99:再びサンシャイン
ムーンライトスターのサポートメンバーとして、リバイバルライブと称した全国ツアーは本当にあっという間だった。
ラストの2月に札幌でライブをしたときは本当に寒かったけど……。あとは、名古屋・大阪・福岡の順に五大都市でライブしてきた。どこも、似たようなセットリストだったけど、大盛況で幕を閉じた。
どこも、私たちサンシャインを待っているんじゃなくて、やっぱりムーンライトスターの復活を待っていたというように感じた。
それは、それでうれしかったし、安心した。私たちのほうが人気が高かったら、それはそれで気まずいし。
でも、無事に終わってくれてよかった。ライブに関してはその一言に尽きる。私の膝の痛みは我慢したけど、橋爪さんも林さんも倒れることなく、みんな怪我無く終われたことが本当に一番。
もちろん、反省点はたくさんあったけど、それを次回以降に活かせたらと思っている。
そして、一大イベントだったリバイバルライブが終わると、私は、ミアシスのいつもの私に戻る。もちろん、単発でムーンライトスターのサポートメンバーとして活動することはあるけど、もうほとんどミアシスで活動することがメインよね。
それでも、今日は東京にいる。もちろん、ムーンライトスターの活動で。
久しぶりにムーンライトスター、サンシャインのメンバーと会う気がする。私のスケジュールの関係で、なかなか東京に来られなかったから。
そして今日は、お昼の生放送の番組で、ゲストとしてムーンライトスター&サンシャインが呼ばれている感じ。もちろん、宣伝の時間もしっかりともらっていて、曲も披露する。やっぱり、曲は〈ダンスフロア〉だから、少し暴れられるかなって思っているくらい。時間もあるようなら〈あなた〉も披露したいと橋爪さんは言っていたけど、ちょっとそれはかなわない。
「ヤッホー、美桜ちゃん。今日も朝一新幹線お疲れ様」
新幹線から降りて、いつも東京を案内してくれる萌奈ちゃんと合流するために、乗り換え改札を出たところで待っていると、その萌奈ちゃんが私のほうに駆け寄ってきた。
「おはよう、萌奈ちゃん。ちょっと久しぶりだったからだいぶ中で寝てたけどね。ちょっと寝ぼけてて頭回ってないし」
「そうなんだ。まぁ、スケジュールの都合だから仕方ないよね。あっ、そうだ。萌奈ね、単発なんだけど、ドラマの話が来たんだ。もちろん、私の名前で。しかも、主演が虹谷理恵さん。ヤバくない?ちょっとテンション上がっててさ」
「へぇ、いいじゃん。まだそれくらいの知名度が残ってるってことだよ。いいなぁ。わたしもドラマとか出ってみたいな。面白そうだし。あっ、そういえば、理恵さんともしばらくご飯行けてないな。まぁ、向こうも忙しそうだしなぁ」
「えっ、美桜ちゃんと虹谷さんってお友達?」
「まぁ、そうかな。デビューシングルのときにたまたま知り合ったって言ったほうがいいのかな。まぁ、そのことでミアシスのメンバーからはしっかりと怒られたけどね。今度、いつご飯行けるかな。また誘ってみようっと」
「ほんと、美桜ちゃんって顔が広いよね。だって、競泳選手とも知り合いでしょ?あと虹谷さんとも知り合いだし、いろんな業界の人とつながってるもんね。うらやましいよ」
「まぁ、行っても、広く浅くだけど」
「それでもだよ。そこからいろんなところに広がっていくしさ」
そんなことをしゃべりながら、橋爪さんが決めた集合場所に到着。っていっても、駅からすぐのところにあるテレビ局なんだけどね。そして、集合場所には、私たちがいつも早くつきすぎて、いつも通り誰もいないっていうね。ということで、近くの広場にあるベンチで座って二人で待つことに。その間に、奈緒美さん名義のSNSをいくつか更新しようっと。
「あっ、あれ、萌奈ちゃんじゃない?」
声がするほうを見ると、保育園か幼稚園に向かう途中と思う小さい女の子が母親に手を引かれながら歩いていて、こっちを指さしていた。
「そんなわけがないでしょ。そんなに簡単にミライが会える人じゃないんだから」
何かの拍子で萌奈ちゃんのことが好きになったのかな。でも、「元」がつくけど、トップアイドルだから、手の届かない存在になっていたのかもしれない。
うらやましい気もするけど、萌奈ちゃんはそれがプレッシャーに感じていたんじゃないかな。
そんなことを思いながら、萌奈ちゃんのほうをちらっと見ると、少し目を伏せて顔を合わせないようにしていた。握りしめた拳を震わせながら。
「どうかし……」
「ごめん美桜ちゃん、少し外していい」
問いかけようとしたその時、萌奈ちゃんがつぶやくように言って、逃げるようにふらふらとこの場を離れた。
何かあったんだろうか。今の感じだと、思い出したくない何かがフラッシュバックしたのだろうか。
「あら、美桜ちゃんおはよう。今日は一人?珍しいわね」
萌奈ちゃんがふらふらと立ち去った後、ちょうど入れ替わるように橋爪さんが姿を見せた。
「あっ、橋爪さん。おはようございます。えっと、萌奈ちゃんも一緒だったんですけど、小さい子の姿を見た瞬間、どこかに行っちゃって……」
「あ、あら、そう」
少し疑問形に流そうとした橋爪さんだったけど、その違和感を見逃さず、私は橋爪さんに聞いてしまった。
「なにか事情を知ってるんですか?」
「少しね。ちょっとややこしい事情があって……。あの子がホワイトマーガレットをやめた本当の理由って知ってるかしら?」
「いや、もう一度大学でやりたいことを集中してやりたいとしか聞いたことがないです」
「やっぱり、それだけよね。でもね、あの子、本当はホワイトマーガレットを脱退するつもりはなかったのよ」
意外な橋爪さんの言葉にびっくりする私。でも、本人からは、円満で未練もなくやめたって聞いたけど……。
「……うーん、なんていうんだろう。簡単に言えば、ファンに嫌われたって言い方は語弊があるかもしれないけど、熱狂的な萌奈ちゃんがファンのもとから離れて行ってしまったからっていうほうがいいかもしれないわね」
萌奈ちゃんがファンから離れる……。この言葉が私の口から零れ落ちたのは間違いない。この場には私と橋爪さんしかいないんだから。
拙いお話ではございますが、なんとか100話に到達致しました。
これからもまだまだお話は続いていきます。どうぞお楽しみください




