正義到来
「なんでもう剥がしているんだっ!!」
個人の意識としての僕が言えることそんなことばかりで、薄暗い谷の隙間の森のそばを通る路線を剥がしてまだ作業を続ける坑夫のような格好の男たちは、僕を見て、背負っていた子供を降ろして、その双方を見て言葉を探す
「な、お前は騎士か?」
「あぁ、そうだよ。高等兵士とか、高級兵士ってことでもいい。僕は騎士だ。間違いなく」
壮年の坑夫みたいな市民が、他より少し老けた彼が質問を続ける。ここは直射日光が当たらなくて涼しい。
「なぜここが」
「そんな話をする必要はない。線路をもう剥がしている以上、貴様らの減免できる罪も限りが有る。だが、そこの爆弾が爆発してしまったら、貴様らは皆調べ上げて死罪なんだぞ!? なんで、そんなことができる!」
僕の激昂をよそにその男は僕が降ろした少年を見る。
「そっか、ケイリーが密告しのか」
「俺はっ」
「政府に私達を売ったのか!」
「みんなが」
「我々を裏切ったんだな!!」
「勇気ある者を卑怯者が謗るなッッ!!」
感情を抑えられなかった僕は初老の男性に近寄り、それに反応した傭兵らしい武器をもった男たちとともに腹を殴って、殺さないように必死に二撃目を放たずに一撃で4人ほど昏倒させる。
「ふー、はー、クソがぁ! 人々のために正義を優先した勇気あるものを姑息な虐殺者が謗るようでは君は大人としてはずべき生き方をしていることを自覚してもらえないか!? 少年が密告しなくては君たちの中に死刑を回避できる者は現れなかっただろうというのにな!」
「死刑!? 死刑だと! 圧政に抵抗することが罪だというのか」
「馬鹿か!? 列車が転覆したら鍛えた兵士以外の無差別な人々が死ぬんだぞ!」
そもそも、エドワード・キッカーが敵対するのは資本家であり政治家ではないだずだ。彼の主な活動は銀行の借用書を焼き払い、誰も殺さない、そういった弱き人の味方をする悪人だからこそ、その中に正義を見出した者は多く、支持者が溢れというのに……。
「あん? そんなの」「宣告する!!」
視界に写ったそれに慌てて、しまった。だが、宣言だけはする。
「そこの! 逃げるな動くな! 逃げたら殺すしかなくなっちゃう! やめッ!!」
森の中に入ろうとした彼らに、僕は、超文明技術を用いて作られたマシンの群れを屠った金属棒を噴射熱で貫く魔術を発射した。
――――――ジュ、
直撃した人が一瞬で融けた。指が対象の直線上に位置するなら発射事態に予備動作はいらない、低燃費な魔術ゆえに、あと5人以上はいる傭兵の誰一人反応できないし、僕が何に何を発射したのかを理解している市民だってほとんど僅かだ……。だけど、涙が溜まってくる。
「警告はした。なのになんで……逃げるのだよ……逃げんだよ!」
「聖騎士さん、なんで……」
ケイリーと呼ばれた少年、僕が連れきた勇者だけは僕が何をしたのか見えたらしく、斜め後ろに視線を流すと恐怖の顔が俺を突き刺す。
「この場にいる全員に告げる!!」
絶叫、僕の声だ。悲鳴だって出したい。だけど、市民のだれもまだ悲鳴を出してないから、俺は我慢する。苦しい、彼らを皆殺しにはしたくない。
「列車転覆! 爆破未遂に関わった全てのものは多くの市民を無差別に殺そうとした虐殺未遂の犯人であるッ!! そこの傭兵! 俺に切りかかったら、貴様たちだけで済むとは限らない。さっきの杭を投げた瞬間に反応できたたものだけが挑めば良い。挑んだところで、反応できたというのなら、その場で殺し、護衛を見殺しにした腰抜けと名前に泥を塗ったうえで配偶者も殺す! そういう真似をさせないでくれ!!」
どよめきが周囲の男たちに広がる。軽く悲鳴を上げているようにも感じるけど、冷静でいてくれ。頼む。
「とどまってくれ。とどまってくれたら……殺さずに済む! 動くな、全員! そんなことをされたら……、本来私はお前ら全員この場で皆殺しにして狼煙を上げるのが最も正しい行いになっていしまっているんだ! やめてくれ、頼む!」
どよめきが静まり、だれも動かなくなったのを見て、僕は口を開く。
「いいな。動くな、……今」
魔術によって決まった緊急信号を送り続ける狼煙を出す火種を放って、兵士を呼ぶ。彼らには往復させてもうが、仕方がないだろう。
「代表者は誰だ」
「……私だ」
その男の周囲がどよめく。男の顔に見覚えがあった。だから、どよめきの理由も理解できた。
「エドワード・キッカー!? くそったれ、こんな真似……いや、本物じゃないよな?」
「本物だよ」
「なんでアンタほどのやつがこんな、こんな無差別殺人をしようとした」
「……列車を横転させようとしたのは、兵士が街に集団で来るって聞いたから、時間稼ぎを、足止めをしようと」
「そのためにお前の名声で市民を動かしてか? ……不殺主義の義賊が聞いて呆れた。自分の手を汚さず市民の手を汚させる卑怯者が、その大衆のヒーローの真実だったってわけかよ……!」
「貴様っキッカーファミリーを馬鹿にするか!」
「やめろ!」
「あぁ、するさ。虐殺を肯定する者を私は市民としては扱わない。聖騎士は市民を守るための仕事だ。君たちが浅慮であっただけなら、市民として扱いたいし、皆殺しにしたくない」
彼の取り巻きの男たちに俺の憎悪の言葉を投げて、僕の怒りを知って欲しいのに返ってくるのは反抗的な視線だけだ。
「聖騎士、そうか。クロヴィス・カンビオンか……」
「あぁ、そうだ」
「噂は聞いているよ。俺が捕まったら、関わった住人は見逃してくれるのか?」
「無理だ、この場でアンタら全員を殺す気はない。だが、そうしたい。なのに、事態がデカすぎで逃げたらここにいる全員が抹殺対象になることを留意してくれ、キッカーファミリーだけじゃない。悪党に踊らされたせいで罪を背負った市民と言えど、市民は市民だ。問答無用で殺すつもりはない。だが、関わった犯罪が虐殺である以上、君たちは力を振るった責任をとってもらわければならないんだ」
「路線剥がしたくらいで」
「剥がしたときに横転が目的の時点で死刑なんだよ……! もう本当はお前らは市民じゃないんだ……」
誰がこぼした一言に反応してしまう。自分の若さが恨めしい。
「例えばそのまだ並べているだけの爆弾、いまから埋めて証拠隠滅しようって言うなら、この場の全員、殺す。私の正義は無辜の市民の無差別な殺戮を許さない。君たちが虐殺者でないというのなら、逃げないでくれ。頼む」
未遂なら、重罪でも虐殺はしていないのだから市民であるという言い訳もつく。だから、
「おい、そこの傭兵、動くな」
男たちの声かけだった。エドワードの取り巻きが慌ててその男に
「動くなって」
「お前は傭兵の――」
声を掛けられた男の体の一部が見えても、顔が今に至るまで見える位置にならなかった。その手のひらがエドワード・キッカーの方に置かれた瞬間、魔術が使用された。予備動作のほとんどないなのに、高燃費で複雑な魔術を一瞬で組み上げたのだ。
「貴様はッ!?」
その魔術の魔力因子が配置された構成式を見て、瞬きして開くより短い、いや、瞬きが始まって一瞬目を瞑るに至るまでの一瞬よりも短い瞬きと瞬きの間の刹那の間、驚きが判断を鈍らせた。
もうその魔術は防げない、距離はある。突っ込めば確実に発動者を殺せる間合いにいるが、僕は斜め後ろに駆け出していた。
「うっあ」
エドワードの魔力が全て炎の魔力属性因子に変換され、生物的な機能をその体から失わさせる。
「みんな伏せろ! そいつは」
カヴァデイル、僕の両親を殺した爆弾魔だ!
――――――――――――音が聞こえなかった。視界が真っ白になるほどの強い光だけが、感覚の全てを多く隠して、その熱さから胸に抱えた勇者が死なないことを祈るしかできなかった。
大爆発が起きたのだ。背中が空気に触れるだけで突き刺されるように痛い。爆発が終わって、胸の中の勇者が意識を失っているが呼吸があることを確認して、大地に下ろすと奴の姿を探さねばならなかった。
だが、混乱に乗じて坑夫どもが逃げ出した俺が見を起こしたのを見て、悲鳴を上げて逃げる脚を速める。
どうする? 僕は、逃げるようならこいつらを殺さなくてならないのだぞ?
こいつらは……僕が守るべき、市民じゃないんぞ!?
いまなら、間に合う。逃げ出した全員を魔力でできたタングステン製の金属の杭を発射することで全員の頭を潰すことも胸を貫くことも、だが、皆殺しにしていいのか? こいつらは、本当に加害者なのか? その判断をするためにも捕まえるべきじゃないのか? 聖騎士として俺はこいつらを皆殺しにしなければならないんだぞ!? それが、力なき人々を守るための正義なんだぞ! 殺さなきゃ、殺さなきゃ、ダメなのに! 俺の中の正義は殺せと叫ぶ。俺の中の復讐心は無視して、カヴァデイルを探せと叫ぶ! もう遅い! 見失った! なら、殺せ!
「逃げないでくれ」
両手の指を正面に突き出して、対象の全員を確実に殺せる狙いをつけられたのに、僕は……




