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卑劣漢、守らず


 静かだ。

 逃げる俺達の背中越しに一目見えた。揺れを起こし続ける大地への氷塊の打突のあまりもの騒々しさが、聞こえないほど、高く高く、高く高く跳躍したその女が打ち下ろす田舎の一軒家よりも大きい氷の槍の連射が真下へ打ち続ける。その聖騎士の姿は、

 鼓膜が破れるほどにうるさいその大地は空に浮く彼女の静かさの前には霞むほど、どうでもいい煩さだ。


 ◆


 氷の塊の上に立ってしまったカヴァデイルの脚を、私の魔力でできた氷で埋め尽くされた壇上が凍てつかせ縫い付ける。

「貴様! 俺を殺したら、あいつらがどうなるか」

 話を聞いてはならぬ。威力を抑えた魔剣を3つに並べた隙間から魔術を発射する魔弓から、有機物を誘拐させるアルカリ性の溶液を作る水の魔術をの塊を発射する。

「ぐべっ」的の左腕の肘を融かし、腐った臭いから肉の裏の骨が白さを露出してくる。

 口を、狙ったつもりだ。舌が回ると、やつは交渉できると判断する。人質を使いたいなら、まず、人質を維持しながら交渉する段階が必要になるのだから、人質を捨てる判断をさせないためには舌を潰すのが最適だと思った。

 なら、話しを聞かない態度を作るまで!

「見事であった」

「は」

「君の戦いかたは確かに状況によっては強いかもしれないが自分より強い相手には通じないな。いや厳密に言うと格上にも奇襲としては十分通じるであろう恐るべき悪辣な術だが、君より強い相手が君を殺すことを意識して対策をして戦いを挑めばあっさりと対処可能な暗殺術だ」

 早口でまくしたてる。ルイスには悪いが、このまま殺させてもらう。

「本当に姑息なだけだ。悪辣なだけで弱い相手にしか通じない下劣というその一点で恐るべきまで脅威になる最低な魔術だ」

「お前ら! わかっているだろうな!」

「う、うわああ!!」

 氷の塊を登ってくる村人。近寄れないように、手元をしもやけにして傷をつけてでも凍結で縫い付ける。

「黙れよ、死んで詫びろ!」

 爆発の威力は、いや、氷が揺れただけでこのまま撃つ、いきなり、視界が全て赤く染まる。

 視界が、弾けた肉で潰れる。発射した氷の槍。

 グラグラと、氷の粒と、横れた血肉の奥の方から見える。片腕が腐って骨が見えている男が走る姿が見えた。見えてしまったんだ!

 外した。

「よく動いてくれたよ! 『死にたくなければ俺を助けろ』って前もって軽く言っただけで簡単にさぁ~!」

「約束もまもれない卑劣漢め!」

「なんとでも言え! 俺がやろうと思えばこの村はどうなるかわかっただろう!? 剣を捨てろ!」

 村人の避難していような集会所で、村人に向けて手を添える。考えるまでもない。

 私は氷の舞台の上に魔弓の三本の発射方向を向いた魔剣を足元に捨てて、控えの後方部隊が隠れている9時の方向に全力で蹴り飛ばして、部下の対処を祈る。

「これでいいか?」

「まぁ、いいだろう。兵士を撤退させろ!」

「わかった。私の一存でできる範囲のみは約束する」

「だめだ! 全員撤退だ! じゃなきゃ、村人は全員人間爆弾にするぞ!」

「……時間がかかる。だが、善処しよう。ところで、その約束を守ったら人質は助かるのか?」

「聞いてくれるのか? あぁ、そうだな。見逃していいだろう」

「要求を呑めば村人は助かるか?」

「あぁ?」

「もう一度聞く、『全部隊撤退』というお前の要求を呑めば、生き残っている村人の命は保証してくれるんだな?」

「なんだそんなことを?」

「答えられないのなら、私はこの場でリスクを冒すしかない」

「……そうだな。それはお前らの態度次第ってことで」

「そうか」

 この場で助けられる人数はほとんどいないだろう。だが……、

「あぁ! わかったわかった! いいだろう。お前ら全員の撤退が済んだら村人を見逃してやるよ」

「わかった。交渉は成立したとしよう」

 私は一旦拠点に戻り、増員と包囲と監視の拡大を命令し、見える範囲からの全ての舞台の撤退を命令した。


 ◆


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