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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
3年目
113/564

111:パフォーマンス

 そこからほんの数分。この数分が長く感じた。だけど、美祢さんの声が私の心を奮い立たせた。


「お知らせいたします。日本水泳協会では、今年度より、水泳競技のさらなる発展、競技人口の増加を促進するため、親しみやすく、また、自身の力に変えてほしいという願いからテーマソングを設定いたしました。そして本日は、このテーマソングを作成していただいたボーカルアンドダンスグループのミアシスの皆様にお越しいただいています。ただいまより、オープニングセレモニーを執り行います。本日は、お越しいただいたミアシスの皆さんにテーマソングの〈テイク・ユアー・マークス〉を披露していただきます。ミアシスの皆さん、本日はよろしくお願いいたします」


 美祢さんのアナウンスが終わると同時に私たちの曲が流れ始める。いつもなら、前奏の間にグループ紹介を入れたりするけど、この曲は、いきなり私と沙良の掛け合いだから、それはさすがにできない。その掛け合いを何もミスなく済ませると、私の歌いだし。そして、サビに入るころには、亜稀鑼のコーラスが入ってくる。それにかぶせるように私と沙良のデュエットでサビが進んでいく。

 この曲のサビこそが、私たちが一番に選手に訴えたい場所のひとつ。そこを超えれば、Aメロは沙良に譲り、私は一瞬場内を見る。

 ……やっぱり、観客数は少ないか。一般観客はさすがに空きが目立ちにくいものの、選手席のほうはさすがに空きが目立つ。しょうがないと言えばしょうがないんだろうけど、なんだろう。ちょっと悔しい気持ちになる。

 でも、考えていてもしょうがない。私たちは本当はいなくていいおまけなんだから。(こうやって自分で思うと、少し悲しいね)

 とりあえず、私たちが今ここにいる理由は、場内を盛り上げるため。正直、私たちが今ここにいる理由はそれだけだと思っている。


 曲は2番のサビを超えて、個人的に一番メッセージ性の強いと思っているCメロに。少しだけあおり成分を加えた形になっているけど、ここは、マネージャーやコーチ目線になっているところ。

 そこを抜けると、私がシャウト、亜稀鑼はコーラス、沙良のソロという、強烈なラストサビに。

 沙良、きついだろうけど、少しだけだから粘ってよ。そんなことを思いながらブレスなしのシャウト。

 ラストサビの前半はすべて沙良に預けているから、シャウトをやめるタイミングは私次第。

 ただ、レコーディングや動画サイトにアップされた音源は、ラストサビ前半の真ん中くらいまで吹き込んでいる。それだけでもなかなかハードで酸欠になりかけているのに、今日はサビ前半のほぼ全部。さすがにやりすぎたと思った。かなりの酸欠状態で沙良と合流。二人の声をハモらせて歌いきったタイミングでダンサーと揃えて決めポーズ。


 ……よし。完璧。正直、ほぼ一発勝負だったから、ほかのメンバーを心配する余裕なんてなかったけど、なんとかいったかな。とりあえず、ここからわずかだけど、グループと曲紹介をして、競技に移れる準備をしよう。


「みなさん、おはようございます!私たち、ボーカルアンドダンスグループのミアシスと言います!今回は、選手の皆さんを応援したいということで、この〈テイクユアーマークス〉という曲を作らせていただきました。皆さんのエネルギー、勝つ意欲に変えていただけたら幸いです。ミアシスからは以上となりますが、皆さんがご活躍されることを祈ってます!頑張ってください!それでは以上、ミアシスでした!」


 いつもなら、揃えるところだけど、今日に関しては、時間を押しかけていたので無理やり終わらせる。それは昨日のうちにミーティングでメンバーに伝えていたから困惑も混乱もない。そして、タイミングよく、美祢さんのアナウンスが響いて、私たちミアシスは撤収。朝のお仕事は終わり。着替えて、予選のレースでも楽しく観戦しようかな。


「お疲れ様。なんとかやりきったね。あとは決勝競技の前にもう一回だね。とりあえず、お昼まで自由時間にするから、着替えて解散ね。あと、4時までには戻って来てよ。一応、パフォーマンスは7時からになっているけど、また準備とかしないといけないし、時間もかかるだろうしさ。余裕持ちたいし」


 それだけ言うと、メンバー各々が返事をして散り散りになる中、沙良だけは異様な速さで外に出る準備をしていた。


「そんなに急いでどこに行こうとしてるのよ」

「だって、申し子と超特急の直接対決やんか!見逃されへんって!」


 沙良が大興奮している。それに、その直接対決は私も気になる。ここを止めるのはさすがに毒だな。


「そっか。オープニングレースだもんね。ごめん、すっかり忘れてた。急いで着替えて見に行こうか」


 そういうと、沙良の顔は一気に晴れた。レースを見たいというのが一つだったみたい。もしかして、緊張を見せなかった理由って、そこにあったりして……。まぁ、緊張を見せなかっただけ良しとするか。


「えっと、衣装は片づけた、髪飾りも片づけた。あとは……。よし!よっしゃ行こう!」


 ほんの数分。競泳のことになると、ここまで早くなるのか、沙良は。それに対して、私はまだ着替えている状態。メークはもちろんこのままでいい。ミアシスの私だってばれても全く問題ない。それに関しては、田村さんからのお墨付き。

 とりあえず、私も着替えたら、スタンドに上がろう。


「由佳はどうする?私一緒に行く?」

「うん。泳いでるところ見たいけど、なにがどうなってんのかわからんから、教えてほしいと思ってるくらい。ましてや、これからプール関係の仕事も増えそうやし、少しでも勉強しときたい」

「オッケー。そしたら、部屋の外に来て。そこから連れて行ってあげるから。で、それまでは男子にどうするか聞いてるし」


 は~い、間延びした返事を聞いて、少し急いで着替えだす私。そして、着替えると、男子のところに行く。


「亜稀鑼、翔稀、このあとどうする?沙良はすでにスタンド行って観戦する気満々。由佳も勉強しようとして、このあと私とスタンドに行く予定。男子はどうするのかなぁって」

「あぁ、せやな。俺もちょっと見たい気持ちはあるな。なんなら、沙良が次のライブの振り合わせの休憩中、ずっと楽しみとか言ってたから、俺もちょっと気になってるから、俺もスタンドに行こうかな」

「ほんなら、俺もそうしよ。周りと一緒におるほうがええやろ。ってか、俺も水泳のこともっと知りたいしな。まぁ、沙良姉は熱中しすぎてなんも教えてくれなさそうやな……。」


 まぁ、それは私も否めない。けど、私も興奮して、自分が自分で手を付けられなくなるに1票。


「それじゃあ、外で待ってて。由佳の着替えが終わったら連れて行くから」

「オーライ」


 頭の中で浮かんだ考えは一度吹き飛ばし、女子の更衣室に戻る。

閲覧いただきありがとうございます。

お陰様でPV数3000超致しました。

これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。

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