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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第三章・魔王vs魔道

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08 開幕

婚式当日。

魔都の城から少し離れた場所。


そこには見知った者から初めて見る顔など、たくさんの人達が集まり、皆が俺たちを祝ってくれる。


隣には散々吟味した真っ白なドレスと、質素ながらもドレスにしっかりと華を添えるイヤリングとブローチが輝いている。その姿に何度見ても見惚れてしまう。


俺の右肩にはタキシード風の服を着こんだミーヤが、真理の左右にはグリとモモの妖精二人がふわふわと飛び回っている。その事からもファンタージ―な異世界であることを認識する。

俺は今日、真理と結婚して幸せになるのだと高ぶる気持ちを抑えるように、そっと真理の手を握った。


「では、これより新郎、古川真司殿と、新婦、真理様の結婚式を始めます!」

今日の司会進行を買って出てくれたレイモンズにより、式の開始が告げられる。


そして……


上空には巨大な魔力を感じ、俺は身構えた。


遥か上空から感じる嫌な魔力の歪みが見える。まるで魔窟の最下層のアレのような圧力を感じ、心がざわついたがその原因がすぐに理解できた。

空から強い光を放たれ巨大な飛行艇が浮かんでいたのだ。


すでに真理は全力で結界を作り出し、それを茉莉亜まりあが『祈祷』で強化する。そして放たれる飛行艇からの光の砲撃……


分厚い結界をガリガリと砕くように進むその攻撃を押しとどめようと無理をした真理はふらりと倒れこむ。


俺は真理を抱きしめそしてリザに真理を預けると、バキンと割れ消えた結界を抜けてきたその光の砲撃に向かって全力の黒い炎を飛ばした。

光の砲撃はさすがに俺の炎には打ち勝つことはできず、そのまま押し返し、飛行艇の前の一部をえぐりならが空へと消えていった。


だがその飛行艇は上部から先ほどよりは小さ目ではあるが、光る何か上へとバラまいている。

弧を描き地面へと大きな音をたて降り注ぐその攻撃は、魔人たちが魔法で必死に迎撃していた。


役目を果たした飛行艇はゆらゆらと落ちながら、光と共に爆発を起こした。


それ自体は大したことは無いようだが、先ほどばらまかれた砲撃により付近の建物などにそれなりの被害が出ていることが見て取れた。


「リザ!真理は?」

「気を失っているだけの様です。魔力を回復させれば大丈夫でしょう」

そう言いながら少し嫌な顔をしながら魔力ポーションを取り出し口に含むリザを見て、こちらは大丈夫そうだと思って周りを見渡した。


魔界にも人族などもかなり増えている。俺の目の届かない範囲まで広がったあの攻撃により、けが人が、もしくは死人が出ていないかと不安がぎる。

全てを魔人たちが対処できていれば良いのだが、と思いながらもまずは近場の被害を確認すべく、魔人たちに調査を命じた。


「なんだって!」

そんな中、エステマの大きな声が響く。


通信具で連絡をしているようで、かなり慌てた様子で話を続けているようだ。


暫くすると話が終わったようで、エステマが怒りをなんとか堪えるように何度か大きく呼吸をすると、怒りのオーラを漂わせてながら俺の方へと歩いてきた。

途中で聞こえてきた「帝国」「砲撃」などをワードで、どうしても嫌なことを想像してしまう。


「やられた!やつら王国にも同じように攻撃をしやがった!」

「そうか……被害は」

「幸い、城の上部がふっとんだぐらいらしい……今は下の方にしか人がいなかったから、それでも破片で多少のけが人は出ているようだ!」

「そうか……城は強化の魔道具で保護していたんだったな?」

「ああ。だから最低限の被害で済んだようだ。だが城の上部に誰かいたなら確実に死んでいただろう……」

俺は何とも言えず、歯を食いしばる。


王国の城は、以前メビオスに破壊されてから、考えられる限りの強固な作りにすべく、アダマンタイトやら金剛石やらをふんだんに使って日々防護魔法もかけたりしている。

だがさすがに今回のような攻撃であれば、完全に防ぐことはできかったのだろう。


「とにかく、マリアを連れていくぞ」

「分かった。俺も行ってやりたいがここも何とかしなきゃだからな……回復を使える魔人たちが王国もに何人か待機しているはずだから影鼠かげねずみ経由で城に集まるように言っておくよ。力仕事でもいいから使ってくれ」

「ああ!ありがとう!」

エステマは茉莉亜まりあとイザベラ、クリスチアなどと一緒に竜便で王国へと向かった。


俺も手早く影鼠かげねずみに指示を出し、その場にいる回復持ちの魔人に近辺を回ってけが人がいないか確認して回るように命じた。

そしてリザの膝枕で体を休め、すでに回復しているであろう真理の元へと向かった。


「真理、大丈夫か」

「うん大丈夫……かな?」

「無理すんなよ。それよりも良く咄嗟に結界だして守ってくれた。ありがとう」

俺の言葉を受けて真理が小さく笑う。


「リザ、真理の事頼むな」

「もちろんです」

リザに真理を任せると、俺も多少の手は貸せるだろうと手当たり次第に破壊された建物などから、埋もれている人がいないか確認して回る。


結局、夕方の空が赤く染まることにやっとすべてを確認し終わり、けが人もそれほど出なかったので少し安心してはいる。

とは言え、あんな方法でこちらに仕掛けてくるとは思ってもいなかった為、今後のことを思うと胸が苦しくなるような感情が溢れ出てきた。


帝国の飛行艇はどこにでも転移できるのか……そう考え出すともうこれ以上黙っているわけにはいかないだろう。王国でも幸い死者はいないようで今現在は魔人たちや茉莉亜まりあによって回復済みだ。

だが次の攻撃もそうだとは限らない。こちらから打って出る必要がある。


その夜、念のためニガルズたちに魔都の防衛を任せ、俺と真理、リザの三人で王国へ出向いた。


「待ってるだけじゃだめだってことだよな……」

城の執務室。粗方の処理を終え、イライラを隠せないでいるエステマに俺は話を切り出した。


「俺もこのままじゃ気が収まらないからな!」

目の前のデスクをドンと叩きながらにエステマが嘆く。


全面戦争……

どうやらこちらから攻め入る必要があるようだ。


「どうする?」

「アイツらはすでに攻撃を始めた。次はいつか分からない。それは明日かもしれない……明日、少数精鋭で乗り込んで帝王をぶちのめす!」

憤りながら話すエステマだが、俺自身もそれが一番良い案だと思ってしまう。


「それしかないよな」

室内にいる他の面々もエステマの意見に無言でうなづいていた。


俺たちは簡単な準備をしてから飛行艇でレイモンズの領土、エラシスへと向かうことを決めた。合わせて赤竜たち戦闘に耐えうる竜種を10体ほど、近くの森へと呼び寄せる予定だ。


帝国の飛行艇が俺らの進路をじゃまするのなら、それらは竜に任せて薙ぎ払わせよう。そのぐらいの覚悟はできている。できてはいるが……できれば最終手段にしたい思いが強く、吐きそうになる。


相手は人だ……人型の魔人を殺すとは違う……

みながそれを認識しているため、その表情は黒く沈んでいた。


◆◇◆◇◆


久しぶりのエラシス領の当主の屋敷。今は少数の執事とメイドにより管理されている。


夜になり、真理と二人でベットに入るが、中々眠りにつくことができない。


「本当に、人を殺すの?」

俺はポツリとつぶやいた真理の言葉に返答することはできなかった。


暫く無言となっていた俺は、その沈黙に耐え切れず気持ちを吐き出してゆく。


「奴らは、罪のない人たちを沢山殺そうとした……幸い死人はでなかったが、次は俺たちの大事な人が殺されてしまうかもしれない……」

「そう、だよね……ごめん」

俺に縋り付くようにする真理の頭をそっと撫でる。


「謝る必要はないよ。俺もできればやりたくないし……」

「でも必要なことなんだよね」

「ああ。あいつらは死ぬまで止まることはないかもしれない。説得はする。だがもしもの時は……」

俺は真理を抱きしめ、改めて誰も失いたくないという思いを強くする。


そして人を殺すために他国へ攻め入る覚悟を決めた。


◆◇◆◇◆


Side:アイテール


「パパー。何見てるの?」

お馴染みの白い空間には金色に輝く長い髪と幼くも男性を引き付けるような美貌を持った少女が大きな瞳を輝かせ、あの自称神に抱き着いていた。


「ああ、カリス。もう東大陸の方は良いのかい?」

そのカリスと呼ばれた少女を抱き上げ、目を細めながらそう尋ねる。


「んとね、東大陸の方は大分安定してるよ。安定しすぎてちょっとつまらないけどね」

「まあそんなもんだよ。でもたまに面白いことも起こったりするから、細かい場所まで観察しているといいよ」

「ふーん、で、パパは今何してるの?」

「ああ、西大陸では今、人間たちが大きな争いをしようとしているみたいなんだ」

「ふーん」

あまり興味が無いようで、足をぶらぶらさせならがアイテールが目の前に出している映像を見ているカリス。


「魔王の子が召喚されたんだけど勇者と手を取り国を作って交流してるんだ。それを許さない人間もいて争いをはじめてしまったようだよ」

「そうなんだ!パパはどの子がお気に入りなの?」

魔王と勇者というワードにピクリと長めの耳が動き、反応を見せるカリス。どうやらこの手の話が好みのようだ。


「それはもちろん魔王の子だよ。何度かここにも呼んでね。彼が生きのこれば暫く安定するとおもうんだけど……」

「パパはどの子を召喚したの?」

映像を指差しながら質問するカリス。


「パパはね、大陸の王が召喚しようとした聖女と一緒に、魔王が召喚されるように少しだけ力を貸しただけなんだよ」

「へー、そうなんだ。じゃあその魔王、あっ、真司って言うんだね。その真司に残ってもらえば西大陸も安定するってことなのかな?」

「そうだね。人の寿命の100年程度は穏やかな世界になるんじゃないかな」

「そうなんだー、でも100年か……」

右手を顎にあて小さな体に似つかわしくないポーズで何かを考えているカリス。


「じゃあ私、そろそろ戻るね」

アイテールの腕からピョンと飛び降りると笑顔を見せて手をふるカリス。


「ああ、カリスも東大陸が安定しているならまた会いにきなさい。パパも寂しくて寿命が100年は縮んでしまうからね」

「わかったー」

そして一人取り残される自称神。


一応自分で作り出した娘のような存在のカリスに、東側の大陸を管理させてはいるものの、念のためと自身でも観察することは怠ってはいない。今のところ安定している状態であることを確認する。


「あの子は相変わらず自由奔放だね」

食い入るように話を聞いたと思ったらすぐに帰ってしまったカリスを思い、深いため息をついた。

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