できたのは何人がいたか?

 反応できたことろで防御こそ誰一人として出来なかったから生まれのが人だった黒ずんだ塊から噴き上がる真っ黒な不純物を多分に含んだ蒸気と……。

 宵闇の下で赤熱の色に輝く金属柱と、地面を大きくえぐって真っ黒に蒸発させた地面があったはずのクレーターと、そのに居たはずの100数名のミイラは、すでに何発か魔術を発射した痕跡もあったが、金属の棒が排出するジェット気流にかき消されて僕には気づくことができなかった。

 爆音で笑いが収まり、状況を理解される前に、寂れた保安所の上に立ち、さっき話していた頭目が生きていることを確認したあと、周囲の笑い声が聞こえた全ての範囲が蒸発できるように、鋼の柱を手のひらから雑に生み出しては発射する。3000度の塊から放熱される温度に人の居る場所の空気が鉄色の蒸気に満たされる。

「うあああああああ!」

 頭目の男が無鉄砲に突撃して斬り掛かってきたので、魔力でできた金属の塊を棒状に形成し、加熱させずに男の剣を受け止める。

 後ろの余りは尻もちをついているな。

 力で負けたからか、男は手のひらからなにかの魔術をつかって砂の渦を発射する。流石に避けるよ。

 魔法を外した手に平にギザギザの返しの付いたトンガリを魔力で作りながら突き刺して金属の先端近くの途中をくぼみができたように変形させて男の肩口に引っ掛けて、腕力と体重移動で男を地面に叩きつけながら、金属棒に支えられる形で宙に浮く。

「ほいよ」

 さっきまで男が居た場所の周囲にいたのと、残った生き残りに向けて手のひらから金属柱を発射する。終わり、300度近い魔力で制御された放熱など、消費する魔力の質で勝った上で熱に耐える魔力量が必要になる必殺の対多数攻撃だ。

 この技一つで連邦最強と呼ばれることもある僕の必殺技を三下にどうにかできるものか、

「これで、ここのクズは全員屠殺完了だ」

 ほぼほぼ全員蒸発させただろう。少なくとも見える範囲は皆、真っ黒のミイラになった。

 屋根に押し付けるこの男以外全員の命を蒸発させた達成感と、露悪的な感情を思い浮かべてしまった自分の加虐心に反省しつつ、状況が理解できてなさそうな気安い事を言ってみる。

「ほら、これが聖騎士の職務さ。お前以外全員殺処分したよ」

「は、はぁあ!? おま、こんな、こんなこと、許されるわけが!」

 僕が……、私が出張っている時点でそういう扱いをされてないのに、哀れなものだ。

「許されるんだよ。私は議会より命じられてこの開拓地の悪党どもの独断での殺害を許可された、連邦に認可されたメディテュラニスの正当なる聖騎士だ。だから、普通の保安官では簡単には許されない。犯罪組織への警告なしの殺害攻撃も、確認を取る必要がない。むしろ、僕が許可を出せば保安官も可能となる身分なんだぞ。そういう制度があるんだよ」

「聖騎士……? なんだそれ、気取りやがって! お前もいいとこの出て俺たちみたいな下々の気持ちなんて判らないからこんな簡単に殺せるんだろうが! 鬼畜が!!」

「簡単に? いや、そんなことはない。君たちが取り囲む中に、市民を巻き込んでないことを確認したから全員殺害したのだがね? 人質の盾を使われてたら私は苦労した。それにさぁ」

 切り込み隊長か、頭目か、既にその肩書に意味を失った男の頭を数回加減して蹴って、片一方の奥歯が一本抜けるまで何本かの前歯を折ってしまった。

「君たちは市民ではない」

 僕の魔力で生まれた金属棒を魔術により変形させて男の方の骨を捻る。

「市民を殺す犯罪者だぞ? 本来はそんな外道にも市民権はあるが、私の前で外道にそんな詭弁は許されない。私が出張るほど殺したということは……総督より『殺しすぎ』と認定されたということになるんだ。そういう意味だぞ? お前らは行政のお墨付きで市民ではないと判定されて私により殺処分されたという意味だ。君たちのような悪という病気が蔓延した。そういう事態でこそ動くのが僕たち聖騎士なのだぞ?」

 3000度の熱で蒸発した死体のように黒い感情で男を屋根に押し付けていると姦しい落ち着きのない女性にたまにある特有の、元気一杯の叫び声が頭を殴るように響かせる。

「おい! ルイス、ルイっ、あ……クロヴィスさま! おいおい、殺すなよ。そいつは」

「分かっている! 貧民出身の出自でもないただ人殺しのマフィアの集まりの癖に下々を自称するとかあまつさえ、代表面してるような気がしてムカついたから、奥歯を折った。いいだろ、それくらい。顔は同じだ、書類にあったボスらしき候補と、顔面の半分ボコボコにしてしまったのは悪いと思う! ごめんなぁ! 仕事を増やしてしまって!」

「そうか! それと、あぁ、……確認のためにも、もう外に出ていんだよな! もう、あの怖い鉄柱は消えたよね!」

「まだ少し残っているが、もう発射するつもりはないな。熱も排出し終わった。蒸すような暑さも死ぬほどじゃない」

 黒く染まった空の下、赤く熱をもった輝きは黒ずんで、黒ずんだ赤を纏った金属柱は魔力に再置換され、まるで溶けた氷菓子のように半分はもう既に、残りも徐々に自然界の魔力になって返っていく。

「つまり?」

「注意して近づかなければ危険はないよ」

「おっけー! 拘束と尋問は任せてね!」

 そう言って登ってきた壮年の女性騎士は意気消沈としてうなだれる男を、随分厚着した服の裾から魔術で操作して変形させたしなやかな素材で拘束して、口元に緑の魔力因子と類される治癒に必要な魔力を使った魔術を使って止血を図る。

「尋問はともかく、拘束は信頼しているよ。報酬分の働きは期待しているし、アンビー先輩の実力も理解している」

「それはどうも……ん? ……えっおい! 報酬分を期待って、そんなにか!? 私の肩代わりしてもらった借金いくらだと思っているわけ!?」

 シュルシュルと衣擦れの音をこぼしながら、服の下に拘束に使用した素材をしまって、驚く。

「…………すまん、過大評価した。そういう風な、正しく表現するように言われてしまったらそこまでの期待はできないな」

「そうだよね! そうだな! バカみたいな過大評価されてなくて安心した。姪の邪魔をしてなくてなっ!!」

 男を拘束して持ち上げるように屋根から引きずり降ろして着地するが、あの男も屋根に一息で飛び立てるくらいの錬気が使えるんだから雑に落としても大丈夫だろうな。

 懐に忍ばせたお守りの鞘を撫でて、彼女の言っていた姪の名を呟く。フェルメイア……ごめんなさい。やはり、気持ちの整理には時間がかかりそうだ。

「邪魔だって? 貴様は既に迷惑をかけているだろう!? 不正騎士さん」

 笑ってしまいそうな皮肉に反応にこまったように顔をそらして、アンビー・リンドレイクは仕事に徹してゴロツキに麻酔の魔術をかけて卒倒させながら引きずる。

「いやいやーそれとこれは別件さ―!」

 過去を咎めて、今更気を配るような奢りを諫めると保安所の中に入りながら返事が叫んでくれた。


 ◆

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