102:生放送
30分前にはスタジオ入りして、簡単なリハーサル。基本的には、ムーンライトスターのことがほとんどですので、流れに任せて、私は流れていればいいと思っております。突拍子もないことを言わないつもりですし、トークも『チカラメシ』以外は静かにしているつもりですので。
「奈緒美さん、もっとしゃべってもらっていいですよ。このままだったら巻いちゃいそうです」
そういう風にメインMCの和泉夢佳さんに言われますが、スタンスは変えないつもりでいます。それは、私が余計なことをしゃべるのが目に見えていますから。それに、本日の主役は私たちサンシャインではなく、ムーンライトスターですし。
もちろん、主役がサンシャインなら、楽しんで話すと思いますが。
そんなことで始まりました生放送。
レギュラーで出演されている皆さんがタイトルコールをして、ムーンライトスターとサンシャインの紹介が始まります。そして、軽やかに進んでいくトークと時間。メインはムーンライトスターで、軽やかなトークにスタジオは楽しい雰囲気で進んでいきます。さらに時間がたてば、私が前に立つ出番です。
「それでは、次のコーナーに参りましょう。ゲストの方に学生時代のお料理と思い出を一緒にお伺いしていきます。『学生時代のチカラメシ』のコーナーです。本日、お料理を作っていただくのは、サンシャインから香川奈緒美さんです。よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「さぁ、香川さんは、まだ19歳ということで、昨年学校を卒業されたばっかりですが、やっぱり、思い出というのは色濃く残っていますか?」
やっぱり、台本通りだよね。話題は。まぁ、生放送だから、それくらい絞っておかないといけないのはわかるけど。
「そうですね。あんなこともあったなぁ。なんてしみじみ思うこともありますね。青春としては、一瞬でしたけど、楽しいこともあれば、辛いこともありましたけど、それも全部ひっくるめて高校の思い出が一番だと思いますよ」
「そうですか。それでは、早速作っていただきましょうかね。本日は何を作っていただけるんでしょうか?」
「本日は、懐かしい味に思いでほろり『大将のお手軽チャーハン』です」
「ほう。今日はチャーハンですね。で、大将というのはどなたのことでしょう」
「私、高校は大阪の高校に通っていたんですけど、そのときからよくお伺いさせていただいているお店のオーナーです。そちらには学生時代のころから通わせていただいて、すっかりお気に入りになってしまいましたね」
「このチャーハンはどんなときに食べられますか?」
正直、あまりオススメにはしたくない。だけど、学生時代のチカラめしなんだから、ストレートにはっきり言い切っていいよね。
「そうですね。物事がうまくいかなくなって、何もかも忘れてリセットさせたい時ですかね。かなりのボリュームで無心に食べ続けたりとかします。えっ……。って思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、野菜多めで、お肉と油を控えてあっさりしてるので、胃もたれとかの心配をいつもしなくていいんです。それで、いつもお腹いっぱいまで食べちゃうんですよね」
そんなことでトークを進めながら、手際よく工程を進めていく。その間にも矢次に質問は飛んでくるけど、のらりくらりとかわして、ようやく出来上がりに。
野菜が多めのチャーハンですので、しっかり火を通さなきゃいけなくて、少しばかりお時間がかかってしまいましたが。
「お待たせいたしました。こちらが、私、香川奈緒美のチカラメシ『大将のお手軽チャーハン』です」
「はい、ありがとうございます。それでは、冷めないうちにいただくとしましょうか」
何もアレンジを加えず、大将のチャーハンそのままですので、どういった反応をされるか。少しばかりこわいところではあります。とくに、橋爪さんと林さん。ご年齢のことをお考えると、失礼ですが、少し心配になります。
「なかなか素晴らしいですね。たしかに懐かしい感じがします。昔、母親が作ってくれた味にも似ている気がします」
かなりの好評で助かりました。肉類は少ないものの、炒めるときにごま油を入れすぎてしまったので、そのあたりがどうかなって思うところがありましたが。
そんなことを思っていると、心地のいいメロディーが鳴りました。
「はい、この鐘がなったということで、次のコーナーに移りたいと思います。『夢佳のプリーズアンサークエスチョン』のお時間です。このコーナーでは、私、和泉夢佳がムーンライトスターのお二人に質問を投げかけます。その質問に5秒でお答えいただきます。それじゃあ、さっそく行きます。最初の質問です……」
淡々と答えていく橋爪さんと林さん。お二人ともほとんど一緒の答えで仲のよさがうかがえます。
「本日のゲストは、ムーンライトスターさん、そして、サンシャインの皆さんでした。明日のゲストは、俳優の金田達郎さんをお迎えして、今日と同じ13時20分からお会いいたしましょう。それではまた明日~」
終始、和やかな雰囲気で進んでいきました生放送。いい雰囲気のまま生放送は終了いたしました。
ただ、私の場合は、テレビ局を出るまでが仕事だと捉えております。というのも、ここで美桜さんに戻ってしまうと、いろんな人に正体がばれてしまうからです。そうならないためにも、テレビ局を出て、少し離れるまでお時間がいるのかなぁと。中川美桜さんと香川奈緒美は別人としているうえで。
「はい、お疲れさまでした。今日はありがとうございました。本当に楽しかったです。また縁があれば、よろしくお願いします」
「こちらこそありがとうございました。和泉さんのおかげで楽しい時間を過ごさせてもらったわ。こちらこそ、機会があればお願いします」
そんな感じで、和泉さんたちと仲良くスタジオを出て、楽屋に戻る。
楽屋に戻ると、入ったときと同じに戻して、テレビ局を出ようとする。
ただ、型のついた髪の毛は戻らないから、あきらめるところがあるよね。それなら、カチューシャだけ外して、このまま行ってやれ。
「それではみなさん、お疲れさまでした~。お先に失礼しま~す」
「あら、今日は早いのね。用事があるのかしら?」
「はい、このあと少しやることがあって……。もちろん、ミアシスのことに関してですけど」
「そうなの。それじゃあ止められないわね。お疲れ様、またよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
それだけ言うと、楽屋を出て出口に向かう。それまでの間は誰とも会わず。こんなこともあるんだと思いながら、テレビ局を出て、今日泊まるつもりのホテルに向かう。
今日のミアシスは、日曜日にあるコラボライブのセットリストの打ち合わせになっている。
ライブに参加するアイドルの数は、ミアシスを合わせて6組と、いつもよりは多いものの、一組あたりのパフォーマンスタイムはいつも通り30分と少し短め。
これが単独ライブなら、持ち曲をすべて披露する勢いでも構わないんだろうけど、やっぱり、時間に縛りがある関係で、そういうわけにはいかない。
さて、そろそろ6時だし、テレビ電話をつないでもいいころだろう。




