24:当日リハーサル
緊張マックスで眠れなかった夜が明けて、朝を迎えた。
そして、いつもより時間をかけてセットアップをする。
別に、マジックホールで本番直前にセットアップすればいいだけの話なんだけど、暴れる心を落ち着けたいだけ。
どうも心が落ち着かない。あれだけリハーサルして、振り付けも完璧に合わせて、準備万端なのに。
別に、失敗したらどうしようとか、ネガティブなことは何一つ考えていない。はずなのに、ものすごいそわそわする。
とりあえず、朝ごはん作って、ゆっくり食べよう。こんなそわそわしている状態でマジックホールには行けない。逆にマジックホールに行けばさらにソワソワする気がしてたまらない。
『おっはー、何時にマジホ行く?』
沙良からのメッセージだった。
『確認したいことあるし、10時くらいかな』
『ほんなら、うちもその辺で行くわ』
なんだったんだろう?このやり取りは。別に要らないやり取りだったと思う。
実際に私だって何時に行くかわからないんだし。
さぁ、そんなことより、ちょっと心も落ち着いたし、マジックホールに行こうか。でも、今日は電車じゃないかな。自転車を走らせて、もう少しフリーにしてからマジックホールに入りたい。
気分によって電車を使うか自転車を使うかを変える。そうしないとやってられないときがある。
とりあえず、行こうか。ライブ開始は17時からだけど……。
学校に行くとき、電車を使っても、自転車を使っても通学時間はあまり変わらない。最近は、マジックホールに自転車を置いて学校に行くことだってある。
いつも使っている自転車に乗って、真夏の川沿いを走っていく。少しは涼しいかなって思ったけど、そうでもない。ただ、朝だから酷暑じゃないくらい。水を浴びてきたらよかったと思い、少し後悔した。
家から30分ほど自転車を走らせてマジックホールに着いた。毎日来てるのに、今日は全く違う雰囲気を出している。と感じる。
いよいよ本番だ。そう思わせるのは中に入ってから。
客席やステージの壁に貼り付けられた風船や紙わっかの数々。今日のためだけに作った飾り。オープニングセレモニーはないけど、華やかなステージでミアシスが舞う。
イメージはできるんだけど、ほんとに羽ばたけるのが夢みたいに思える。
とりあえず、雰囲気に飲み込まれないように先に一人で入念に立ち位置の確認をする。最終的なリハーサルはメンバー全員がそろってから。それまで少し先に間違えないように。
あっ、そういえば、どこでフリートークするんだっけ?それも確認しておこうっと。忘れたら話にならない。振り付けよりも流れの確認のほうがいるような気がする。それだけ確認して、最終的なリハーサルに移ろうか。
「おいっす~」
「おはよー」
「おっはよー」
ここでダンサーの三人が到着。まだ来てないのは亜稀羅だけ。亜稀羅が来たら最後のリハーサルを始められるんだけどなぁ。
「おはよ。由佳も翔稀も元気ね」
「あったり前やん。本番当日やのにワクワクせぇへんわけがないやん」
「そうだよ。めっちゃ楽しみやねんから」
「で、沙良は?」
「緊張で吐きそう。昨日からずっと。楽しみやけど怖い」
沙良にしては珍しい。いつもならテンション上げまくりで、これでも?ってくらい突っ込むんだけど……。
「沙良、大丈夫?」
「ライブやりはるアイドルさんの気持ちがようわかるわ。緊張でやばい」
「吐くなよ。初っ端から真新しいステージ汚すなよ」
「それは我慢する。けど、振り付けとかミスったらごめんな」
「それはさすがにやめてくれよ。さすがにダサすぎるわ。リリイベと思ったらええんとちゃう?」
「そう思えたらええんやろうけど、どうやろ。なんとかする」
「沙良お姉ちゃん、お願いだから、ダンストラックで振り付け間違えないでよ。かみ合わないと怪我するんだから」
「うん。善処する」
沙良からは不安をあおる言葉しか発していない。
「と、とりあえず着替えて、朝は流れを確認しながら振り合わせするか。ぶっつけ本番で行く前に確認くらいしようぜ」
「うん」
沙良のテンションが下がりきってる。なんだか嫌な予感がするだけどいい意味で外れてほしいけど。
亜稀羅が集合時間ぎりぎりに来て、あわただしく本番さながらのリハーサルを強行。
リハーサルの間、何度か、ダンサーが前、ボーカルが後ろにいるフォーメーションがあるんだけど、そこから見る沙良は、やっぱり緊張の色を隠せていない。ただ、由佳とのコンビネーションは、ずれていないところを見ると、そこは必死に怪我をしないように気を張っているみたい。
緊張でガチガチになるより、楽しんでライブをする方がいいに決まってる。
たぶん、少しMっ気のある沙良のことだから、オープニングパフォーマンスで緊張は取れて、やってるうちにハイテンションになるだろう。とみている。
それに比べてほかの4人はいつも通り。正直なことを言うと、内心緊張はしていると思う。けど、こういうところは慣れているでしょ。部活のパフォーマンスもあるんだし。
そんなことを思いながらリハーサルをこなしていく。




