44:美桜さん、倒れる
教室を出ると、やじ馬が群がっていた。
それを中元先生がどかして先に進んでいく。
そして、そのまま生徒指導室に入り、2つに分かれ、話を聞かれた。
っていっても、私が挑発したから始まったことだから、私も悪いことは十分にわかってる。そのことも伝えて指示を待った。
1時間目の授業はとっくに始まってる。ただ、問題はだいぶ深刻で簡単に帰してくれない。
ゆっくり5人で話し合いたいところだけど、まだ向こうの事情聴取は終わってないらしく、話し合いができるどころじゃない。
まぁ、誰かがスマホで電話してたのも見えてたし、警察はどうしても来ると思うけど。
そのときに、あれが名誉棄損になるのかどうか聞いてみよう。あまり大ごとにはしたくないけど。
そこから警察も合流してどうするのか話し合い。
ただ、一歩間違えれば危険も伴ったため、一応いったん話を聞くそう。もちろん、私も一緒に。
いったん教室に戻って、さっきのカッターナイフが刺さったお弁当箱を持ち出して、警察の人に見てもらった。
私もバッグの中を見てびっくりしたけど、相当深く入っていた。
とりあえずあまりにも深く、一歩間違えていれば死んでいた可能性もあったことから、殺人未遂で桧山は警察に連れていかれた。
で、後日談なんだけど、桧山は、中学生の時に非行ばかりしていて、警察にも度々お世話になっていたらしい。しかも、刑務所にも入っていたという話も聞いた。
よくこんな奴がこの学校に入れたな。それほど、この学校はレベルが低いの?
なんで、こんなところに入ろうって思っちゃったんだろう?
ただ、これで問題は一段落かな。クラスの雰囲気に戻れる気はしないけど。
はぁ。とりあえずこれでよかったのかな。よかったんだと思う。ただ、ここまで行くとは思わなかったな。いろいろと積み重なりすぎた。
いろいろホッとしたのか、私の近くにいた人たちが倒れていって、天井が見えた気がした。
……。ここは、どこ?
映るは真っ白の何か。そして、嗅いだことのあるにおい。どこだっけ?思い出せない。
「あら?気がついた?」
寝返りを打つときにごそごそという音が鳴り、女性の声がどこから聞こえてくる。誰だっけ?この声。あんまり聞いた覚えがないんだけど、しっかり耳に残る優しい声。
誰か必死に思い出していると、シャーっとカーテンが明けられ、小さな顔がカーテンの間から覗いた。
思い出した。保健室の先生だ。いつも始終業式のときにちょっとだけ喋る人だ。
全くお世話にならないからあんまり覚えてなかったけど。
……ってことは、ここは保健室?でも、なんで私、こんなところにいるんだろう?
「それにしても、びっくりしたわ。あれだけ元気な中川さんが卒倒なんて」
私が卒倒?あんまり実感が無い。何があったのか自分でもわからない。
「私、倒れたんですか?」
「そうよ。生徒指導室で警察の人たちが出た後に。なんか緊張してたりとか、ストレスが溜まってたりとかしてた?」
「緊張はなかったと思います。ストレスはほぼ毎日ですけど」
「まぁ、言い方からして元気そうで何よりね。問題なさそうだけど、今日から1週間は安静にすること。保護者の人には言ってあるから」
安静か。それだとボイストレーニングとか曲の振り合わせとかあまり出られなくなっちゃう。
たぶん、忠告を無視すると思う。そんなことしてメンバーに迷惑をかけるわけにはいかない。
今はちょっと無茶をしないといけない時期だし。
そんな時期は、考えればオフ以外だけど。
「アイドル活動で頑張ってるのはいいけど、自分の体が一番大事なの、わかってるよね?」
「わかってます。でも、自分が引っ張っていかないといけないのも事実ですんで」
まぁ、気分転換すれば大丈夫だと思うけど。
とりあえず、振り合わせとか、ボイストレーニングは2週間無いから、気分転換には十分な期間。
久しぶりに泳いで気分でも買えよう。
それにしても、今、何時間目なんだろう?そんなに長く倒れてなかったと思うんだけど……。
その時、ちょうどチャイムが鳴った。
「これからお昼ね。ご飯はどうするの?」
あっ、そっか。お弁当、持っていかれちゃったんだよね。
「食堂行きます。それしかないですし」
ってことで、一人で学食に。シンプルに素うどんにして空いてる席に座った。
お昼からは授業に復帰して、2時間だけ授業を受けた。
もちろん、すぐ?に戻ってきた私を見て、クラスメイトはみんな静まり返っていた上に、先生も少しやりにくそうだった。
放課後は、他のメンバーが試験前で休みだということもあって、ほんとなら昨日から一緒にお休み。一回家に帰って、用具を持ってプールで泳いだ。
それでも、全く泳げなくなっていた自分にびっくりした。3時間泳いだけど、びっくりするくらい泳力も落ちてるし、スピードにも全く乗らない。かなり落胆して、プールから上がった。




