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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
1年目
50/558

48:マジックライブの朝

 夜が明けて、ベランダに出る。

 すんだ青空に身を刺すような空気の冷たさ。なんとも気持ちがいい。

 そんなことを思いながら部屋に戻り、簡単な朝ごはんの準備をする。

 久々のマジックライブにテンションが上がりはじめているけど、なんだろう、妙に興奮しているな。

 この興奮が変なミスを犯さなければいいんだけど。

 そう考えたところで、少し冷静になれたものの、グリルで焼いていたパンの表面を少し焦がしてしまった。

 今日は少し気を付けないといけないかもな。なんて思いながら、焦げたところをごまかすようにスクランブルエッグをのせる。


「いただきます」


 静かに言ってさっと食べ、寒空の下自転車でマジックホールまで走る。


「おはようございま~す」


 誰もいるわけがないマジックホールに入った後、2階部分にある事務所に足を向ける。


 案の定、誰もおらずの状態だけど、それもそのはず。

 だって、まだ朝の7時半だもん。さすがの田村さんすらいない。

 田村さんがいない分、できることはさすがに限られるけど、それでも、ライブまでにできることを終わらせようとする。

 まぁ、やることといえば、もうほとんどないんだけどね。

 とりあえず、今日のライブで販売するグッズを3階から1階に降ろしていくか。

 そう思うと、ミアシスのグッズをどんどんと降ろしていって、ついでにハイアスちゃんのグッズも降ろしていく。

 もう何度往復したのかわからないくらいだけど、8時過ぎに田村さんが、8時半くらいに小村さんが事務所に来ていた。


 私がグッズを降ろし終えて、事務所に行くと、田村さんも小村さんもせっせと今日のライブの準備をしていた。


「美桜、お前、いつからグッズをライブ会場に持っていっていたんだよ」

「えっと、7時半くらいからですかね。なんとなく、昼から忙しくなりそうだったんで、先にやっちゃおうと思って」

「お前なぁ。早すぎるやろ。まだ10時にもなってへんで。しかも、裏方やなくてパフォーマーやろ?どこからそんな元気があんねん」


 そういわれてもなぁ。ストレスの素がなくなってから元気になった気がする。

 田村さんには苦笑いをしながら「どこからですかね」なんて言ってごまかして、ミアシスのパソコンを起動させ、メールを確認する。

 まぁ、仕事のオファーなら事務所名義のパソコンに届き、それを田村さんが確認し、オファーを承諾したらミアシスやハイアスにSMSで知らされる。

 だから、あまり使うことはないんだけど、パソコンの中に、私のフォルダを作っていて、そこでマジックライブ前にやることを全部書いてあるデータがある。それを印刷して、地下にあるスタジオに潜る。

 ここからはいつも通りというような感じで、スタジオでストレッチをはじめ、30分ほどストレッチをした後に、苦手な『フライ・トゥ・ブルーバード』を通しで確認していく。


 いつも思うけど、やっぱり、サビが苦手よね。

 ボーカルでのブレスの少なさと振り付けの派手さで、いつも息が続かないのよね。

 さすがにそろそろ慣れてきたいところではあるけど、まだもうちょっとスタミナをつけないといけないといけないな。なんて思いながら、歌いながら振り付けを全力で踊っていく。

 正直なことを言えば、何回も連続で『フラトゥ』を歌いながら踊れば、嫌でもスタミナも肺活量も鍛えられるだろうということで、誰もいないときはこうやって歌いながら踊り続けている。


 最後の振り合わせは昼からの予定で、メンバーたちもそろそろ集まってくる頃かな。なんて思いながらも、一人で歌い、踊っていく。


「おう、今日もやってんな。ほんま、相変わらず『フラトゥ』ばっかりやな」

「一番苦手だからね。それに、いつかは、振り付けありでサビも歌いたいし。今はそれが目標ってところはあるし」


 ここ最近は、お客さんにパフォーマンスの満足感を与えるために、『フラトゥ』のサビは、振り付けをダンサーしかせず、ボーカル陣は声量を意識して、声を響かせるほうに徹している。

 さすがに、セットリストの最後に持ってくるなら、最後の力を振り絞って振り付けをこなしながら歌ったりするけど、今回は難しいかな。


「確かに、ボーカルもそれができるようになったら、ミアシスとしてもパフォーマンス能力は上がるよな。沙良もボーカルに挑戦しているわけやし、ミアシスとしても、ちょっとずつでも変わっていきたいよな」


 翔稀が言うことにも一理ある。同じことをして飽きられるより、常に変わり続けて、楽しいグループと思われる方がいいに決まっている。


「とりあえず、俺も身体動かしていくか」


 翔稀がそう言うなら、私は少し場所をずらして、翔稀が大きく踊れるようにサポートするか。


「別にそんなことせんでいいのに」


 私が場所を移して踊り始めた姿を見て翔稀がそんなことを言ってくるけど、正直、ミアシスを見てくれる理由としたら、ダンサーのパフォーマンスが大多数だと思っているくらいだし。

 まぁ、多少は私たちの歌声も届いているとは思うけど、それはほんのわずかだと思っているくらい。だから、さすがにこのスタジオを私がいいところで踊るわけにはいかない。それも、自主練という形ならなおさらに。


「ミアシスはダンサーのグループだしね。翔稀たちに光ってもらわないと。そのためになら、私は何でもするよ」

「アホなこと言うなよ。ボーカルのおかげでもあるんやから。それに、ボーカルも振り付けを完ぺきにしてくれたらそれでさらに輝けるやろ」


 翔稀の言うことももっともだけど、やっぱり、声より、ダンスパフォーマンスのほうがぐっと引き付けられる気がする。

 正直、ダンサーの力がないと、ここまで来ることは難しかっただろう。だから、私はダンサーに感謝している。


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