06 対立
Side:直樹
神国へ戻った俺たちは冒険者として王国へと潜入した。
神国の魔窟では物足りない俺たちがさらに強くなるため、敵地でもある王都の魔窟でに深く潜ることになった。
だがその目論見は外れてしまう。
王国で一番発展しているはずの王都の魔窟でさえ、最深部に軽々たどり着いてしまう。
どれだけ自分たちの力がチートなのだと思ってしまう。それでもあの魔王には勝てそうにないというのだがら、どんだけ規格外なのだろうと悩みは尽きない。
だが早くレベルと上げて強くならなければ、いずれ神国にも魔王の手は伸びてくるだろう。
俺たちは一旦神国に戻ると、今後についてセイリウ様に相談することになった。
「そうでしたか。難関とも言われている王都の魔窟でさえ、皆様方にかかれば軽々と踏破できてしまえると……」
「はい。皆、ソロでも難なく最下層までたどり着けるという程度で……これ以上レベルを上げるなら4人で訓練し続ける方が楽にレベルが上がります。ですがそれだと実践的な動きができずどうしたら良いものかと……」
俺の言葉にセイリウ様は何やら考えているようだ。
この件についてはフェリルさんやコーディナルさんにも相談しているが、良い解決案が見つからなかった。
一応魔国の方はさらに強い魔物が出る魔窟があると聞いた事があるそうだが、果たして魔国に冒険者として長居することが得策だろうかと悩んでしまっていた。
「では、セレネ様に相談してみましょう」
スサク様からそう返事が返ってきた。
「セレネ様というと、神託を頂いた伝道師様ですね」
「そうです。神託を頂けないか確認してみますので、暫くお時間を頂けますか?何かありしだいお声がけいたしますので」
「分かりました」
こうして俺たちはセレネ様の神託を待つことになり、少し離れた草原へと足を運ぶ。
早苗に『結界』で俺と順平を中心に広く覆ってもらう。それを加奈子が王都の魔窟で大量に手に入れた魔石をつかった強化装置で強化させた。
順平が魔法で、俺は剣を魔力で強化して戦う。
途中流れ弾で結界にヒビが入るが、それは早苗が魔力を注ぎ修復する。加奈子も強化装置を次々に作成して多重に強化してゆく。俺と順平が傷を負えば即座に早苗から『回復』が飛んでくる。
こんな訓練でも4人が少しづつではあるがレベルが上がってゆく。
自分たちのことながら本当にチートな能力だと思う。
だが時間は無駄にできない。
少しでもレベルを上げ、魔王を倒さなくては……それが俺たちがこの世界に召喚された意義なんだ。そう思って剣を持つ手に力を籠めた。
幸いなことに次の日にはセレネ様から新たな神託を受けたとスサク様から伝言を受け、急いで王座の間へと参上する。
予想通りではあったが魔国の中心都市、魔都の魔窟の最深部で鍛え上げたのち、魔王を討てとの神託が下ったとのこと……どうやら俺たちが魔都で活動するのに支障は生じないようだ。
そして俺たちは再び敵の本拠地へと乗り込むこととなる……
Side:真司
「真司、大丈夫?」
「あ、ああ……また神様からの面倒事が回って来てな……」
アイテールから新たな召喚者たちのことを聞いた俺は、すでに起きていたのか心配そうに俺を見ていた真理に簡単にその内容を話すと、その日のうちにリザと一緒にエステマに相談に行くことにした。
話を終えると「きっと魔都の魔窟に来るだろうな」とエステマに言われた。俺も多分そう成るだろうと思っている。
修行するなら魔都の魔窟が最適だから、ステータスなんかも偽装してでもやってくると思われる。急成長している冒険者がいたら直接『魔眼』で見ておいた方が良いと思った。
茉莉亜やイザベラ、クリスチアたちも交え暫く雑談をしている間に、王都の冒険者ギルドに確認を取ってもらう。
「何日か前、最下層のものと思われる品質の魔石がいくつか納品されたらしい。見慣れない4人組のパーティだったそうだから多分そいつらだろう。この調子ならすぐに魔国に行きそうだな……魔窟前で毎日張り込みしてたらどうだ?」
文官からの報告を受け取ったエステマが笑いながら茶化してくる。
「毎日張り込みとか無理だって。だがもう王都の魔窟最下層に行けてるのか……すぐに魔都に修行の場を移しそうだな。ギルドには監視しておくよう言っておくよ。見慣れない強い冒険者がきたら報告してもらおう」
やはり俺が直接見るしか方法がなさそうだと思いつつ、周りを見ると真理と茉莉亜が何やら盛り上がっているのに気付く。
「楽しそうだな真理、何やってるんだ?」
「ん~?新たな娯楽の創造?」
そう言いながら神に書いた落書きを見せてくれた。
子供の落書きのような感じだが、よく見ると漫画のコマ割りのような感じになっている。
「漫画?」
「そう!この世界にも画家さんとかがいるだけど、その卵さんもいっぱいいるんだって。だから漫画を広めたらいいかなって思って。茉莉亜お姉ちゃんと見本になるイメージを膨らませてた」
「それは面白そうだな。なんなら漫画塾でも作ったらどうだ?」
「それいいね!」
エステマも真理の書いた紙を見て興味がある様子だった。どうやらこの世界にも漫画ブームが来そうだ。俺も楽しみではある。
それからは新たな娯楽の開発会議に移ってしまい、結局冒険者ギルドからの連絡を待つことに決め、大勇者たちの件は終了となった。
魔都に戻った俺は、ギルドからの情報を待ちつつ、通常業務をこなす毎日に戻ってゆく。
丁度その頃、鍛冶組のオルセンや錬金組のフロイトスたちに提案していた、戦闘補助用の魔道具が完成したと言うので、真理と一緒に工房へと足を運んだ。
「おお。良いなこれ!」
「私もこれほしい!多分エステマちゃんやお姉ちゃんも欲しがると思うよ!」
俺よりも真理がかなり興奮した様子で新しい魔道具を操作している俺を見ている。
新たに完成したのは魔法の袋の改良版、セットした装備を入れる小さなボックスのようなものが3つセットになって腰に装着できるもので『魔装の箱』と名付けておいた。
スイッチを魔力を籠めて押すと瞬時に今着ている物とその中の物が入れ替わる便利な魔道具であった。
しかも装着時には全身に魔力の光が飛ぶので、裸を見られることも無い。これなら女性陣も利用可能だと試作を繰り返し、やっと完璧なものができたといくつか作らせていた。
スイッチ一つを取っても、空の箱や下着のみ入れておいた箱のスイッチを間違えて押して素っ裸だったりパン一になったりという事もあった。
収納時の形状や位置を記憶することでその通りに着脱するということを思いつくまでは、旨く着ることができずに服が飛び出るだけでやはり素っ裸の状態になったりと、かなり大変だった。
そんな苦難の果てにやっと確実に着脱できる完成品を作り上げることができた。
すでに設定済みだった俺用の魔装の箱を操作して入れ替え具合を再度確かめる。フル装備用、修行用、就寝用と記憶してあるのだ。どうしても一番最初の記憶時にはマッパになってしまう事については諦めている。
何度か試したところで新たな問題に気づく。
普段着については洗濯しなくてはいけないので、結局は着替えるために自分で脱いだりしなくてはいけないと。
こればかりは仕方ないと思ったのだが、フロイトスが浄化機能はすぐに付けれるというので、すぐに取り付けをしてもらい調整をしてもらった。
これで今着ている分の私服、ボックスには予定通りフル装備用、修行用、就寝用を入れることで4つをローテーションできることになる。
たまには趣向を変えて私服用をもう1セットあれば私服の入れ替えは十分だという結論になった。
そして真理が興奮しながらすぐにさらなる量産をお願いしていた。
浄化機能を備えた完全版は両脇に付けて普段着を6組とフル装備でローテーションするのだと30セットほど発注していた。
真理は「もちろんエステマちゃんたちにも配るんだよ」と言っているが、女性のおしゃれへの情熱は凄いなと改めて思った。
それから10日後、4人組のパーティがあっという間に魔都の魔窟のかなり深い部分に潜っているとの情報が入ってきた。
俺は真理と一緒にギルドを訪れると、ちょうど強い魔力を纏った4人組がギルドの食堂で食事中だったことに気づく。受付のギルド員に話を聞くとやはりその4人組が最下層に近い層からの物と思われる魔石が納品されたと言う。
そんな冒険者パーティが剣士、魔法使い、僧侶、盗賊と基本職だという事にギルドの職員も違和感があると言う。通常、ある一定の成長をした冒険者は、クラスチェンジというジョブの変化があると言う。
剣士であれば重剣士とか魔剣士、聖剣士などになったりする。
一人ぐらいそう言った上級職にクラスチェンジしていない限り、魔都の魔窟に潜るのは難しいと教えてくれた。確実に偽装の魔道具を装備しているのだろうと。
俺はこっそり『魔眼』をつかうと、初めての事であるが『魔眼』が弾かれてしまった。俺の『魔眼』により覗こうとしたのを感じたのか、ちょっと性格がきつそうな女性がこちらを少し不機嫌そうに睨んでいる。
仕方なしに4人に近づきその女性に声を掛けた。
「少し話せるか?」
「なんですか!」
「さっきはすまなかったな。君たちが最近頭角を現しているパーティだっていうから、鑑定しようとしちゃってさ。うまく弾かれちゃったけどな」
俺の言葉にその女性以外の3人が少し身構える。
「俺は一応この国を預かっているいわゆる魔王だ」
その言葉になんら反応は無いようで、どうやら4人も俺が魔王だという事は知っているようだ。
だがこれで確定だろうと思ってしまう。
「なあ、君たちが新たに召喚された大勇者御一行か?」
その瞬間、4人は身構え後ろへと後ずさる。だが食堂の壁に阻まれた……かに見えたが、ローブを着た方の男が壁を綺麗に円形にくり抜くように消滅さえ、外へと出てしまった。なんとも迷惑な話だ。
「そう警戒しないでくれ。平和主義なんだよ。分かるだろ。同じ日本人なら……」
「同じ日本人?一緒にするなよ魔王!」
恐らく大勇者というやつであろう男が俺をにらみながら言う強い言葉に、やっぱり説得無理じゃね?と心が折れそうになる。
「俺は魔王だが、人も魔人も魔物でさえも……共存できると思ってこの国を治めてるんだがな」
「……今は引く!この国の民を洗脳して何をしようとしてるか知らない……だが絶対にお前を倒しにくるからな!」
そう言い残して4人はどこかへと消えてしまった。
転移魔法までノータイムで仕えるのかよ……スキルなのか魔道具なのかは分からないが、4人の成長の速さに冷や汗が止まらなかった。
それに男の言っていた洗脳という言葉にも引っかかる……女神からそう伝えられたのだろうか?もう少し話を聞きたかったが仕方ない。
あとせめて食堂の壁を直して行ってほしかった……
そう思いながらまた、ため息をついていた。
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