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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
2年目
72/558

70:指名依頼

 舞台の稽古とミアシスの活動をなんとか両立しながら毎日を過ごしている中、今月もワンマンライブの準備を進めている。

 その中で、8月上旬。いつものようにメールの処理をしていると、またとんでもないお仕事のメールが入っていた。


「た、田村さん。この依頼、どうします……?」


 いつもならズバズバと物事を決めて、仕事の依頼を受けるか受けないかを決めるけど、今回に限っては、田村さんの判断を仰がないと決められないほどだった。

 とりあえず、メールをオリエンタルライムのメールボックスから田村さん個人のメールに転送する。

 別にそんなことをする必要はない。田村さんのパソコンからもオリエンタルライムのメールボックスは見ることができるし、わざわざ送らなくても、パソコンの画面を見せれば、それでオッケー。だけど、証拠としておいておきたかったという本音もある。


「……。なるほどなぁ。確かに美桜一人じゃ混乱するわな。まぁ、ええんちゃうか?ええ機会になると俺は思うで。それに、来年が勝負の年になると俺はにらんでるし、先にチャンスもらえるんやったら、万々歳ちゃう?」

「チャンス、ですか……」

「あぁ。もしかしたら言うたことなかったかもしれんけど、ミアシスもハイアスも構想段階から5年計画っていうのを考えとってん。1年目から3年目は大まかにいうと、布石づくり。4年目は、羽ばたく時期。5年目に大規模ライブっていう風にな。もちろん、計画やから、早くなる・遅くなるは全然あると思ってるし、何が起こるかわからんし。それに、ミアシスに関しては、最初からド肝抜かれたし、計画もだいぶ尚早で進んでいってるし。俺は、このタイミングで勝負を仕掛けてもええと思う。もし、しくじったとしても、俺のせいやしな」


 田村さんはそう言い切った。

 いつもと違って、オファーの内容が内容だからだろう。

 いつもの仕事のオファーは田村さんが頭を下げて依頼しているのは知っている。依頼した内容は、私たちマネージャー陣にも知らされる。

 もちろん、向こうの意向で、ライブに出てほしいとかの出演依頼は私たちの意向に関係なく、オファーが届くから、その時は、私たちの采配だけど、大きな依頼のときは田村さんに決めてもらう。


 そして、今回、田村さんに決断を投げかけた理由は、後者の、田村さんが依頼していないオファーだったから。さらに、内容としては、日本水泳協会から来年度以降の公式ソングを歌ってほしいというもの。

 めったにないとんでもないオファーに私は目を疑ったわけ。で、思わず、田村さんに判断を仰いだ。というような形かな。

 その田村さんが、危険察知で行こうかなんて言ったら、そりゃ、もう、行くしかない。とりあえず、この件の窓口は田村さんに任せよう。話は田村さんにまとめてもらった後だな。


 それだけ思うと、田村さんに「あとはお願いします」とだけ言って頭を下げて、自分のデスクに戻り、そのまま仕事を続ける。


「あっ、せや。美桜。来月に東京でムーンライトスターさん名義でレトロフェスに出るやろ?ちょうど夏休みやから、ついでにミアシスとハイアスを連れて東京遠征もありかなって思ってるんやけど、どうやろうか?」


 東京遠征か。ありっていえばありかな。どれだけの利益があるかわからないけど、注目を集めるなら、学生メンバーが長期休暇中じゃないと、チャンスは少ない。


「いいと思います。やりましょう。久しぶりの東京で、メンバーも来てくれる観客さんも喜んでくれると思います」


 私の言葉に嘘はない。というのも、ちょこちょこSNSには関東でライブを、というよりも、マジックライブをしてほしいというようなメッセージが送られてくる。

 まぁ、やりたいのはやまやまだけど、メンバーの学問優先というのもあり、活動は関西がメインになっているのが現状。そこはしかたないとするなら、やっぱり、ここは関東で活動したいよね。


「よし。ほんなら、それでスケジュールを組んでみるか。ライブは3日くらい組んでもええか?」

「結構行きますね。でも、みんなのうっぷん晴らしにはちょうどいいかもしれないですよ。ハイアスちゃんたちだって、ライブが少なくて少しうっぷんがたまって、振り合わせも少し上げすぎているところがあるって聞いてますし」

「見てるとな。やから、夏休みに入ったら、少しライブを増やしたろうかなとは思ってるけど、やっぱり受験生が3人もおるから、夏休みが過ぎたら、受験勉強にステータスを振らなあかんとは思ってるけどな」


 それは間違いないかな。ここで高校受験に転ぶと、取り返しのつかないことになるかもしれない。というのは由佳も一緒か。そういえば、あの子、高校はどこに行くつもりなんだろうか。……今日、振り合わせするときに聞いてみるか


「おっ、メールが返ってきたで。……マジか。これはもう、ラッキーとしか言いようがないな」

「なにかあったんですか?」


 田村さんはいつになくニヤニヤした表情を浮かべている。何かいいことがあったのか?


「あっ、悪い。いや、さっき、協会の担当者さんからメールが返ってきたんよ。ついでに、林エンターテイメントさんのときと同じように、なんでうちにオファーをくれたんか聞いたんよ。ほんなら、美桜と沙良が競泳やっとたやろ?それなら、スイマーの気持ちもちゃんと伝えてくれるやろうってことらしいわ」


 そう言われて、頭が少しフリーズする。もちろん、私も沙良も競泳をしていた。ただ、2人とも、強豪校にいたわけじゃない。地区大会を突破できるかできないかくらいのレベル。


「なんでそれを向こうが知っているんですか?」

「まぁ、大きくは美桜やろうな。SNSで競泳関係のこと、めっちゃつぶやいてるやろ?たまたま目に入ったらしいわ。っていうか、水泳愛が強すぎやねん。たまに水球とかアーティスティックスイミングのこととかつぶやいてるやろ?こっちが引くわ。まぁ、それもあって縁がつながったっちゅうわけや。まぁ、そこは美桜に感謝やわ」


 そ、そういうことだったんだ。でも、こうやってオファーにつながったなら、よしとするか。ちょっと私でも引くところはあるけど……。

「とりあえず、ミアシスは振り合わせ前にいつものスタジオに集合、簡単に話するから、全員揃ったら内線電話で電話してな」

「わかりました」

「ほんであとは……」


 仕事が決まれば、田村さんはここから忙しくする。つられて、私もいろいろと重なっている仕事を一つずつ片付けていく。

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