22:夏休み
夏休みに入る前、ミアシスの夏休みが公式サイトやSNSで公表された。
部活のレースの初戦が終わったくらいにミアシスのメンバー話をは聞いていたんだけど、ワンマンライブを強行するということを。
ただ、追加情報は、ミアシスのサイトを見てびっくりしたんだけど、どうやら事務所が運営するライブハウスを造るみたいで……。そこで開催するみたい。
それにはさすがに引いて、血の気が引いた。それに、私にとって場所が悪い。
なんでわざわざ学校の近くにライブハウスを造るんだろう?しかも、事務所もそこに移すらしい。私にとってこの半年はトーモリの生徒の目を気にしないといけなくなりそう。
あっ、そうそう。梅雨が明けたくらいにミアシスのセカンドシングルをリリースしたんだけど、なぜか、これも大ヒットで、とあるランキングにデイリー4位にランクインしちゃいました。
それに、またテレビ露出が増えてしまって……。稀にカップリング曲を歌う。みたいな時があったりして、毎日スタジオに集まって振り付けを確認し、ある日はテレビ局に出向いて、撮影、収録をして帰ってきて、毎日時間の許す限り、一週間のうち2日はセットリストの話し合い、他の日はさらなるニューシングルの振りの練習。などという、いつかあった日々を送ることになった。
そして、夏休みに入ると、事務所が運営するライブハウスに籠り、感触の確認をして、振り付けの確認をして、音の広がり方を確認しながら、ニューシングルの振り合わせ。そんな日々がずっと続き、部活も両立させようと必死の私は、大阪に来てから体重が5キロも落ちた。
慣れない環境でストレスがたまりにたまった上に、毎日レッスンとかで動くくせに食べる量が少なくなったからかもしれない。
とにかく、泳ぐときのパワーはなくなったし、レッスンや振り合わせの時もふわふわした感じがする。さらに勢いが強すぎて止めるところを過ぎて止まる。止めたいところで止まらなくなっちゃった。
そろそろしっかり食べないといけないなぁ。これ以上痩せたら健康問題に影響が出てきちゃう。
さらに、ミアシスの夏休みとともに発表されたのが、オリエンタルライムに新しいアイドルグループが誕生すること。
なんだか、ストレスがまた増えそう……。
そんなことを思いながら部活終わりのライブハウスに向かった。
今日は最後の振り合わせとリハーサル。
13時半から最後のリハーサルだけど、それまでの間にストレッチを終わらせて、個人的に苦手にしているところを確認していくつもり。
「ごめん、お先!」
最近、部活での口癖。マジックホールでのリハーサルが昼からあるから、ちょうど部活が終わった時に出ないと、個人的にしたいことができないまま振り合わせに入っちゃう。それが嫌なだけ。
だから、終わると同時にマジックホールに向かう。
人数が少なく、片付けも全員でやらないといけないんだけど、部員から「しなくてええよ」という言葉をもらってる。そのまま帰るのが失礼だから、さっきの言葉が入る。
「楽しみにしてるからな~」
この菜乃葉の応援が重く感じてしまう。だって、菜乃葉、ミアシスのワンマンライブのチケットを買ってるんだもん!
たぶん、他のメンバーもこの気持ちはわかってくれると思うんだけど……。
階段を駆け下りて、マジックホールに向かう。徒歩1分だから暑い時や寒い時は楽でいい。そのかわり、気分を変えたいときはしんどいけど……。
あっという間にマジックホールに着いて、レッスン着に着替えて、ステージに立ち、一人で振り付けをこなしていく。
一番苦手なのは、セカンドシングルのカップリング曲のサビ全部。
振り付けが激しい割には、音符がいくつも続いてブレスがない。これが4分ちょっとの間に8回ある。ブレスが1ヶ所でもあるなら全然楽なんだけど、ないんだよね。続かせようとして、振りを小さくすると、逆にブサイクに見えてしまう。
ブサイクに見えるなら、きれいに見える方がいいに決まってる。それなら、ボーカル陣が頑張らないといけなくなる。まぁ、ダンサー陣もダンストラックが2つもあるから、まだ私たちのほうが楽。無理やりそう考えることにした。
それにしても、ここだけうまく行かないんだよね。なんだか、イライラする。ライブのセットリストに苦戦している〈フライトゥブルーバード〉が入ってるから、やらざるを得ない。
これが原因で後半バテるなら考えるだろうけど、この曲で一気にバテるということがないから、文句は言えない。それに、セットリストを組んだのは私たち。今さら変えようなんて言えるわけがない。意地でもやるしかないと思ってる。
今日の自主練はここを重点的にしようかな。
そう思うと、部分リピートに音楽を設定して〈フライ・トゥ・ブルーバード〉の振り付けを確認しだした。
この曲、いまだに苦労するところがあるのは本当に厄介。もし歌い切れたとしても、それが継続できるとは限らない。だから、早く楽に歌えるようになりたいけど、たぶん、難しいだろうな。
「おいっすー」
この声は翔稀か。
「早いね。発表会あるんじゃなかったの?」
「編成が変わって、俺は出なくなったんだよ。まぁ、正直なことを言うと、ミアシスに入ってから部活はどうでもよくなったわ。ミアシスにおる方が好きに踊れるし」
「そう。翔稀がそれでよかったと思えるようにしないとね」
「まぁな。そんなことより、お前、汗だくやけど、大丈夫か?」
翔稀に言われて、改めて鏡で自分の姿を見ると、今までにないくらい汗をかいていた。
「えっ?うわっ、ほんとだ。〈フラトゥ〉のサビ、かなり苦手だから潰しておかないと。息がね、持たないのよ。いくらやっても」
「そうか。俺は〈仮面舞踏会〉のステップやな。どっちかというたら、振りよりもステップのほうが嫌いやねんな」
「そっか。翔稀は大技のほうが得意だもんね」
そんなダンサーも珍しいよな。なんて思いながらも話を続ける。
「まぁ、振り付け師の山添さんには感謝しかねぇよ。大技入れてくれるから」
「山添さん、本当に考えてくれるよね。ボーカル陣がダンス苦手って言ったら、幾分か簡単にしてくれるし、翔稀は大技が得意って言ったら、豪快に入れてくれるし。逆に、沙良と由佳は細かい振りが得意だから、細かいコンビネーションを組み合わせてくるし。ただ、今回は大技が入らなかったけど」
「まぁ、仕方ねぇよ。歌詞を見て曲を聴いた時に諦めたわ。曲の雰囲気もあったし、聞いたら入れれそうなところなんてないし、それまでも、あかんやつはあかんかったさかい、入れれたらええなぁって感じやわ。ダンストラック二曲も作ってもらっとるさかい、当たり前やけど、文句はないわ」
「ミアシスは好きにさせてもらってる感じが強いよね」
「そうだな。後輩はどうなるんだろうな?俺らと同じ感じになるんかな?」
その話を聞いて、後輩グループなことに話題が移る。




