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55:コラボライブ

  季節外れの解けることのない雪が降り始め

  冷たい風がこの身をさらう



 短いメロディーのあと、変わるように亜稀鑼が歌い、サビ最後のワンフレーズを合わせる。


『ウィンター・ドリーム』


 しっとりした感じがものすごく強いこの曲は、男女でのデュエットが一番響くと思っている。

 あと、この曲には、私と亜稀鑼のパートを入れ替えたバージョンもあって、双方がどちらでも歌えるというミアシスの中では初めての曲になっていたりする。

 これだけでバリエーションが増えるのはありがたい。なんなら、冬限定にはなるけど、ソロで歌うこともできるから、なおさらだ。

 そんな曲も、切ない夢を見るようなイメージで進んでいき、曲の終わりは『ウィンター・ドリーム』と締める。

 私のハスキーボイスと、亜稀鑼の声変わりしきらない少し高い声が絶妙にマッチして切なさをさらに演出させ、場内はしっとりとした雰囲気に包まれる。


「はい。ということで、ライブでは初披露の曲、〈ウィンター・ドリーム〉でした。ちょっとね、ダンスパフォーマンスのあとに持ってきてしまった分、場内、私たちミアシス、そして、袖で待機している2組もだいぶ、しっとりしておりますが、皆さん、起きてますか?」

「ミアシスとしては、初めてのバラードっぽい曲になったんかな。正直言うて、由佳がボーカルじゃなくてよかったなって感じやわ」


 亜稀鑼がそういうと、場内は少し笑いに包まれる。それを見た由佳がちょっとふくれっ面に。


「ちょっと待って、みんな酷ない?なんで由佳のことみんな笑うん?由佳だってちゃんと歌えるし」


 いやいや、そうは言うものの、合う・合わないがあるのよ。だから、この曲を由佳が歌うと、違和感があるというか……。

 由佳が歌っている姿を想像するだけで、ちょっと私も笑いがこみあげてくる。


「まぁ、その話は置いといて。それじゃあ、ほかの2組に比べてちょっと曲数は少なくなっちゃうんですけど、次が単独最後の曲です。ねぇ、なぜあなたは舞うの?教えて、〈アオスジアゲハ〉」


 最後はやっぱり〈ドリームダンス〉を持って来たかったけど、マジックライブの締めくくりに使いたいということで、マジックライブの大トリに持ってきている。

 その次に、〈仮面舞踏会〉という選択肢もあったけど、これもコラボ曲でよく使う曲であり、今回も、ハイアスちゃん、茶々パレードさんとのコラボ曲としておいているため、これもミアシスのトリで使うことはできず、それなら、もう一曲、魅惑の世界を見せる曲がこの〈アオスジアゲハ〉というわけ。

 こうやって、あぁじゃない。こうじゃないって言いながらセトリを組んで、その通り行くと、やっぱり達成感がある。今回は違った達成感があるけど。



  衣を脱いだアオスジアゲハ ひらひらと羽ばたいていく

  明け方の空に向かって 未来に向かって羽ばたいていく


  淡い光を浴びて キラキラ輝く


  光を浴びて輝くアゲハ きれいな筋が今黄金に代わっていく

  だれにもまねはできない特別な その蝶が持つ特別な力



 ここまでくると、ステージ上は、田村さんの演出によって、明るいオレンジ色に染められる。

 こういう演出をするのは本当にうまいんだなぁと感じつつ、最後を切なく歌い上げて、ミアシスのステージは終わる。


 ふぅ。何とかって感じか。ただ、ここからインターバルを数分だけとって、そこから私はほとんど出ずっぱり。頑張らないと。


「それでは、単独のライブはここで終了となります。ここからは皆さんお楽しみのコラボステージに参ります!最後までどうぞごゆっくりとお楽しみください。それでは最後に、以上!」

『ミアシスでした!』

「ありがとうございました!」


 最後にそれぞれが叫んで、私たち単独のステージは終了。ここから数分のインターバルのあと、私たちが行ける状態になれば、田村さんに無線機を通じて、オッケーの旨を伝え、茶々パレード&ミアシスのパフォーマンスが始まっていく。


 少しばかりの休憩をした後、私は、上手袖にも置いてある無線機の音量を上げて、田村さんを呼び出し、リスタートできる旨を伝えた。


 すると、私たちのトークのときから小さい音量で流していたBGMが少しずつ大きくなってきて、サビかな?というところでぷつんと切れ、そのすぐ後に、茶々パレードさんの〈ダンス・フロア〉が流れ始める。

 これは、私たちもリハーサルしていた通りで、この前奏の間に、シュウカさん、コズエさん、私、沙良の4人がステージイン。

 そして、そのまま不思議な国のアリスをイメージしたような歌詞が並び、サビに入ると、雰囲気ががらりと変わり、現代のライブハウスにいるような雰囲気の歌詞と曲調に変わる。

 でも、あくまでも、主人公はアリスのまま。中世から現代に迷い込んだようなこの歌詞が私の好きなところでもある。

 もちろん、茶々パレードさんの曲なんだけど、コラボということで私も歌わせてもらっている。


 曲は、現代から引き戻されるように、中世の舞踏会会場にシーンを移し、歌詞の中でウサギがアリスに対して怒るシーンも入っている。

 物語と曲が同時に進んでいくのも面白いなと思うよね。


  わたしはただあなたを追いかけてきただけなのに

  名前も間違えられるし あなたこそいったい何者なの?

  まずなんで私がダンスパーティに出なきゃいけないの


 ほとんどデュエットだったなかで、唯一のソロパート。というより、セリフパートをもらったというような感じかな。普段なら、ここを2人のどちらかが言うセリフらしいんだけど、今回はということで、なぜかここだけもらった。

 だけど、今の2人を見る限り、ちょっとアリスの中に出てくるウサギみたいになっているみたいで、その姿も楽しそうだし、よしとするか。

 もともと、マジックライブのコンセプトは、演者も観客もみんなあっと驚き楽しんでもらう。っていうのがひとつにあるしね。


 さて、この曲もラストサビに入るね。最後まで楽しんでいこうか。



  そっと手を重ね踊りだす

  初めてのはずなのに

  足が嘘みたいに進んでいく

  何の魔法なのいったい誰の仕業


  王子の目はすごくにこやかで

  本当に私のことを結ばれ志

  人と思っているみたい

  私そんな器じゃないのに

  早く気づいて


 最後にみんなで振り付けをこなし、シュウカさんのコーラスが入ればこの曲も終わり。

 コラボが決まったときから練習をしていたものの、ちょっとミスった部分もあったりして、ちょっと悔いが残るかな。でも、気持ちよかった。私個人としては満足かな。


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