85:橋爪の告白
私たちムーンライトスターは結成から40周年を迎えました。……ありがとうございます。しかし、この40年のうち、大半の時間は空白で埋められています。昔から私たちを応援してくれている方々はわかっていると思います。メンバーが足りないことに。
そして、最近、知ってくれた方たちも不思議に思っていると思います。こんなおばあちゃんグループと若いグループが一緒に活動しているのか。
これは、話が35年前までさかのぼります。
35年前。私たちムーンライトスターは、新しいスタイルでのパフォーマンスに大きな評価をいただき、人気絶頂期でした。当時のいろんなテレビ番組や雑誌の取材に呼んでいただき、多忙な時間を過ごしていました。しかし、それは、長く続かず、私たちは、皆様に何も言わず、表舞台から姿を消しました。
……理由は、当時のリーダーだった大島直樹の突然死でした。
おそらくの推測でしかありませんが、多忙の時間を過ごしていた私たちの疲労が限界だったのでしょう。いつも元気だったリーダーが、突然この世を去りました。
受け入れられない私たちは、大島の死を受け入れられず、表舞台でパフォーマンスを披露できる精神状態ではありませんでした。ですので、大島の死後、表舞台から一時的に姿を隠し、パフォーマンスできる状態に戻れば、復帰しようと計画していました。
そして、表舞台から姿を消しきるまでの間、当時最年少だった梅田千佳が、リーダーの代わりにグループを引っ張ろうとしましたが、その努力もむなしく、残された当時の私たちは、何もすることができなくなり、静かに活動を終えるという決断をしたのです。
皆様に何もお伝えしなかったのは、できなかったのではなく、意図的にしなかったのです。
グループの活動休止を発表してしまえば、今まで築き上げてきたものを失ってしまう。私たちが活動したという過去を忘れ去られてしまう。そういう懸念があったからです。
もちろん、こう決断することはずるいということ、十二分に理解しております。しかし、当時の私たちは、未熟ながらも、手に入れた名声だけは手放したくない。そういった思いが先走ってしまい、当時の決断をしてしまいました。
当時の私たちが未熟で、皆様に不安や心配をかけてしまったこと、この場を借りて謝罪させてください。
大変、申し訳ございませんでした。
静かにすべてを終わらせた私たちですが、ずっと心の中に、いつか言わなきゃいけないというのが、私も、隣にいる林も引っかかっていました。
いつかいわなきゃいけないという思いは、年を重ねるごとに強くなり、メンバーを集めて皆様にお伝えすることを二年前に決心し、連絡も取らなくなったメンバー集めに奔走しました。しかし、思いもよらぬ事実を私は突きつけられました。
……先に宣告させていただきます。これ以降、私と林以外のムーンライトスターのオリジナルメンバーは出演いたしません。これからも、私や林が死んだとしても、ムーンライトスターが解散したとしても……。
先にお伝えした大島直樹の死をはじめ、同じムーンライトスターの斉藤昭雄、梅田千佳、宇田千晃の四名は亡くなり、故人になられていたことが判明いたしました。
それでも、復活させたい私は、何とか、存命する林美沙子を復活に誘い、二人で相談しました。
私たち2人では、今までの曲を披露することはおろか、満足していただくパフォーマンスをすることは不可能。ならば、あっと驚かすことのできるパフォーマーを迎え入れて一緒にパフォーマンスをしてもらえないか。と考え、サンシャインの皆さんにご協力をお願いしました。
あっ、そういえば、サンシャインの皆さんのご紹介がまだでしたね。先にご紹介しておきましょうか。メインステージにご注目ください。サンシャインの皆さんです!
うわっ、このタイミングで紹介を組み込んでくるか。予想していなかったから、なんにも準備していないって。
そんなことを思いながら、あわててイヤモニターとマイクを装着しながらメインステージには最後に出る。
「皆さんから見て右から、武村修さん、羽田祐太さん、益田由香里さん、香川奈緒美さんの四名です。私たちムーンライトスターを最後までサポートしていただきます」
そこまで言われたと同時に、手を胸の前で組み、膝を軽く折り、簡単に歓声に応える。
「サンシャインの皆さん、ありがとうございます」
またここから橋爪さんの話が始まると同時に、スポットライトで照らされていた私たちは、暗闇の中をステージ袖に戻る。
さて、お話が長くなりすぎましたね。昔のムーンライトスターの姿は、皆様にお見せすることはできませんが、故人の想いを背負い、新たにムーンライトスターは歩みを続けてまいります。
どうぞ、皆様の暖かいご声援をよろしくお願いいたします。
それでは、曲のほうに参りましょうか。
続いての曲は、私が故人四人を思って書き下ろした曲です。皆さんも大事にしていた人、大切にしていた人を想い聞いていただけたら幸いです。
最後に私から思いを伝えさせてください。
リーダー、昭雄さん、千佳、千晃。35年ぶりにムーンライトスターは復活したよ。だけど、やっぱり周りに美沙子だけだとやっぱり寂しい。みんなにいてほしかった。
年老いたとしても、いつまでもわいわいと、若いころを忘れずに楽しいままでいたかった。
だけど、今となっては、そのことは叶わない。叶わないからこそ、今の私の思いを届けたい。どうか近くにいるなら聞いてください。いないメンバーが、もしいるなら、すぐに連れてきてください。
ムーンライトスターが復活したよ!と大きな声で叫んで。
〈あなた〉




