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16:美桜さん、ぶりっ子になってみる

 袖に一度姿を隠し、ミアシスのビラを手に取ってステージの階段を下りて、一番遠いところから攻めていった。


「私たち、ミアシスと言います!このあと13時からライブを行います。よかったら今日がイベント最終日になりますんで見ていってください!」


 そう言いながらビラを手渡ししていく。で、写真を求められると、ビラも一緒に写す。これでミアシスの宣伝になるでしょ?可愛らしく見えるしさ。

 普段だったら絶対しないようなしぐさをしてる気がする。これも、私たちのファンを増やしていくため。ただ、慣れないことをしすぎてストレスをためないようにしなきゃ。あまりにもやりすぎたら倒れるかも。


 一度間が開いたところで、他のメンバーの居場所を探す。

 ……みんなばらけて動いてるように見える。少しちょっかいをかけようかな。面白そうだし。

 でも、どうやってちょっかいを出そうか。ちょっかいをかけるのは好きなんだけど、こういう場でどうしようかと迷ってしまう。


「あっ、美桜おねえちゃん、どうしたの?」


 一番最初にちょっかいをかけようとしていた由佳にバレた。ちょっと虚しかったけど、このままいくか。


「一人が寂しくなったの~、由佳、一緒に回ろ?」


 これも学校では絶対しないぶりっ子美桜。自分でやっててバカに思えてくるところはあるけど、私の性格を知ってる由佳は笑いながら返してきた。


「ちょっと、美桜おねえちゃん、笑かさんといてや。普通やったら、それ由佳がやることやで、それは」


 由佳がぷぅーっと頬を膨らませた。この顔もまぁかわいい。ほんとに妹としてほしい。そんな姿を見ながら笑った。


「えっ?由佳ちゃんのお姉さん?姉妹でアイドルなん?」

「そんなわけないよ~、ちゃんと苗字みてーや。それに、由佳は誰かの妹とちゃうもん。由佳はみんなの妹やで」


 そう言ってぷいと横を向いてまた頬を膨らませた。


「じゃあ、姉妹で一枚撮らせてもらっていい?」

「やから姉妹ちゃうって!」


 反論する由佳に抱きつき、写真に納まった。

 そこからちょっとの間は由佳と一緒に回っていた。

 そして、時間はあっという間に過ぎていって、ライブ開始の三分前になった。


「もう一回円陣組んでミーティングしよっか。それで本番だよ」

「了解」


 5人がきれいに円になって、肩を組む。


「全部で5日間やってきたリリースイベントも今日の2回を残して終わりです。悔いの残らないように、だけど、楽しんでいきましょう!あとは、けがのないように。盛り上げていきましょう!ほかにない?ないならウィーアーミアシスで行くけど」

「あっ、俺から。美桜も言ったけどさ、悔い残して次にってことはやめようぜ。俺らは新人でデビューしたばっかりだけどさ、デビューしてんだぜ。泣くのはバカみてぇだからさ、笑って終わるぞ」

『おい』


 メンバーが喋り終わったらいつしか『おい』というようになっていた。ミーティングの時だけなんだけど……。


「あとはない?……オッケー、吠えるよ!ゴーハイゴー!」

『ウィーアーミアシス!』


 掛け声をかけて全員とハイタッチ。そこから本番が始まるまでは思い思いに体を動かす。

 私は水泳のレース前にしていたことを本番前にする。

 下を向いて手首でこめかみを数秒抑え、それをやめると上を向いて数回飛ぶ。

 これは、野球のアイアンブラックスの古川投手が投げる前にやること。自身を集中させて、そこから無駄な力を抜く。そしたら、程よい感じで投げられるからって話を聞いたことがあって、それを実際に試してみたら、面白いくらい楽に泳げた。

 それ以来、大事なレースは欠かさないようにしてる。

 それをやり終えると、手足を数秒ぶらつかせる。そのあとにマイクを受け取ってライブの開始だ!


「皆さん、お待たせをいたしました!この春にデビューしたばかりの5人組アイドル、ミアシスです!どうぞ!」


 今日も司会は田村マネージャー。これはもうお決まりになりつつある。

 田村さんが話し終えると、軽やかなメローディーが場内に流れる。今回はそれに合わせてステージへ。

 今までやったことのないことで、前奏の間に全員がステージに立たないといけないから、かなり無茶。

 前奏が15秒ほどしかないからなぁ。もう少し長かったらもう少し楽に行けるだろう。


 なんとか昇りきって歌いだし。登場順が最後の私。なんとかきれいには入れたからちょっと満足。そこから思うように上げていって、感情を豊かにしていく。歌っててだんだんと気分が乗ってくるの、自分でもよくわかる。

 最初の時にはできなかったサビの浮き沈みも表現できるようになった。そこは収穫かな。

 あとは、気分に任せて歌い、振り付けを間違えないように〈そよ風に〉を披露した。



 テンションに任せて1曲目を披露した。感情は曲調とかテンションに任せたからどうなったかわからない。けど、歌詞は飛ばしてないから大丈夫なはず。振り付けも、意識しすぎて少し硬くなったところがあったかもしれないけど、とんだりしなかった。そこが収穫かな。


「ありがとうございます。 私たちミアシスのデビューシングルの〈そよ風に〉をお届けしました。改めまして皆さんこんにちは!今日は短い間ですがよろしくお願いします!」

「さぁ、それでは、最初に自己紹介から行きましょう!沙良から!ラスト前やからいつもとは一味変えて!」


 うわっ!まさか翔稀に取られるとは。

 あれだけ話ベタなのによく言ったね。しかも余計な一言を加えて。こういうことして翔稀は自分でクリアできるんでしょうね?

 ちょっとにらんで翔稀を見た。


「わりぃな。やりたくなっちゃった」


 マイクを離して翔稀が言った。


「もちろん、自分のは考えてるんでしょうね?」

「じゃなかったら言ってねぇよ。それよりも見ろよ、亜稀羅と沙良。二人とも正反対だぜ」


 確かに。沙良は煽りに言ってるけど、亜稀羅は困惑した表情できょろきょろしてる。


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