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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
3年目
111/563

109:本番直前

 そこから見える5人の背中からはいつもより緊張している様子が伺えた。いつもは能天気な由佳でさえも。

 いつもならペチャクチャしゃべりながら移動するメンバーだけど、今日に関しては、由佳から始まる会話もなし。顔は平静に見せているけど、会話がないと、緊張しているんだなって思っちゃう。

 昨日歩いた道が昨日より長く感じるのは、やっぱり由佳のおしゃべりがないからか。それとも、田村さんから伝わる重い緊張感からなんだろうか?いずれにせよ、この雰囲気は早めに崩して、いつものミアシスになってもらわないと。


 そんなことを思いながら歩いて15分。競技場に着いて、関係者入り口から場内に入る。

 さすがに場内に入って控え室に行くまでの間、ずっとピリッとした空気を感じて、私でさえも前に進むのが怖くなる。学生時代に経験した雰囲気とはまるで違う。ここで日本最高峰のレースが始まるんだ。改めてそう感じた。

 感じてしまった雰囲気を敏感に感じ取ってしまったのか、沙良の顔がさらに曇りだす。そして、その雰囲気をさらに感じ取った年下二人の顔が強張った。

 ここまで来たらリハーサルをさせてもらって気分転換を謀りたいけど、慌ただしく準備をしている中でリハーサルさせてくれなんて非常識なことを言えるわけがない。それに、もう少しすれば開場時間だから、なおさらやらせてもらう時間なんてない。

 やっぱり一発勝負だな。決心がついた瞬間だった。


「一発勝負か」


 ドア越しに場内を見ていた翔稀が会小さくつぶやいた。その言葉に年下3人も場内を見る。不安そうな雰囲気はぬぐえない。だけど、成功させるためにはやらないと。


「よし、着替えよう。着替えて最後の打ち合わせをやっちゃおうか。気分を変えてパフォーマンスしよう」

「オーライ」


 翔稀だけが前を向いたままニヤリと笑みを浮かべた。


「よし。楽しんで美桜が言うようにええパフォーマンスで魅せようや」


 田村さんがいないとき、私のほかに翔稀が前を向いていると心強い。

 その翔稀が先に男子更衣室に入ると、沙良と由佳が女子更衣室に、そのあと亜稀鑼も男子更衣室に入ってみんな着替え始める。みんなが更衣室に入ったのを見て、私も女子更衣室に入って着替え始める。

 衣装は、白を基調にした疑似スーツ。さすがに動きやすさを重視しているけど、ピシッとさせて統一感を出している。


「なんか、ハットが飛びそうやな。やけど顎ひももダサいな。また改良できるんやったら終わった後に改良してピンつけたいな」


 そっか。今回、久しぶりに沙良がハットを衣装に組み込んでいるんだった。しかも、ちゃんと仕込みをして〈アオスジアゲハ〉以来のハット。

 なぜか沙良がハットなのかはヘアスタイルがショートだからというのが一つ。あとは、容姿が女子メンの中でかなりボーイッシュってところがある。

 それに対して、私はストレート、由佳がふんわりツインテールにリボン。みんなそれぞれのアクセサリーが用意されている。


「沙良、このあと、簡単に降り合わせしてみて、ハットが飛びそうなら、外してストレートにしよう」

「ええの?」

「今はね。パフォーマンス中にハットなんか飛ばしたら恥ずかしいでしょ。それに、この衣装は今回が初披露だから、改善点を見つけられるチャンスでしょ。とりあえずやってみよう」

「わかった。やるだけやってみるわ」


 それだけ返してもらうと、沙良はハットをかぶって、後ろの髪の毛を櫛で梳いた。


「よし、オッケー。用意できたで」

「了解。なら、男子と合流して隅のほうで打ち合わせをして振りあわせしてみようか。由佳も準備できてるよね?」

「もちろん」


 なら良し。というような感じで、部屋の外に出って、男子陣がどこにいるのか探す。

 ……いた。


「翔稀、亜稀鑼、こっちに」


 本部室のドアの真横に立っていた翔稀と亜稀鑼を人通りの少ない通路の奥に呼び寄せて、できるだけ小さくまとまる。


「とりあえず、まだ時間に余裕があるから、簡単にミーティングして最後に振り付けの確認をしよう。沙良が衣装に不安があるみたい」

「オーライ」

「まぁ、緊張しているだろうけど、翔稀みたいにそれさえ楽しめ何て言わない。だけど、怖がることなんて何もないよね?あと、予選と決勝でさらに雰囲気が変わる。予選もパフォーマンスをさせてもらえるなんてラッキーじゃない?一度雰囲気を確認できるんだし。もちろん、決勝のほうがもっと堅い雰囲気になる。だから、ここは緊張を楽しみつつ、いいパフォーマンスをして、選手にエールを送りましょう。あとは大丈夫?」

「俺から。今美桜も言うたけど、楽しんでパフォーマンスすること。あとは初めてのパフォーマンス隊形やから、戸惑うこともあるやろうけど、なんとかなるし、怖がらずにとりあえず楽しもうや」

「ほんま美桜の言うたことそのままやん」


 さらに突っ込まれた翔稀はニヤリと笑みを浮かべ、「それが狙いや」と呟いた。

 なるほどね~。年下3人組の緊張を解こうとやったことか。2年でかなり成長したな。こりゃ、心強いな。


「よし、行こうか。ゴーハイゴー」


『ウィーアーミアシス!』


 5人の声がそろって通路に響き、びっくりした役員さんが私たちのほうを見た気がした。それでも、ミアシスの顔は朝より少し緊張が解けているように感じた。

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