表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第三章・魔王vs魔道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/71

07 浄化

湖の毒を何とかしようと真理に連絡を取る。

通信具を操作するとすぐに真理の声が聞こえてきた。


『真司、今日は王国で依頼じゃなかった?』

「そうなんだけどな、どうやら浄化の必要があるから王国に来てくれるか?青竜に影鼠かげねずみで場所は伝えておくから」

『うん分かった』

「ちなみに可愛い妖精もいるぞ」

『えっ!すぐ行くね!』

真理が嬉しそうな声を上げ、通信が切られた。


その後、青竜に乗ってやってきた真理が、俺を発見するやいなや上空から飛び降り、俺にキャッチされてから妖精たちの元へ行き、もみくちゃにしていた。


「魔王の嫁!」

「さらなる苦難!」

「なにこれ!面白いね。持って帰りたい」

「まあ同意するが、それは本人たちに聞いてくれ。俺もお持ち帰りして癒されたいがまずは浄化の方を頼むよ。毒蚊って虫の毒で湖がやばい」

妖精に頬ずりしながら俺の言葉を聞いた真理は、名残惜しそうに妖精から離れると湖へと近づいていった。


「なんか、紫だね」

「色がやばいよな」

真理は湖に向かって膝をつき祈る姿勢をとった。


ふわっとした暖かい風を感じ、次の瞬間には湖面が真理の方から向こう側へと光が走り抜けたように見えた。

アッと言う間の出来事であったが、どうやら湖は浄化されたようだ。綺麗に透き通った湖面が奥まで続いて見える。


真理の『浄化』は、メビオス戦の後に発現したスキルだ。人に対しての状態異常回復からランクアップしたようで、物や今回のような水の浄化などにも使えるスキルだ。泥水だって浄化後にはミネラルウォーターのように飲めてしまう。

一応、浄化の魔道具は存在し、今までも風呂に入れない時とか、手軽に衣服を綺麗にする時などに漬かってはいた。だが『浄化』スキルについては汎用性もその出力は段違いである。


「これで良い?」

「ああ、助かったよ。ここに大量の毒蚊が湧いててな。粗方駆除したんだが水はどうしようもなかった」

「なるほどね。じゃあ私は……妖精ちゃんと交渉するね!」

「いいけど、連れてくのは少しまってくれよ?まだやることがあるんだ」

「分かった。けど何やるの?」

「それはその……色々あるんだよ。複雑な依頼が……」

俺の返答に首をかしげている真理だが、すぐに興味を失ったのか、妖精たちに話しかけている。


結局二人は大量のお菓子につられるように魔国行きが決まり、後から俺と一緒に魔国に、ということとなった。

真理は上機嫌になりながら、上空を旋回しながら赤竜とイチャついている青竜の元まで飛翔してまたがると、魔国へと帰って行った。


「魔王の嫁!強すぎ!」

「でもお菓子おいしい!」

「まあそれは良いとして、いいのか?蚕の管理もあるんだろ?俺も嬉しいが……」

妖精は互いを見ながら首をかしげる。


「仲間たくさん。まかせる」

「出てこい!見てるの知ってるぞ!」

二人の妖精の声に合わせ、わらわらと20人ぐらいの妖精たちがどこからともなくやってきた。


「「「「魔王!」」」」

「「「「殺される!」」」」

「それはもう良いちゅーの!」

また同じような反応をされた俺は早々に話を終わらせるべく、蚕の世話について話をもどした。


新たに出てきた妖精たちが、いつのまにか手に小さな葉っぱの器を持ち、湖面の水をすくってそのまま飛び立っていった。俺も慌てて追いかけると、先ほどの蚕の木箱にふわふわと飛びながら水を与えているようだった。


そして二人の妖精たちは箱の横に置いてあった食料を適当に木箱内に投げ入れている。

俺は慌てて木箱の方に走って投げ込まれた食料でつぶされそうな蚕をつまんで保護しつつ、妖精たちに「つぶれちゃうだろ!」と注意すると、パタンと倒れて足をぴくぴくと震えさせていた。


「おい、それわざとだろ……」

「魔王!怖い!」

「怒られた!死んだ!」

俺はため息をつきながら食料を一旦魔法の袋に戻し。木箱内に入ると潰さないように注意しながら一つづつ出していった。どうやらこの蚕はドンドン増えるらしいので、妖精たちは蚕が多少死のうが気にしないようだ。


それなりの量を木箱内に置いた後、ミーヤから空の魔法の袋を出してもらうと、その袋に大量の食料を移しかえ、新たに出てきた妖精の一人に手渡した。


「魔王!そのまま待て!」

「多分糸出すのすぐ!」

その言葉に従い暫く座り込んでいると、妖精の1人が蚕から何かを取り、そのままクーガーの元にそれを手渡した。どうやらそれが糸の原材料となるのだろう。


「何かあったらクーガー経由で連絡してくれ」

「「「「「「「分かった!食料尽きたら連絡する!」」」」」」

息の合った返事をもらった俺は、最初の二人の妖精とクーガーと共に村へと戻って行った。追加ができたらドンドン運んでくれるらしい。


そして歩きながら名前は無いという妖精の名前を考えてみる。


「お前がグリでお前がモモ。ってのはどうだろう?」

「名前付いた!グリ!グリ!」

「モモ!美味しそうだ良い名前!」

どうやら気に入ったようだ。髪色から付けた単純な名だが分かりやすくて良いだろう。


獣人の国の村まで戻ってくると、さっそく作業所へ案内された。


「おい!糸が手に入ったぞ。早速仕事だ!」

クーガーのその言葉にざわめきながら集まってくるのは獣人たちの子供たちなのだろう。さっきまでこの作業場と呼ばれた小屋で遊んでいた様子の子供たちが、わらわらとこちらに集まってきた。


フワフワした毛並みの子供たちを見てまた癒される。


「なんだ!これだけ?」

一人の虎のような子供の言葉を皮切りに「俺がやる」だの「私やーめた」だの騒がしいのを見ていて、早く子供ほしいなとも思って少し口元がゆるんでしまう。


「多分今日はどんどん糸が入ってくるから、みんなでやるんだぞ!」

そしてまたワイワイ騒ぎ出す子供達。


「子供が気に入ったのなら何人か連れてくか?真司殿は恩人だから2、3人ならメスを持って行っても良い」

「ふざけたことを言うなよ。俺はそんな趣味は無い」

俺がニヤニヤしてしまったからだろうか恐ろしいことを提案してくるクーガーにきっぱりと断りを入れる。こんなの真理に聞かれたら殺されてしまう。


暫くすると、小屋に妖精たちが入ってくると次々に糸の元を子供たちに手渡している姿を見ることができた。


暫くすると作業をしていた子供の一人から、完成したらしいぐるぐると棒に巻かれたかなり長めの糸の束を手渡される。

これでどのぐらいの量になるか分からないが、とりあえず受け取ると小屋の窓越しに移動し、光に翳したりしてみる。キラキラと透き通るようなそれに高級感があるなと感じてしまう。

もちろんよく分かってはいないがきっと高いんだと思った。


暫くそれを眺めている間に次々に完成する糸を20束ほど頂いた。

クーガーの話だと1束で上着を作る程度はあるということで、豪華なドレスなら5束程度あれば十分だろうと言っていた。


この一束で白金貨、つまり100万程度するらしい。

クーガーから「依頼のお礼だからお金は受け取れない」と言われたが、気が済まないので食料支援などを提案したが、どうやらこの糸の販売でこの獣人の国は相当潤っているうえ、大人たちは農耕を主としているため、食料も豊富だとか。


結局、再度エステマに連絡して、10束と引き換えに獣人の国を正式に国と認める約束を取り付け、結婚式にも招待してその時までに国名を考えておくとのことで話がまとまった。

それから少し遅い昼食として、獣人たちのおもてなしを受けた。


大きい肉にスパイスを塗って焼き上げたものや、野菜を丸ごと蒸して甘いソースがかけられているているものなど、野性的な料理が多かったがどれも美味しく楽しい宴となった。

途中、綺麗どころなのだろうか、毛並みの良い女性陣に囲まれ、体を触られたりしたが「そう言うのは要らないから離れてくれ」と拒否すると、残念そうに自分の席へと戻って行った。


「ちゃんと拒否したからな。見てたよな?」と隣にいるミーヤにもしっかりと言っておいた。大丈夫だと思うが最近真理たちとも楽しくやってるようだし、何かの拍子で部分的に話をされると困ってしまうから。


こうして楽しい時間も過ぎ、クーガーたちに別れを伝え、上空を旋回している赤竜に飛び乗ると、王国へと帰ってきた。


王国の城を尋ねると、すぐにエステマの居る執務室に通される。


「戻ったぞ」

執務室のドアを開けると同時にそう話しかけ、魔法の袋から10束の糸を放り投げる。


「おい!大事に扱えよ!」

「いやお前なら落としたりしないだろ」

しっかりと10束をキャッチしたエステマはやや不服そうだったが、その糸の束を光に照らし確認しはじめると少しうっとりとしているようだった。そんなに良いものなのだろうか。


「なあ、お前も結婚するのか?」

「ぶっ!何言ってるんだよ!そんな訳ないだろ!相手もいないし忙しいしそんなまあ俺だってモテるし無くはないけどあるわけないだろ!」

早口で反論がきた。


「レイモンズとか仲良くやってるそうじゃないか」

俺の言葉に動きがとまったエステマ。これは近いうちにありそうな予感がした。


「な、なんだよその目は……」

「まあ、これで依頼はこなしたから、こっちも置いておくから頼むな」

少し顔を赤くしたエステマの前のデスクに残りの10束も置くと、衣装の作成などを丸投げする。真理のサイズなら茉莉亜まりあが知っているというのをリザから聞いていたからだ。


魔国に持って帰ればすぐに真理にばれかねない。

できれば完成までは真理にばれない様に進めておきたい。


その後、妖精たちと一緒に魔国へ戻り、出迎えの真理と熱い抱擁を、しようとしたらが俺の手を躱した真理は妖精たちを自室にお持ち帰りして、メイドたちときゃっきゃとはしゃいでいた。


「まあいいんだけどな……ミーヤ、お前も行ってきていいぞ?」

「ニャー(いえ、私は魔王様のそばに……)」

可愛い事を言ってくれるミーヤを撫でまわし、そっと床に置き目で合図する。


ミーヤは俺の足にすりすりと頬を摺り寄せた後「ニャー」と鳴いて女性陣に向かって駆け出していった。


仲良くやってくれてるのは良い事だ。

そう思いながら夕食までベットに寝ころぶと目を閉じた。


真理のウエディングドレスができたという報告を受けたのはその1週間後である。

その間も俺は装飾品である原石を発掘しに行ったり、食事の目玉となる貴重なキノコの採取依頼を受けたりと忙しかったが、早速真理とリザの三人で王国の城を訪ねた。


早朝に到着したにも関わらず、夕食前まで延々衣装について手直しの案を話し合い、用意していた装飾品を吟味したりと楽しい時間を過ごせたようだ。

俺はそれを横目で見ながらも、ソファーに座り長い時間を多少の苦痛を感じつつも座って待機していた。


こうしてすべての準備が式の3日前には全て整うことが確定し、滞っている仕事をかたずけることを優先して忙しい日々を過ごすこととなった。

全ては真理が楽しんでくれるならそれで良い。


そう思って今日も書類の山と格闘するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ