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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
3年目
122/570

120:ラストパフォーマンス

 さて、ここから美祢さんのアナウンスが始まれば、私たちの時間が始まる。そして、そのアナウンスは沙良の緊張が移ったかと思うくらい、心臓が跳ね上がる。

 ただ、その緊張とは違う。やっぱり、美祢さんの少し威圧感のある声が、私の現役時代を思い出させ、背筋を張らせたものだった。

 それでも、これくらいなら今は跳ね返せる。


「それではミアシスの皆様、お願いいたします」


 美祢さんの言い方は、やっぱり緊張を誘う。……でもさっきは成功させた。朝と違って観客が少し増えただけ。大丈夫。成功させる。

 そんなことを思いながらステージイン。

 ……うん。雰囲気は朝と一緒。たぶん、誰一人として私たちを認識していない。少なくとも、私たちが知っている一人を除いて。それなら、なおやりやすい。


「みなさんこんばんは!ミアシスといいます!本日は選手の皆様を応援するために来ました!この曲で皆さんの力になれたらと思ってます!〈テイクユアーマークス〉!」


 やっぱり、前奏から歌いだしまでの15秒でねじ込むのは無理がありすぎたか。少し酸欠気味になった状態で歌い始める。


 ちょっと苦しいけど、沙良との掛け合いがあるから、少し回復。その掛け合いも終わり、Aメロを私が歌う。

 そこからパートを入れ替わるたびに沙良のことを気にかけ、たどり着いたCメロ。またここは掛け合いをクリアして、ラストサビ。亜稀鑼のバックコーラス、私のシャウト、メロディーを歌うのは沙良だけ。ここは少し私も肝を冷やす。

 そして、沙良がワンフレーズ歌うと、私もメロディーに合流して沙良と合わせて最後まで流し込む。



  闘いきれ このレースを

  本気でミラーゴーグルの奥を光らせて集中

  ベストタイムを叩き込んでGet Win!



 最後まで歌いきって、きめポーズを合わせ、完璧なフィニッシュ。


 決まった。そう感じながら数秒だけ余韻に浸る。もちろん、肩で息をしている。横で沙良も肩で息をしているのを感じる。みんな肩で息をしているのはわかる。そう感じながら、態勢を楽にして、場内に語りかける。


「本日はレースだけではなく、ご自身にも勝てるよう心より応援申し上げます。Go fight all swimmer. I believe for you. 以上、ミアシスでした!」


 いつもなら、合わせるところだけど、朝同様、ダンサーはマイクもない状態。時間もない状態。それなら、合わせるより一人でサクッと終わらせて撤収して、場を落ち着かせるほうがいい。というのをメンバー内で打ち合わせをしていたから、その通りで進めて、私たちは打ち合わせ通りに撤収。

 場内からの拍手を背中で受けた後、控室に入る前に、拍手にこたえて一礼。そのあと、静かに控室に潜る。


「はぁ~。緊張した~。俺らは終わりやな。お疲れ、由佳、亜稀鑼」


 翔稀は控室に戻って早々、近くにあった椅子に座り、深々と腰を掛ける。


「ほんまに。終わっていきなりそれかいな。うちらはまだここからやのに。お気楽やな」

「とりあえず、このあとはレースだから楽しもうよ」

「本音を言うたら、うちも上から見たいんやけどなぁ」


 そんなことを言いながら、沙良は帽子を外し、手櫛でヘアスタイルを整える。


「とりあえず、3人は着替えてきたら?もう衣装やなくてええんやろ?」

「まぁ、せやな。ほんなら着替えさせてもらうわ。ほんでどうする?俺は正直、ここで見られるんやったら、ここがええかなって思ってるんやけど」

「別におってもええんちゃう?ただ、こっからやと、見えても中途半端やし、半分はモニターで見ることになるやろうけど」

「それでも、経験者がおるそばで見れるほうが安心やわ。なんなら、未経験者が3人で観戦しても、なんのこっちゃわからんし」

「そうゆうことね。なら、構わへんけど。あっ、せや!スタートリスト買ってない!ダッシュで勝ってきてもええ?」


 沙良の顔はキラキラしている。それほどほしいのか。まぁ、準決勝だし、買いに行かせてもいいか。


「うん。行っといで。まぁ、止めても、抜け出して買いに行くんだろうけどさ」

「あっ、バレた?まぁ、よろしくな」


 それだけ言うと、沙良は一瞬で部屋を出て今日のスタートリストを買いに行った。


「ほんまに今日の沙良はいつもより慌ただしいな。さっきの本番直前の時、真後ろで緊張されて移りかけたわ。あれだけはマジで勘弁してくれと思ったわ」

「沙良って、緊張まで移すよね。でも、それで逆に冷静になれたりするんだけどね」

「それは間違いないんやけどな」

「でも、場内の雰囲気、朝と違ったね。ステージの端から異様な雰囲気を感じて、動きが固くなったもん。なんて言うか、なんやねん、お前ら。邪魔すんなや。みたいな殺気かな」

「朝はまだ予選だったからね。そこまでだったんだろうけど、今から、準決勝・決勝のレースだし、気を抜いたら一瞬で抜かれるし、追い抜かせないしで、集中しているところに私たちだから、そういうのも仕方ないと思うよ。邪魔してるようなものだし」

「まぁ、美桜の言う通りやな。俺らはただのオプションなわけやし、選手にとったら、途切れた集中をもっかいやりなおさなあかんわけやからな。無理もないと思うわ。由佳も経験あるやろ?コンクールとか発表会の時、目の前で前のグループが強烈なパフォーマンスして、目を奪われるときとか」

「う~ん。由佳はあんまりないかも。本番直前まであんまり集中せんタイプやったし、本番中はスイッチが入って周りの目なんか気にせぇへんし。やから、なんやろ。今日は殺気を感じて集中できひんくて、それを感じたってくらいやから……」


 これでわかった。由佳は周りの目に鈍感で、自分が楽しいと感じれば、とことん楽しむ。そして、緊張をしない。大物になったりしてね……。

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