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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第四章・魔王vs勇者

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01 勇者

Side:???


「ここ、どこだ?」

俺は突然石造りの壁に囲まれた部屋に視界が変わり、現実味の無いことだと思いながらも困惑していた。


ついさっきまで渋谷107のゲーセンでいつものメンバーで遊んでいたはずなのに……そう思いながら周りを見渡すと、一緒に居た3人も同じように困惑しているのが見えた。


さらに周りを見渡すと、兵士のコスプレをした鎧姿の男たちが俺たちを取り囲んでおり、どうしても身の危険を感じてしまう。

正面にはゴテゴテした高そうな椅子に座る中世の王様のようなコスプレのおっさんと、洋画で見るような住む世界が違うような美しいお姫様の恰好をした女性がいて、こちらの様子を窺っていた。


本当に綺麗な人だな……そう思ったところで王様コスのおっさんが話を始めた。


「おお!ようこそおいで下さいました!勇者様方!」

何を言ってるんだ?突然始まるドッキリのような光景に首をかしげる。キョロキョロとカメラなんかが無いかと探してしまう。


だが、あまりに現実離れしてるとも感じている。

いくらドッキリでは?と考えても突然自分たちの居場所が変わったのだ。この世の科学じゃ証明できない現象だ。まるで異世界転生のような……いや、夢だな。夢でないなら有りえない状態だ。

でもさっきまでは外にいたのに、なぜ俺は夢を見ている?


「おい!お前たちは何者だ?俺たちに何をした!」

「そうよ!早く元の所に返して!」

気付けば順平が兵士コスのひとりに掴みかかっていて、加奈子もそれに追随するように語尾を強めている。


順平は片手で軽々とその兵士を持ち上げている。

順平はあんな力があったのかと首をひねる。


順平が首を掴んで持ち上げているので兵士はバタバタと苦しそうにしながら、両手で順平の手をつかんでいる。俺は順平たちを止めようか、それとも一緒になって問い詰めようか考える。


「ねえ直樹、ここどこー?」

そして相変わらずのマイペースで俺の肩をチョンチョンする早苗を見て、やっぱ早苗とイチャついてようかな?と思った。


不思議なほど心が落ち着いているのはやはり夢だからだろうか?


「混乱するのも当然です。ですが私たちの話を聞いていただけますか?」

そう言って先ほどの姫様姿の女性が、少し高くなった場所からゆっくりとこちらへと降りてくる。


本当に綺麗だ……俺はその姿に心を奪われながら見入ってしまう。


「いてっ!」

そして隣にいた早苗に腰をつねられる。横っ腹が千切られるんじゃないかと思うぐらい尋常じゃなく痛く声が出てしまった。


慌てて早苗の顔を見ると、一見いつものぽやっとした笑顔なのだが少しだけ目が怖い。


「早苗が一番可愛いよ」

俺の言葉に早苗は満足したのか俺から目を離し、姫的な女性に目を向ける。


順平たちも隣に戻り大人しく話しを聞くようだ。

さっきまで掴まれていた兵士は座り込みゴホゴホとしながら呼吸を整えた後、また直立の姿勢に戻ってゆく。姫的な女性はそれをチラリと確認し、また話し始めた。


「私は、こちらのデウルズ神国の神王、セイリウ・デウルズの娘、スサク・デウルズと申します……あなた方はこの世界を救う勇者様として召喚をさせて頂きました」

勇者?召喚?やっぱりこては異世界召喚ってやつなのか?


「まずは皆様のお名前を教えて頂きますか?」

深々と頭を下げるスサクという姫的な女性の言葉に、まさか異世界転生とか漫画じゃあるまいし……そんなことを考えながらも、俺たちは成り行きに任せ自己紹介をすることになった。


「田中直樹だ。まずはこの世界の事を教えてほしい」

戸惑う3人の代わりにいち早く自己紹介をしながら要望を伝える。


「武田順平。早く元の場所に戻してくれよ!」

不貞腐れながらも順平が続く。


「白田早苗です。お姉さんはお姫様なの?」

「もう。早苗は……私は黒木加奈子。早苗に何かしたら承知しないからね!」

早苗の気の抜けた自己紹介の後、加奈子が早苗を後ろ抱きしながら、警戒した視線を目の前の者達に向ける。


「ありがとうございます。まずは現状を説明させていただきます」

そう言いながらまた深々と頭を下げるスサクという女性。


「今、この世界は魔王に支配されようとしています。つい最近まで抵抗していた魔道兵器大国は、魔王と、そしてそれに従わざるえなくなった勇者、そして聖女たちによって滅ぼされました」

思った以上に侵略されてる状態らしい。


「どうか、どうかあなた方のお力で、この世界をお救い下さい!」

そのスサクというお姫様的な女性は、神王と呼ばれたおじさんと共に深く頭を下げている。


俺は王様の王冠越しに見える剥げた頭を見ながら、まだ夢なのかもしれないと思ってしまう。

だがしかし、朧気だがついさっきまで俺たちは白い空間に立っていて、女神みたいな存在に何かを言われた気がする。そんなバカみたいな思いが頭に浮かんできて考え込んでしまう。


「直樹、大丈夫か?」

俺は順平に肩をゆらされ意識を目の前に戻す。


「ああ、大丈夫だ。だが、バカみたいだとは思うが……さっきまで女神的な何かと話していたような気がしてな……」

「そうか。大丈夫だよ。俺もなんとなくそんな感覚があるから……だがまずはこっちの話を終わらせておかないとな。強制的に召喚されたのはムカつくが、衣食住は一生保証してくれるらしいぜ!」

どうやら俺が考え事をしている間にも話は進んでいたようだ。


「後で補足を頼む」

俺の言葉に順平が軽く手を上げ「了解」と言うとそのまま前を向く。


俺も同じように情報を得ようと前を向き、多分本物なのであろうセイリウという王とスサクという姫の話を聞き入った。まだ混乱している頭の中を少しづつ整理しながら……


◆◇◆◇◆


結局のところ、俺たちは良くあるファンタジー物の漫画の様に勇者として召喚され、この世界の魔王を倒せということらしい。そして魔王を倒したとしても元の世界に戻すことはできないとまた深く頭を下げられた。


その為、不本意ではあるがこの世界の情報が必要であることを理解する。


まずはこの世界にはジョブと呼ばれるものがあり、転生者はほとんどが強大な力を有する存在なのだと言っていた。そして言われるがままにステータスと唱え『ジョブ・大勇者』と書いてあり恥ずかしくなってしまう。

大勇者というのは、勇者を超える勇者という伝説上のジョブらしく室内の人達に大喜びされる。夢ならそろそろ覚めてほしいと本気で思った。


また、このステータスにレベル〇〇と言った表示は無いが、魔物と戦ったりするとちゃんとレベルが上がり、能力値が上がったり新たなスキルを覚えることもあると言う。

魔法と呼ばれるものを存在しており、練習次第で誰でも使えるのだが、魔力が少ないと強い魔法は使えなかったり、回数を多くは使えないらしい。本当にゲームの世界のようだ。


再度ステータスを確認すると、俺のスキル欄に『異世界語』『神の加護』『大勇者の理』というのがあった。

異世界語は会話が通じる定番のやつだな。神の加護は成長促進というこれも良く出てくるやつだ。最後の『大勇者の理』だが『闇を切り裂く剣技を操り聖なる光の力で魔を滅る』と説明があった。

俺はどうやら剣をメイン武器にして戦うらしい。


魔法も使えそうなので、ファンタジーらしく剣と魔法を操り俺がみんなを率いて魔王を倒すのかも、と柄にもなく少しだけワクワクしてしまう。


他の3人も定番の『異世界語』『神の加護』は所持していた。

そして能力値と呼ばれる部分は、すでにこの世界の平均値をはるかに上回る数値だという。どうりで先ほどの順平が軽々鎧を着た人を持ち上げられるわけだ。力加減を間違うと人殺しになりそうで怖い。


順平の方はと言うと、ジョブが大魔導士で固有のスキルは『大魔導士の理』となっている。『大魔導士の理』は『自然魔法を自在に操り無限の魔力で敵を討つ』となっていた。もしかしたら順平は魔法が使い放題なのかもしれない。


早苗のジョブは大神官で『大神官の理』があった。『神聖術により聖なるものを癒し魔を払う神の力』となっているので、みんなを回復したり魔王にも強い効果のあるスキルなどを覚えるのかもしれない。


加奈子のジョブは大賢者と学年一位という肩書に相応しいジョブを得ていた。やはり固有スキルは『大賢者の理』であった。

『森羅万象を司りあらゆる魔道具を生み出す創造の力』となっていたのをスサク姫に伝えると「瞬時に強力な魔道具を生成できるのかもしれません」とほほ笑みながら喜んでくれた。


また、魔王討伐の為に如何なる支援も惜しまないし、無事魔王を倒せばこの国の王となっても良いと言ってくれた。


もちろんそんなものは要らないと断ったが「それなら姫を勇者直樹様に!」とセイリウ神王に言われたので即断った。即座に断ること、これ大事。じゃないと早苗が何をするか分からないから……

恐る恐る早苗を見るとニッコリとしていたのでセーフだったようだ。


王はすぐに「では順平様に!」と矛先を変え、言われた順平も頬を緩ませたが、即座に加奈子にケツに蹴られ慌てて断っていた。スパーンと凄い大きな音が出たので、周りの兵やたちがざわついていた。


「だめだぞ順平、俺のように即NOと言えないとな。せっかく俺が見本を見せたというのに……」

「たはは」

頭を掻き苦笑いする順平だったが、暫く加奈子の機嫌を直すために頑張らなきゃならないだろう。まあ頑張ってくれとしか言えないな。


俺たちの様子を見て、スサク姫が俺と早苗が、順平と加奈子が付き合っているのだと理解してもらえたようだ。だが「貴族なら重婚もできるのでどちらでも妾として貰って頂ければ」と言い放った。

もちろん二人で声を揃え即座に断った。

さすがに二度目の誘惑だ。ここで躊躇するなら、後で冷たい目で見られるのは目に見えている。スサク姫は「そうですか」と少し残念そうに顔を下げていた。


そしてこの国の事も説明を受けた。

貴族や市民の暮らしとか、貨幣価値、冒険者ギルドや商業ギルドなど、当然ながら国の名や魔王との戦いの経緯なども説明を受ける。


ここは南にある小さな島国、デウルズ神国の神都ピュロスの城内の玉座の間という場所で、現状としてはここより一番北の大陸、魔国を支配しているのが魔王だと言う。


この島の北西に最近まで抵抗していた強力な魔道兵器を持つ帝国があり、遂に陥落してその国の帝王は隷属されて魔王に従っていると言う。

北東には勇者が女王として治めている王国があるのだが、王国は早くから魔王の手下としてその勇者ともう一人の聖女が従っており、帝国を落とす際にも協力していたという状況であるらしい。


そして魔王は転生者で、もう一人の転生者である聖女を娶っていると言う。


現在確認されている転生者は、その魔国の魔王と聖女、さらに先ほど話に出た王国にいる聖女と、後一人、生者というジョブ持ちの女性がいるのだと教えてもらった。俺たち以外の転生者はみな敵側のようだ。


ここまで聞くと、すでに他国も魔王の手に落ちていることを理解する。無理ゲーじゃないかと思ったが、俺たちは4人全員が伝説のジョブらしいので本当に漫画やゲームのように魔王を倒してしまうかも、と思ってしまう。


そして試しにと手に魔法の炎の出現させることに成功し、その炎の指を焼くような熱がこれが現実であり、ドッキリでも夢では無いのだと俺は思い知るのだった。


こうして俺たちはこの世界に災いをもたらすという魔王と、それに従う者たちを相手に戦うことが求められたことになり、輪になってみんなの考えを聞く。


「みんな、どうする?」

「まあ、面倒だがやるしか無いんだよな」

「仕方ないよね。帰る方法が無いんだから……早苗は私がちゃんと守るから安心してね」

「ありがと加奈。でも直樹がやるなら私もやるんだよねー」


それぞれが不本意ながら魔王と戦う意思を示したようだ。


それ以前に元の世界には戻れないと言われたからには、俺たちには魔王を倒すという選択肢以外が残されていないというのが実情だ。

それぞれが不安を胸に、俺たちの異世界生活が始まった。


――――――

田中直樹 ジョブ:大勇者

力1000 硬500 速500 魔500

パッシブスキル 『異世界語』『神の加護』『大勇者の理』

――――――

『異世界語』異世界人特典・どんな言葉も理解可能

『神の加護』神の寵愛・成長速度促進

『大勇者の理』闇を切り裂く剣技を操り聖なる光の力で魔を滅る

――――――


――――――

武田順平 ジョブ:大魔導士

力500 硬500 速500 魔1000

パッシブスキル 『異世界語』『神の加護』『大魔導士の理』

――――――

『異世界語』異世界人特典・どんな言葉も理解可能

『神の加護』神の寵愛・成長速度促進

『大魔導士の理』自然魔法を自在に操り無限の魔力で敵を討つ

――――――


――――――

白田早苗 ジョブ:大神官

力500 硬500 速500 魔1000

パッシブスキル 『異世界語』『神の加護』『大神官の理』

――――――

『異世界語』異世界人特典・どんな言葉も理解可能

『神の加護』神の寵愛・成長速度促進

『大神官の理』神聖術により聖なるものを癒し魔を払う神の力

――――――


――――――

黒木加奈子 ジョブ:大賢者

力500 硬500 速700 魔800

パッシブスキル 『異世界語』『神の加護』『大賢者の理』

――――――

『異世界語』異世界人特典・どんな言葉も理解可能

『神の加護』神の寵愛・成長速度促進

『大賢者の理』森羅万象を司りあらゆる魔道具を生み出す創造の力

――――――

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