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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
3年目
110/563

108:本番の朝

 今日も朝5時に目が覚めた私。ここからはいつもとやることは変わらない。いつも通りシャワー浴びてメークをする。ただ、いつもより少しだけ濃い目に。遠い観客席からでもしっかりと表情を見てもらえるように。

 それが終わるころには6時半頃。いつもなら、モーニングまでの時間はニュースを見て過ごすけど、今日は会場への入り時間が7時半だから、朝ご飯を優雅に食べる時間はない。身支度をしてホテルのロビーに向かい、メンバーを待つ。


「おはようさん、今日も一番乗りやな。まっ、いつも通りやな」


 声をかけてきたのはスーツ姿の田村さん。昨日から珍しくこの姿で、私たちからしたら違和感。


「おはようございます。私はいつも通りですよ。メークはいつもより濃い目にしてますけど」

「まぁ、美桜がいつも通りで安心したわ。これで美桜も緊張してるんやったらメンバー全員に緊張が移るからな」

「たしかにそうですね。でも、沙良がガチガチに緊張しながら降りて来るんじゃないですか?それに、その緊張が亜稀鑼に移って本番までガチガチになったあげく、本番で吹っ切っていつも通りのパフォーマンスを見せる。ところまでセオリーなんじゃないですか?」

「ありえるな。なんせ、亜稀鑼と沙良だしな。で、由佳と翔稀にからかわれて」

「あはは。そこもいつもですもんね」

「よし。とりあえず、メンバーが集まるまではもう少しゆっくりしてええで。いつもどおり」

「いわれなくてももうしてますよ。コーヒー片手にして朝刊に目を通しながら」


 そう言いながら、読んでいた新聞をヒラヒラとさせる。


「……はぁ。ほんま今年二十歳の女の子か?やること、バリバリの外資系キャリア・ウーマンやないか。というか、やることに対して年齢がおうてへんねん」

「まっ、落ち着きすぎとは昔から言われてましたよ。まぁ、パニックになることとかほとんどなかったですし、高校時代も、周りは大混乱なのに、一人だけ冷静に物事を対処してましたね」


 たしかにそうなんだよね。文化祭のとき、用意するものと予算が足りないってなって、クラスがドタバタしてる中、一人だけ冷静で代替案をポンと出してたし、ミアシスのときも、本番で立ち位置が違うってなっても、ミスに見せずにしれっと澄ました顔でやり過ごしてたし。

 そんなことを思いながら、無料のコーヒーをもう一杯注ぎに行って、また新聞に視線を落とす。


「あぁ、やっぱり、注目は半フリの新旧エース対決と水の申し子VSスプリント超特急よなぁ~」

「ほんま、美桜と沙良は水泳バカよな」


 ボソッとつぶやいた独り言が漏れていたのか、田村さんが言葉を返してくる。


「あっ、聞こえてました?まっ、水泳バカって言われるのは仕方ないんじゃないんですかなとは自分でも感じてますけどね。それに、初日の見所ですからねえ。いきなり親友が出場するなら応援しないわけにはいかないですよね?」

「まぁ、せやな。……って。美桜にこの大会に出る親友がおるの⁉」

「あれ?知りませんでした?スプリント超特急の大神遊菜ちゃん。私の親友ですよ。冬に雑誌のインタビューがあったと思うんですけど、あの対談ですっかり意気投合したんですよ」

「あぁ、あの水泳雑誌のインタビューか。最初におうたときはほんまに高校時代に2冠3連覇した選手とは思えへんかったからよう覚えてるわ」


 そうなんだよね。私の身長が170あるのに対し、遊菜ちゃんは152くらいしかないから、私も身長差にびっくりしたところはある。

「あのあと意気投合して仲良くなったんですよ。あっ、でも、今日のことはちゃんと内緒にしてますよ。曲ができて、先行配信されていることはアナウンスされてますけど、誰が歌うかは、このあと美祢さんの口からサプライズで伝えられますから。それに、スケジュール欄のところに今日は〈ライブ〉としか書いてなかったのが幸いで、遊菜ちゃん、今日ミアシスが来ること知りませんから」

「ほんましっかりしてるわ。まぁ、石塚さんが非公開にして当日発表にしたいって意向やったし、ちょうどええんちゃう?」


 そういった後、田村さんもコーヒーを注ぎに行って、私のはす向かいに座ってパソコンでスケジュール確認を始めた。

 その姿を横目にまた新聞に視線を落とし、スポーツの紙面を眺める。

 もちろん、スポーツ面で気になるものと言えば、競泳、野球、バレーボールの3競技。根っからのスポーツ少女と思われるけど、それでもいい。スポーツ観戦が趣味の私には周りの声なんて気にしない。


「おっ、アイアンブラックスも勝ってるじゃん。今年は優勝してもらわないと困るよ~。それだけの戦力がそろってるんだから」

「また独り言が漏れとんで。それにしても、ほんまに多趣味やな。体いくつあっても足らへんやろ?」

「まぁ、そうですね。休みがほぼ週1なんで、趣味に割く時間なんかないですよ。そのぶん、技術は上がりっぱなしですけど」

「まぁそうやろうな」

「今日は久しぶりの観戦になりそうで、ものすごい楽しみですもん」


 なんとなくだけと、目の奥がすごく光ったように感じた。


「おいおい。今日はプライベート100とちゃうんやで。忘れんなよ」

「わかってますって。沙良みたいに対バンで他のアイドルさんがライブしているとき、ガチヲタになるようなことはないですよ」

「まぁ、沙良はもう無理やな。あれは逆に邪魔せぇへんほうがええパフォーマンスを見せてくれるから、なんも言わんとくわ」


 沙良のヲタク具合はもうオリエンタルライムのなかではだれにも超えられない。


「おはようございまーす」


 まぁ眠そうな声でロビーに降りてきたのは亜稀鑼。いつもより寝癖が爆発している。寝られなかったのかな?


「いつも通りやけど、いつもに増して眠そうやな。寝られへんかったか?」

「まぁ、そうっすね。翔稀兄さんが夜食を食べとったんで、匂いで寝られへんかったんか。みたいな感じっすね。その翔稀兄さんはヘアスタイルのセットしてましたわ」

「そうか。まぁ、昨日は飯食う時間がとられへんかったもんな。そこは悪かった」

「いやいや、田村さんのせいじゃないっすから。翔稀兄さんに飯をおごってもらえたらたぶん終わってた話なんで。とりあえず、今日は頑張りますわ」

「あぁ、頼むわ。あっ、あそこに無料のコーヒーあるで。飲んだらええやん。すっきりするんちゃう?」

「やったらええんですけどね」


 そんなこと言いながら、田村さん同様、コーヒーを取りに行き、田村さんの横に座り、スマホを触りだす。

 そこから数分もしないうちにダンサー陣が一緒に降りてきた。


「よし。そろったし行くか」


 紙コップに入っていたコーヒーを一気に飲んだ後、田村さんが言った。

 その声に私も亜稀鑼もコーヒーを飲み干し、立ち上がる。私に関しては、新聞をもとあった場所に戻して集団の一番後ろについていく。

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