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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
1年目
27/558

25:ライブ準備

 一通り本気でリハーサルすれば、開演準備に向けて最後の仕事。

 最後に『ミアシス通信』というA4サイズの紙に今日の見どころとか書いて、来てくれた人に渡すものの仕上げ。

 前売り分以外は用意してないけど、ミアシス通信は余分に作っておいて、それを入場時に配るだけ。メンバーとマネージャーの話し合いで開場からから15分は私服でお出迎えをしようという話になったから、そのときに一緒に配る。

 今日の大きなスケジュールは、会場の16時半から15分はお出迎え。そこから開演の17時まであわただしく着替えとセットアップ。ライブは一時間半のち特典会で22時完全終了。みたいな流れ。あっ、由佳は年齢の関係で、20時に撤退だけど。

 特典会の参加条件は、前売り券、当日券でハイタッチ、物販券1枚で私物の小物ひとつにメンバー1人の、4枚で全員のサイン。

 みたいな感じで、22時に終わるのかな?って思ってしまいそうなボリューム。

 敏腕マネージャーのことだから、何か策があるんだろうけど、今の私にはわからない。たぶん、マネージャーのこと。私たちに知らせず、直前になって初めてお客さんと一緒に知るんじゃないかと思ってる。

 そういえば、昨日、帰る前にマネージャーがパソコンでごそごそしてたな。何か一緒に印刷してたし。

 とりあえず、お腹すいたし、お昼食べて、作業の続きをしよう。あと少しなんだ。『ミアシス通信』ができるまで。


 お昼を買いに裏口へ行こうとしたとき、ステージから表口につながる通路で由佳がホワイトボードに落書きをしていた。


「由佳、何してんの?」

「あっ、美桜お姉ちゃん。いまね、ウェルカムボード作ってんの。田村さんの文字だけやったらつまらんから彩り増やそうと思って」

「由佳らしいじゃないの。かわいいし。あっ、これ、メンバーの似顔絵でしょ?」

「バレた?」

「わかるよ。亜稀羅のつり目と、沙鑼のベリーショートのヘアスタイル、翔稀のツンツン髪に由佳のロングヘア―に私のカチューシャでしょ?」

「頑張って特徴をつけてんで。最近、美桜お姉ちゃん、カチューシャずっとつけてるし」


 由佳の言う通りで、デビューシングルのリリースイベントからカチューシャを集めるのが趣味になった。

 買うのはいいんだけど、買いすぎるっていうね。似合わないのがあれば、由佳にあげたりしてるけど。


「由佳、ご飯行かなくていいの?今逃すと、今日は行けなくなっちゃうよ」

「あっ、ほんまや。美桜お姉ちゃんはどっかいくん?」

「いや、コンビニで買って、こっちで食べようかなって考えてる」

「じゃあ、由佳も行く。……なぁ、ライブで暴走したら田村さん怒るかな?」


 なんでだろう。由佳のいいことって大抵が的はずれなんだよな。

 でも、目をきらきらさせているし、とりあえず聞いてみるか。


「何を思いついたの?」

「セトリの中にお菓子をイメージした曲があるじゃん。そこでほんとに小さなお菓子投げようかなって」

「……さすがにそれには賛同できないかな。何回かやっててお決まりになるんだったらいいけど、いきなりはさすがにまずいともう。田村さんも怒りそう」

「そう?」

「セトリの時に話し合いで話しが出たなら別だけど、さすがに危ないと思う。それに、物理的に一番後ろまで届く?配るんだったら、特典会の時だと私は思うな」

「そっか。なら、今の話はなしね。なんにもなかったことにしといて」


 とびっきりの笑顔で話を無かったことにしてという由佳。別に隠さなかったところで何かあるわけじゃないから、少し放っておくか。

 由佳とコンビニでお昼を買って、ステージに座って並んで食べた。


「美桜~いてるか?」


 この声は田村さんか?


「はーい、ステージにいます~」

「おっ、そこにいたんか。なんや、由佳も一緒か。まぁいいわ。アンケートのあれ、どうするん?」


 あっ、しまった。由佳に頼むの忘れてた。


「アンケートのあれって何なん?」

「由佳、ごめん。私、由佳にお願いするの忘れてたことがあって、今日のライブのアンケートを撮ろうと思って、ミアシス通信とは別のA5くらいの紙をもう一つ作ったの。それを回収する箱のデコレーションを由佳にお願いしようと思ってて……」

「それくらい30分あったらできるよ。コピー用紙が大量に入ってる段ボールに集めるんでしょ?任せてぇや」


 お願いした瞬間、由佳の目が輝いて、残っていたおにぎりを一口で頬張った。

「ほれふらい、ふくにほわらへるひ」


 あまりにも一口が多すぎて何を言いたいのか一瞬わからなかったけど、ガッツポーズした瞬間、由佳はやる気だとわかった。


「そしたら、それはすぐに終わると思うし、美桜は通信を書き終わったら輪転が3階の倉庫にあるから、それを勝手に使ってくれたらいいから。今日は成功させてくれよ。さっき沙良におうたけど、緊張でやばいらしいな」

「沙良は大丈夫だと思いますよ。沙良はMだし」

「ライブやってる途中で緊張がなくなって、ハイテンションでやりそうやしね」

「そうか。わかった。じゃあ頼むな」

 はい!2人口をそろえて大きな声で返事をした。

「さぁ、どうしよっかな」


 聞いてて由佳の声はウキウキ。彼女の頭の中はすでにいろんな絵が浮かんでいるだろう。


「美桜お姉ちゃん、ごめんやねんけど、ここにミアシスのロゴ書いてくれへん?いまだに由佳、きれいに書かれへんねん。筆記体も書かれへんし」

「うん。わかった。真ん中でいいの?」

「うん。一面覆いつくしてくれていいから」


 実は、そんなに大きくかけないんだよなぁ。

 いつも、CDにサインするときとか、声をかけられてサインをする時くらいしかそんなことしないし、大きく書かない。

 とりあえず、紙だし、書いてみて、バランスが悪かったりしたら、消して書き直せばいいか。

 ささっと書いてみたミアシスのロゴ。見た感じ悪くない。これで行けるかな。


「さすが美桜お姉ちゃん。サイズも完璧。ありがとう。あっ、あと、色って星が黄色でハートがピンク。あとはメンバーカラーやんな?」

「うん。そうだよ。私が黄色で亜稀羅が紫。沙良が白で由佳がオレンジ、翔稀が青ね」

「わかってるって」

「とか言いながら間違えるパターンでしょ?」

「だから、ないって」

「まぁ、由佳の好きなようにしてもらったらいいんだけどね」

「ここだけは間違えたくない。間違えたらもう1枚美桜お姉ちゃんにかいてもらう」

「はいはい。私、事務室にいるから何かあったら言って」


 そう言って2階の事務所に戻った。さっきの続き、全部終わらせよう。

 8割までできた。あとをどうしようか今悩んでるんだよね。下に余白を残すとかえってバランスが悪く見える。ましてや、手書きだから、やり直すのは難しい。どうにかして書きながら間を埋めて完成させよう。

 なにを描くか迷いながら10分が過ぎ、由佳が段ボールを抱えて事務所に入ってきた。


「美桜お姉ちゃん、終わったよ~。なんとか行けた。かわいいでしょ?」


 たぶん、ポスカか濃いものを使ったな。色鉛筆より相当濃い。でも、マジックホールの出入り口に置いたら目立つか。


「ありがと、由佳。あとひとつお願いしていい?」

「なに?」

「書きたいことなくなっちゃって、困ってるの。だから、さっきのホワイトボードに書いてた似顔絵を描いてくれない?」

「えっ?あっ。わかった。任せてぇや。こんなん、5分あったら十分や」


 そういうと、ささっとメンバーの似顔絵を描く。まさかの鉛筆で輪郭を一筆書き。

 くりんくりんと顔を書けば沙良の出来上がり。そんな調子で5人をかき上げた。


「こんな感じでいい?」


 由佳にとっては最高にスペースだったみたい。


「完璧。ありがと~、由佳」


 これで出来上がりだ。あとは輪転を回して枚数を作れば終わりだ。


「ありがとう、由佳。ほんとに助かった。ここだけどうしようか迷ってたの。ほんとに絵の描ける由佳がいてよかった」

「えへへ。どういたしまして。ちょっとだけ読ませてもらっていい?」


 私が「いいよ」って言う前に現本を手に取り、眺め始めた。

 最初からこうするつもりだったなとか思いながら、由佳の反応を見てた。

 くふふ。と笑ったり、とにかくいろんな反応を示した。


「もう、さいっこう」


 読み終わってひと言発した由佳。


「ホンマにそのままやわ。美桜お姉ちゃん、ほんまのこと書きすぎやわ。ちょっと共感しちゃった」

「だって、これくらいしないと面白くないでしょ?ちょっと本音を書きすぎたところはあるけどさ。でも、こうした方がミアシスをもっと知ってもらえるし。これくらいしてもいいかなって。ちゃんと田村さんの許可はあるから大丈夫」

「そしたら、輪転ってやつにかけるだけやねんな?あとは」

「うん。それが終わったら、ちょっと休憩して、最後の飾りつけをしようか」

「オッケー。気付いたらあと3時間で本番やもんな。由佳、今からワクワクしてきたわ」


 正直に言って、私もワクワクしている。ただ、ワクワクしている反面、どんな反応が待っているか分からないから怖いところでもある。


「私も。しかも、ゲストなしの単独。ワクワクしないわけないじゃん。フリートークで暴れるかもしれないけどさ」

「美桜お姉ちゃんのフリートーク、めっちゃ怖いねんな。なんにも用意ができひんから、話を振らんといて、とか思いながら、いつも身構えてまうねんな」

「実はね。私もホントはなんにも考えてないから、話がかみ合わないときがあるの。それをちょっと楽しみにしてたりするんだよね」

「美桜お姉ちゃん、怖い。まぁ、フリートークはミアシスのスタイルで認知されつつあるから、それはそれでいいんだけどね」

「今日は、お客さんから質問をもらう形式にしようか。あまり危ない質問はカットして」

「そっちの方が怖ない?一番ええのは前もってこういう話するからって事前に聞かされるんがええねんけど」

「それは面白くないからフリートークしてるんだけどなぁ。知ってる?『ミアシスのライブに行くとずっと笑える』っていううわさ。中見てると、本音を隠せないトークで面白いだって」

「あっ、それ知ってる。誰かが言うてたわ。ほんで、メンバーの焦った顔も面白いって話やろ?」

「それ、見てて思う。特に亜稀羅。いつも当てるのに、安心しきってるから、いきなり当てられてびっくりした時の顔は最高よね」

「由佳もそれ見てて思う。たまにはさっとかっこよく決めて見せてよとか思っちゃう。声もかっこいいんだから」

「まぁ、そこはミアシスのいいところなんだし、置いとこうよ。さっ、ジュース飲んだら飾りつけに行くよ」

「はーい」


 そこからゆっくり喋りながらウェルカムボードを出しに行ったり、風船を膨らませたり、今日しないとしょぼくれてしまう飾って行った

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