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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
1年目
44/558

42:美桜さん、孤立する

 そして、月末のライブが過ぎていって、明けた月の初め。

 ライブが始まるまで休んでいて、復調してから初めて学校に来た私は教室に着いて愕然とした。

 机の上に、何本の線を合わせたみたいに『死んだらいいのに』と殴り書きされた紙が貼られていた。

 教室を睨みつけるように見渡すと張り詰めた空気が流れた。


「なんだ面白くないな。やるんだったら直接机に彫刻刀で刻み込んだらよかったのに。案外小心者ね。相手にしてる方がバカらしいや」


 私がワザとっぽく言うとさらに教室の空気はドライアイスを入れたみたいに冷えて固まった。


「ねぇ、福島、事情知ってるんでしょ?話しなさいよ」


 そういうと彼の体がビクンと跳ねた。そして、彼の席まで歩いて行って、バンと机を思いっきり叩いた。


「……ない」


 なにかぼそっと言ったけど、なんて言ったのか全く聞き取れない。


「なんていったの?全く聞こえないんだけど」

「何も知らない。あいつらとは縁切ったから」


 あまりにもおどおどしすぎて、事情を知ってるんじゃないかと錯覚される態度。でも、本当に知らないと思うし、これ以上行けば、私がいじめてるように見えるからやめておこう。


「中川、お前、いつまで教室の空気汚す気なん?頭おかしいんとちゃう?」


 横に来た男子が口を挟む。


「さぁ?知らない。この問題が終わるまでじゃない?まぁ、終わってからもこのクラスの空気は悪いままじゃない?」

「やからと言ってさらに悪くするか?」

「じゃあさ、好きでもない人から告白されて、振ったら真逆のことを噂にされて、そのまま高校卒業まで何もしないで振り回されることに耐えられるの?それも、いらないおまけもついてきて。もとはと言えば、福島が悪いんでしょ?しょうもないプライドか知らないけど、自分の首を絞めてバカみたい」


 それだけ吐き出すと自分の席に戻って紙を丁寧にはがした。

 丁寧にはがした紙を四つ折りにするとちょうどチャイムが鳴った。

 チャイムが鳴ると、それぞれが我に返ったようにあわただしく動き出す。

 最初は個性の強いクラスでどうしようかって考えていたけど、今になるとたいしたことはない。逆に個性が死んでる。


 最初は生き生きしたクラスだったけど、今は面白いくらいに教室の空気は最悪。このままこのクラスはどうなるんだろう?逆に楽しみなところがある。


「はーいって、なんなん?珍しくみんな座ってるし。とりあえず、ホームルームすんで……」


 ペラペラとお喋っていく明川先生。もちろん、話なんて何も聞いていない。


「ほんでから、中川さん、あとで私についてきてな。ほんなら今日も一日頑張ってください。解散!」


 最後の一言を言って私を見る。まるで「逃げないでね」と言っているみたい。

 私は担任を睨みつけるように目を合わすと私はため息をついた。

 教室を出ると、そのまま応接室に連れていかれた。

「ねぇ、少し聞きたいんだけど、クラスでうまいこといってる?」

「それがどうかしたんですか?」

「風のうわさであなたが福島くんをいじめてるって話が舞い込んできたから」


 やっぱり、先生のところにも行ってるか。そりゃそうだよね。クラスのことは担任の責任になるんだから。


「さぁ?何のことかわかりません。でも、最近うまく行ってないのは事実かもしれませんね。彼が告白してきて断った翌日から教室の雰囲気は一変したと思いますけど、まぁ、私は何も知らないんで、彼に聞いてください。失礼します」

「あっ、ちょっと、話はまだ……」


 話しを振り切って応接室から出て、木製の引き戸を力任せにドアを閉めた。

 バン!と派手な音が廊下に響き渡る。その瞬間、ものすごく泣きたくなった。

 こういうのを情緒不安定って言うんだろうな。


 そこから気分が上がることなく授業を受けて、放課後も決まったように次の曲の振り合わせをしに事務所に。


 だけど、私は忘れていた。今週から私以外のメンバーがテスト一週間前になっていることを。

 いくら待ってもメンバーが来ないことを不思議に思ってラインを起動させたときに思い出した。


 ……まだ6時か。帰ってもやることないし、気分晴らしでどこかに出かけようかな。

 こういう気分が落ち込んでるときって海?買い物はなんだかいらないものまで買っちゃいそうだし、やけ食いしたところでさらにイライラが募りそう。

 ただ、そんなことをするよりも叫びだしたい気分。ここで叫んでもいいんだろうけど、隣でハイアスのメンバーも練習してるし、ここで叫べば田村さんも小村さんもびっくりして駆けつけてくるだろう。

 でも、これは私の問題だし、私一人で片づけたい。ほかの人は巻き込みたくない。


 そう思うと、足が自然と帰る方に向いてきた。


「田村さんも、今日はメンバーも来ないんで先に帰らせてもらいますけど、いいですか?」

「あぁ。月決算は昨日のうちに終わってるからな。全く問題ないな。うん、お疲れ。ゆっくり休みや」


 よし、田村さんが言うなら問題ない。このまま出かけてしまおう。

 お疲れさんでした。と一言かけてから事務所を出た。

 外はすっかり陽も暮れて、街灯だけが街を照らす。その中を早足に駅に向かっていく。

 一か所だけ、行きたい場所がある。


 リリースイベントで兵庫の明石にあるショッピングモールで訪れた道の途中で、車窓に海がきれいに広がっていたところがあった。

 場所もしっかりと覚えている。見えた瞬間に地図アプリで確認したし。

 あの明石海峡大橋がある舞子駅。そこから少し歩いたところにあるはず。

 詳しい場所は気分で決めるだろうけど。


「次は尼崎、尼崎です。芦屋、三ノ宮、神戸、姫路方面に参ります新快速電車は…」


 東京だと自動放送が当たり前で、こういうのを改めて聞くと温かみを感じる。で、私の乗るつもり電車は着いたホームの向かい側だって。東京ではこんなこと絶対いってくれないから自分で探さないといけなかったなぁ。とか思いながら電車を乗り換えた。

年内最後の投稿です。

ただ、もっと明るく行くつもりだったのに、とんでもなく厳つい形で締まってしまった気がします。

来年は楽しく行きたいな。

なんて思いながら、失礼致します。

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