12:美桜さん、アイドルとバレる
初めてのイベントの翌日。
「あっ、中川さん、ちょっとだけいい?」
教室の席に座ってる私に話しかけてきたのは川島さん。あれっ?彼女別の場所にいなかった?
「どうかしたの?」
「ついさっきなんやけど、吹部の子に中川さんのこと聞かれたんやけど、中川さんってアイドルなん?」
急な不意打ちでびっくりして伏せていた顔を上げた。
「ほ、本当にどうかした?私がアイドル?そんな綺麗さなんて私にあると思うの?」
「うちはあると思う。うちも昨日梅田におったけど、中川さんが昨日、うちらに見せへんかった笑顔、めっちゃ可愛かったもん。言われてちょっと納得した。こういう子がアイドルになれるんやって」
どうやら、昨日いた同じ制服の中に川島さんもいたのか。気づかなかった。これは失態かも。
ただ、ここでバレるのは今後にとっても非常にマズイ。なんとかして隠し切るか?
「な、なに言ってるのよ。笑顔がかわいいって。そんなのたくさんいるじゃない。川島さんだって十分可愛いしさ、かわいいってだけなら、誰でもアイドルになれるんじゃん。その中で特別な子がいるからアイドルになれるんでしょ?違うかな?」
「違うかな?って言われても、うちにはわからへん。しいていうなら興味ない。っていうのが本音。でも、うちは本当のことが知りたいだけ」
「逆に川島さんはどう思うの?」
「そう答えるってことはアイドルなん?」
答え方を間違えたな。でも、ここまで来た以上、イエスかノーかで答えないといけなくなった。
ここでウソをついてもいいかもしれないけど、バレたら面倒。本当のことを答えても、彼女から周りに漏れる可能性だってある。
……どっちにしたって後々面倒。どうする?私。
ここから、川島さんに聞こえるか聞こえないかくらいの声量で話した。
「……川島さん。川島さんは、今から私が話すことをだれにも言わないって誓える?」
「まぁ、休み時間とかほとんど移動やから喋ることはないやろうな」
「そう。なら、あなたにだけ本当のこと言うわ。 川島さんや吹部の子が言うように、自分で言うのもあれだけど、ミアシスっていうグループのリーダー。吹部の子があれだけ騒ぐってことは、彼女たちも私のことを見たんじゃないかしら?昨日、インディーズながらもデビューしたから。あと、大阪に来た理由も嘘よ。本当の理由はミアシスの活動をするためにわざわざ来た。それも一人で。これくらいかしらね。私があなたに隠しているのは」
包み隠さず全てを話すと、川島さんはあっけに取られている。大きな声を出されないだけマシか。
「……全部本当の話よね?スケール大きすぎてなかなかついて行かれへんねんけど」
「あなたが事実を話してほしいって言ったから事実を話しただけ。信じられないなら『ミアシス』って検索してプロフィール写真と見比べてみたら?あなたが検索してる間にミアシスの中川美桜になってみるから」
彼女がスマホをいじってる間に、無理やり学校での中川美桜から、ミアシスでイベントをするときの中川美桜に気持ちを切り替えた。
「ほんまや。似とる。いや、似とるとちゃう。一緒やん」
「だから言ったでしょ?本当の話だって。ミアシスのリーダーの中川美桜は私だって」
「キャラも変わるんや。美桜ってどっちが普段の美桜なん?」
それが分かれば私も苦労はない。いつだって私は自然体。だから、キャラが変わってるといわれても、よくわからないところがある。っていうか、初めていわれたんだけど……。
「わからないわ。どっちが本当の自分なのか。たぶん、学校にいるときはずっとこうでしょうね」
「そう?キャピキャピしてるほうがかわいいと思うんやけどなぁ」
「ただ、こっちのほうが私は動きやすい。アイドルグループのリーダーとして認知されないから。今の私にそんなオーラなんてないでしょ?」
「まぁ、そうやね。その雰囲気やったらまったくわからんわ」
たぶん、喋り方や、ヘアスタイルの変化で変わるみたい。
まぁ、レッスンの時とかは汗で引っ付くのが嫌で、カチューシャでアップにしてる。
たぶん、学校にヘアスタイルを上げてきたら、ミアシスの中川美桜で過ごすことになるのかもしれない。絶対にそうしないで学校に来よう。
それにしても、相当早いタイミングで自分の正体を明かしちゃった。もう少し長い間隠しておきたかったんだけどなぁ。というか、卒業するまで秘密にしておきたかった。なんでしゃべっちゃったんだろうな。
今になってもったいないことをしたと心の中で思ってしまう。
さぁ、家に帰っていろいろしようかな。
あれ。ちゃっかり川島さんが美桜って呼んだような……。
気のせいかっ
あと、近いうちに登場人物一覧を出す予定にしています。
今暫くお待ちください。




