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18:イベント終盤

「さぁ、ここまで三曲。ミアシスのオリジナル曲ばかり披露させていただきました!先ほどミアシスは4月8日にデビューしたばかりだということはお伝えさせていただきましたが、私たちの持ち曲は3曲しかないんです。で、このまま私一人がベラベラ喋ってるわけにもいかないんで、メンバーに話を振りつつイベントを進めていきたいと思います。どうしようかな。台本がないんで、喋りたいことをしゃべり倒すというような感じでライブを進めさせていただいてます。なので、ミアシスのトークは本性を隠しててもすぐにばれちゃうんで、そこを楽しみに聞いていただきたいと思います。で、今日なんですけど、きょうはね、私個人が気になったことについて話したいと思います。まず、一番気になったのが、亜稀羅。何?あの自己紹介。エスカルゴだっけ?何いきなり部活のバンドの自己紹介してるのよ」


 これは一番に問い詰めないとダメでしょなんて思いながら、亜稀羅に話を振ってみる。

 すると、亜稀羅は顔を少し赤くしながら、私に反論する。


「いや、その前にエスカルゴとちゃうし。エスカルニック。あまりにも緊張してもうて何喋ったらええんか真っ白になってパニクったんや。で、口開いたら案の定ああなったんや」

「単なる事故ね。それにしてはあんまりおもしろくなかったけど。で、今度は沙良よ。沙良が自己紹介したとき、会場がどん引きしたよ。何がしたかったの?」

「翔稀がいきなり変なこと言うからあわてたんやん。で、アイドルのキャッチフレーズにありそうな感じで行ったら会場がドン引きやもん。全部翔稀のせいやで」

「ほんまや、翔稀兄のせいやで!」

「で、その翔稀よ。なんで普段喋らないのに私のところを取るかな?普段なら全部任せるくせに」


最もな原因になった翔稀を問い詰める。


「ただやりたくなっただけだよよ」

「自分でも勘付いたかもしれないけど、ものすごい空気になったの自分でもわかったでしょ?」

「それについては反省してる。あまり好奇心でやるもんとちゃうなって思ったら、今後はやらへんつもりです」

「ってことで、公開反省会をさせていただきたいところで、気分を変えて、カバー曲を披露させていただきます。じゃあ、反省すべき翔稀。曲振りお願いね」


 正直、私ばっかり話しているのも辛いし、なにより、ほかのメンバーの声も聞きたいだろうし、ここはかっこよく決めてくれるだろう。

 そんなことを瞬時に思って翔稀に曲振りをお願いする。


「おいおい、マジかよ」

「今日の罰ゲームね」

「こんなことになるんやったらやらんかったらよかったな。まぁ、ええわ。そうしましたらミアシスがカバーでお届けします。エメさんの『ビューティフルデイズ』です」


 翔稀言い終わると、キーボードの音がクレッシェンドに大きくなる。

 そして、いったん切れたところから歌いだす。


 この曲を選んだ理由。それは、リリースイベントが始まってから持ち曲が3曲って寂しいよねって話をしてて、なら、一時的にカバー曲を使ってもレパートリーを増やそうって話になった。そして、短期間で習得しなきゃいけないから、5人で話して、ある程度の難易度があり、なおかつ、習得が安易だと思ったエメさんの〈ビューティフルデイズ〉をカバー曲に選んだ。

 そのカバー曲もあっという間に歌い切り、このままラストスパートに。

「ありがとうございます。こんなに暴れた楽しいライブも次が最後になってしまいます」

 え~っ!と客席からの声。私だって正直に言えばまだ終わりたくない。終わりたくないんだけど、尺ってものが決められてるから終わらざるえをえない。

 まだデビューしたばっかりである程度のハプニングは許されても、暴走はできない。こんな素敵なステージで二度とできなるのはゴメン。ただでさえトークや特典会が長いような気がするのに、これ以上行くのはさすがに……。


「まだ夕方もあるから許してよ~。由佳たちだって終わりたくないんだから~」


 さすが由佳。わかってるようなタイミングで挟んできた。


「ただね、翔稀が変なことを言ってしまったんで、時間が短くなってしまったんでけど、最後の一曲行きたいと思います。 もうこのリリースイベントでは15回目のお披露目になります」

「そんなにやってたんや。よう数えてたなぁ、美桜姉」

「まぁ、毎回2回はやってるからね。 さぁ、全部のライブに来ていただいた方はそろそろ覚えていただいたと思います。今日も2回目のお披露目です。『そよ風に』。最後まで楽しんで行ってください!」

 無理やりつなげると、少し気分を落として歌いだした。


 歌い切ると、会場には遅咲きの桜が舞いだした。一緒にそよ風が。


「どういうタイミングかわからないんですけど、桜が舞い始めたところで今日のお昼のライブは以上になります!このあとは特典会に移ります。今日の曲、よかったなぁと思うところがあれば、ぜひCDをご購入いただいて特典会に参加して感想を聞かせていただきたいと思います。さぁ、最後は、一番大きな事故を起こした亜稀羅に締めていただきたいと思います。亜稀羅、ちゃんとそろえてよね。そろわない方が怖いんだから」


 反撃させる隙を与えず、亜稀羅に最後を任せた。


「いつもの感じで締めたらええねんな? それでは、以上!」

『ミアシスでした!』


 なんとか合わせれた。やっぱり、こういうのは私がやる方がいいのかもしれない。

 次につながる不安を残してステージから降りた。


 そして、水を飲んで、チラシを手に取ってステージ下に出ていった。

 そこからはもう変わらない。

 ステージの準備ができたら業務連絡でステージに呼び集められ、特典会でサインを描いて、話して、列が切れたところで区切って控え室にバイバイ。そして、休憩がてら沙良と一緒にショッピング。由佳もついてきてかわいいものを買ってる。その顔を見るとものすごく満足そう。


 夕方からのライブはセットリストを少し変えて、桜が舞う中でライブをした。

 これだけ充実した日々を送れたのは久しぶり。正直なことを言えば、嫌なこともライブで全部吹き飛ばしちゃえそうな感じ。

 もう楽しかったから、しばらく余韻が残りそう。このままの気分だったら、学校に行った瞬間バレそうな気もするけど、もうどうでもいいかなって思ってしまう。


「美桜、帰るぞ」

「うん。すぐ行く」


 ライブイベントが終わっちゃったことがなんだか寂しく思える。まだ続かないかなぁとか思ってしまうことも事実。


「美桜~、早くしねぇと置いて行くぞ」

「わかったよ。行くから待って」


 ステージから目を離すとメンバーについていった。

 桜の花吹雪が私たちを帰らせまいと、強く向かいから吹く。


「帰らせへんってよ」


 亜稀羅の言葉が帰り際の私たちを笑わせた。

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