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鬼、問い掛ける

 「監視網の配備が完了しました。目標の脱出に合わせていつでも砲撃可能です!」

「ご苦労。各部隊気を怠るな」

「はい!」

 谷間の土色の天幕を決まった入口から特定の方向以外からのみ土に埋まっていないことが見える口から何人もまとまって出入りする。

 その中でも本国の兵士から志願を募ってつれてきた船旅から共にした部下たちへ声をかける。

「地中に向けた魔力の反応にも注視しなさい。これだけ大きくコソコソ周囲を囲ったっていうのに穴を掘られて逃げられましたでは話にならん!」

「御衣!」

 こいつほどの探査に優れた土属性の魔術の使い手もそういうないのだから、二人がかりで交代で監視する地中にも動きのないものとして活動できる。少なくとも、彼らがわからないのなら私が交代してもわかるものじゃないだろう。

「フェルメイア様! 彼が来ました」

「仕事中にそういう表現はよろしくない。注意2つ目」

「はい!」

 私より若い騎士が『彼』という気安い表現を使って格上に当たる相手を表現する。男の方が多い騎士団でも男の比率が多い開拓地出向組の中で同性ということも合ってプライペートが中が好すぎるせいで、彼女は少し、そういのを忘れる時があるのは良くないことだ。 

「クロヴィス・カンヴィオン! ただいま到着した」

 連絡手に案内され顔見知り一名の大きな棺のような箱をもたせた女騎士を後ろに控えさせて、彼が天幕の入口の下り坂を降りて数ヶ月ぶりに私に顔を見せる。

「聖騎士が二人……」

「たしか、あの二人って」

「『そういう関係』らしいですよね?」

 意識しないと浮いてしまそうになる歯を浮かせないように必死でつまらなそうな顔にして、彼を抱きしめてしまう体は感情を止められなかった。彼はそっけなく、ハグを終わらせて、名残惜しい私の挨拶に困惑を返す。

「来たか、ルイス。長旅ご苦労」

「ミリア。それは君にも言えることだ。なぜ君も開拓地に来たんだ!」

「想い人を追いかけて仕事を変える。珍しい話でもあるまい? ちょうどよく出張の打診があった。それだけで愛する人のもとに行ける枷など消えるものさ」

「すまない。今は、そんな話をできる心境じゃない」

 軽いハグで離れた愛しの人はその目に宿った激甚の怒りに私は冷水を浴びたように冷静にならざるを得ない。そうだ、そんなことを言ってる場合じゃないのだった。

「それはわかっている。だから、全力でお膳立てをさせてもらった。場合によっては殺すかもしれなかったが、こうなってしまえば私はお前を支援した方が確実だ。では、状況を説明する。今我々は隠れている。そういったところだ。人質をとって交渉を試みたカヴァデイルの交渉に応じたフリをして視認可能な地点から――――――――――――――――――――――――」

 半分言い訳みたいなことを言って仕事の状況を共有する。

 説明を終えて、これからの作戦計画を聞いたことをルイスは首を振って、クロヴィス・カンビオンとして神妙な通告をする。

「俺は初めてカヴァデイルがその魔術を発動したのを見た。表層に見えた魔力の配置からある程度の式の中身を理解できたが、想定していた魔術構成式の中でも最悪な部類だった可能性が出てきた」

「それはどういう意味?」

「いまから説明する。この板に書かせてもらうぞ」

 作戦会議の目板に添えられたチョークで観測したカヴァデイルの魔力配置と想定していた式の一覧と、ありえないものと、可能性が高いものを印をつけて分けて記載し終わる。

 開拓地の騎士はほとんど理解できてなさそうだったが、数人は連絡手、補給確認の仕事を続けながらチラチラと板を見る辺り、全くもって理解できないものでもないようだ。

「何人か、50人くらい魔術に秀でたものに作戦に参加してもらいたい」

「………………、そうだな。本国より来た者で! いや、この縦穴の天幕の場にいる全員で、この式を理解できたものは挙手を求める!」

 その中で、頭に叩き込んだ経歴書の魔術の実力評価を思い浮かべて、……追加を含めても、全員動けたとして……あぁ、

「実際現場に出て不足があったとしても、20人くらいまでは仕事を保証できる」

「これでいい。20人か、挙手をした騎士には人質となった市民の救出のために命を賭してもらいたい! その覚悟がないものは、ここから出ていけ! 覚悟が有るものは作戦会議のためにこの板書の前に集え!」

 全員、誰も天幕から出ていくことなく集った。その中で、数名は同僚に2、3言話を交して私達の前に立ち、誰が言うでもなしに敬礼をする。ルイスも敬礼をもって説明を始める。

「よし! 全員、君たちの力もって市民を救うぞ!」


 ◆


 カヴァデイルの他人の魔力を炎の魔力属性因子に全て変換して勝手に炎魔術を使用させて対象者の力で対象者を爆発させる魔術は彼独自のオリジナルの魔術だ。

 故に、分析しきれていない部分が多分にあった。

 それでも焼け焦げた。被害者に刻まれた魔術の痕跡から確定できる内容もいくつかあった。

 他にも起きた現象からわかる事実的な特徴も多く、発動可能な効果範囲が広く、威力は被害者依存でカヴァデイルには威力を操作できず。実力のある兵士を対象にすることで被害を拡大させるのが奴の常套手段だった。

 殺す以外の手段で魔術を貼り付けられた場所をカヴァデイルの魔力を含んだ身体の一部を切除しない限り、カヴァデイルに心臓を握られているような状態だ。だから、遠隔的に爆殺することができる。そして、人質に命令して兵士を襲わせたりできる。

 そう、考えてられているが、今、思い返しても不自然な疑問が残った。

 母さんが死んだとき俺はカヴァデイルを捕縛して、騎士団に引き渡した後だったから、確実なことを言えないというだけなのだが、奴は気絶していたんじゃないか? って、あいつを昏倒させて運ばれて帰宅する途中に例の同時多発爆破事件は起きたのだが、やつはの時点では自由ではなかったんじゃないか? という疑問もだ。


 母さんを殺したのは逃亡のための爆発と別だったんじゃないかって、

 本当に気分の悪くなる結論、あの被害は目的をもったものではなかった、ただのイタチの最後っ屁だったなんて、どうしようもない結論。

 だから僕は、こう言うんだ!

「俺が悪人だったら、あの魔術の発動条件に自分の魔力を定期的に注がなかったことを加えて、負けてからも嫌がらせができるように小賢しい真似をするんじゃないかな?」ってね。

「そして、その懸念は正解だった可能性が確認された。確実じゃないが、その可能性がある」

 方法論は2つ、

「まずは、この板書の記述の中の、これらの式が想定された場合、闇の魔術か炎の魔術の上書きで奴の村人に付与された魔術を消せるか?」

 何人かの騎士が微妙な顔をする。

「そうじゃなければ、術を施された部位を切除して、治癒か再生の魔術で傷を直す。丁寧な処置は後回しにするとしても、そういう緊急処置、……君たちはどれだけ時間がかかる?」

 またこちらでも何人か厳しそうな顔をする。

「もしも私が一人で作業をするとしましょう。多めに見積もって一人、一分かかるわ。そうであると、しましょう。想定される生き残った人実地の最大人数は2000人、一人でやるなら、一日と半分より少ない時間はかかると思って良い。連れてきた20人の兵士で分担しても……2時間は欲しいわ。だから、作戦開始に合わせて連絡して他の地点から治癒か闇、炎の魔術を使える兵士を集めるべきね」

 フェルメイアが概算を多く見積もって答えてくれる。

「わかった。そっちはミリアに任せる」


「今、我々の最大の懸案事項は奴の魔術の手動起爆の効果範囲が特定できないことだ。だから、……奴の逃亡を開始してから2時間後に確実に殺害する。そして、奴の逃走ルートを絞るための目立つ検問の配備は完了している」

 騎士の一人が質問する。

「えっと、それじゃ、奴を手を離してから2時間以内に魔術爆発がしたら、……どうするんですか?」

「どうしてもその市民は救えなかったということだ。それが嫌なら、救助作業に2時間はかけられないということだ。我々は全知全能の神様なんかじゃない。だから、救える命には限りがある。だけど、むしろ、そうだからこそ、最善を尽くしてできるだけ多くの市民を救うんだ」

 …………その想定で、作戦会議が進め、我々は、

 ――――――逃亡2時間後に僕が狙撃する作戦を計画した。



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