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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

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17 師匠

地上に戻れる嬉しさと明日からの不安を抱え歩く俺たち。


そして長い道のりを慌てず騒がず進み地上に戻った俺たちは、クリスチアに飛行艇で迎えに来てもらい拠点へと戻ってきた。

女性陣はそのまま新しく作られていた大浴場へとキャーキャー言いながら突入していった。


俺は部屋のお風呂に一人浸かり、溜まっていた疲れをほぐしていった。


その夜、夕食を食べながら明日からのどうしようかと話し合う予定で食堂へと集まった。


「しかし、あの魔窟が駄目ならどうしたら良いんだろうな」

「そうだな、最初の予定どおり王都とエラシスに分けてこもるか?」

悩む俺にエステマがそう提案する。正直どちらもぬるいレベルの魔物しか湧かないからな。せめて魔界にもう一つぐらい大きな魔窟があれば良かったのだが……


俺は少しでも眷属を増やそうと魔都以外を飛行艇で探索したので、魔都以外には大きな魔窟はない事も知っている。一応いくつかは魔窟は見つけたが、そこなら王都の方がまだ育っているように思える。


「待たせたのである!」

突然部屋に聞き覚えの無い声が響き慌てて身構えてしまう。


食堂の扉の前には金のラインが刺繍された黒いローブに身を包んだ白髭の男が、笑顔で腰に手をあて立っていた。


「始祖様。やっと来てくれたのですね」

リザがそう言いながらその白髭の男の横へと移動し、自分の師匠だと紹介してくれた。


今回の魔王メビオスとの戦いに力を貸してくれることになったらしいそのバンパイアの自称始祖、つまりリザをバンパイアにした年齢不詳の気の良いおっさんだという。

名をヴァン・パイアーというらしいが、多分適当に言っているのだと思う。


リザの長期間不在だったのは、このヴァンにも力を貸してほしいとお願いに行っていたと言うことらしい。


リザはヴァンの元を尋ねると、テンションマックスだったヴァンが「吾輩を仲間にしたいなら吾輩を倒してみせよ!ワハハハハ!」と言いながら攻撃してきたので、イラつきながら相手をしたようだ。

だがさすがに師匠、ということですんなり倒すことはできず長い間戦い続けたという。


「ずっと戦ってたのか?」

「そうですね。朝は10時からお昼休みを挟んで18時まで、その他は自由時間で各自休息となっていました」

リザの返答に思わず「なにそのホワイトな環境」と言ってしまった。


結局はなんとかヴァンをボコることに成功しリザが戻ってきたのだが、ボコられたヴァンは少し拗ねてしまい今日までこちらに来なかった、と言うことらしい。


「もし決戦までに拗ねているならエステマ様と一緒に引きずり出す予定でした」

「そうか……」

中々良い師弟関係のようだ。


「だって、吾輩、まさか弟子に負けるとは思わんかったもん!リザちゃんずるいんだよ?まだ若いからか毎日長時間戦っても全然疲れ溜まってないし……むしろ強くなってる気がするし……おじさんもう足腰痛くて……である」

「それは大変だったんだな」

労いの言葉を言ってみるとヴァンが「そうでしょそうでしょ」と縋り付いてきた。どうしよう?戦力になるか不安だ。あと取ってつけたような口調がうざい。


「始祖様との戦いでかなりレベルが上がりました」

「それは良かった」

リザが良い笑顔をしている。中々良い修行になったようだ。そして「マジ若者の才能ヤヴァい!」と言いながら両手の平を上にあげため息をついているヴァン。


最初の印象通りのうざいおっさんだ。


「それでも始祖様は本気出せば私より強いです」

「それは助かるな」

「短時間だけですけどね」

「それはそれは」

短時間とは言え、リザより強いなら十分に戦力となる。メビオスとの決戦であれば何日も戦い続けるということは無いだろう……無いよな?


少し不安にはなるが「とにかく大歓迎だ」と固い握手を交わし夕食を再開した。

俺が席に戻ろうと歩き始めた時には、ヴァンも当たり前のように開いていたイザベラの隣の席に座り「吾輩のはまだであるか?」と首をかしげていた。すぐにクリスチアが追加の夕食を用意してくれるようだ。


夕食が落ち着いた後は本格的な作戦会議が行われる。

挨拶代わりにとヴァンに俺たちの近況とそれぞれの所持スキルを説明する。


「魔窟の歪みであれば規模にもよるが、1週間もあればも元通りになるであろう」

「マジか」

「マジである」

何気に魔窟についての貴重な情報を教えてくれたヴァン。


「だがその魔窟はそれ以上の成長は無さそうであるな」

「そうなのか」

それならもうあの歪みに魔力を籠めるのは無理そうだな。だが育ちきっているなら眷属を増やす方向で利用するしかないだろう。


「しかし、なぜ格下ばかりを相手にしているか、吾輩には分からんのであるな」

「どういう意味だ?」

俺はヴァンの言葉の意味がわからなかった。エステマたちも同じように分かっていないようであった。


「レベルを上げるのであれば格上や同格ぐらいで戦う方が早いであろう?」

「そうなのか?」

「さあ?」

それならエステマたちと修行した方が早く強くなれるのだろうか?


「たしかに、始祖様と戦っていた時の方がレベルが上がった気がします」

なるほど。確かに俺もクロを倒してはいないがレベルが一気に上がっていたな。それを思い出して俺たちは明日からまた魔界の東の魔窟付近で組手でもしようということで話は纏まった。


そして毎度のことながらエステマが、クリスチアから食料などが入っている魔法の袋をいくつか受け取っていた。俺も同じように受け取りつつ持っていた魔法の袋から荷物を移し替え、空の魔法の袋をクリスチアに渡している。


この物資の補充を行うとまた明日からどこかにこもるのか、と感じて少しウンザリしてしまうが、そんなことも言っていられない状況というのも理解している。俺はクリスチアにお礼を言って明日に備えてベットへと潜り込んだ。


こうして拠点に戻ってきたばかりの俺たちは、またも魔界にとんぼ返りとなってしまう。

大きなベットにふかふかの布団に身をゆだねる。もちろん魔界でもベットは設置して寝るのだが、暫くぶりの部屋で安心して眠るという状況に安らぎを感じ、ゆっくり眠れそうだと思いいながら眠りについた。


◆◇◆◇◆


そして翌日、魔界へと向かった飛行艇の中にはヴァンを加えたいつものメンバーに加え、クロも一緒についてきてくれた。


『今回は魔窟には入らないで修行するのよね?』

「そうだけど、一緒に来てくれるのか?」

『私も少し上げておくわ。もうそろそろアンタごときに勝てなくなっちゃいそうだもの。それにあっちの魔王は生かしておくと安心して寝られなそうだし……』

「そうか」

俺はクロのその言葉に少し嬉しくなってしまう。俺にとってクロは師匠のようなものかもしれない。


そして飛行艇は何事もなく目的地の魔界の東側にある魔窟、歪みが消滅して魔物が湧かなくなってしまったあの場所へと帰ってきた。


相変わらず修行を続けている魔人たちに話を聞くと、やはりまったく魔物は出てきていないとのことで1週間程度は待たねばならないと再認識する。

それでもここを選んだのは、歪みが復活したのをいち早く知りたいからだ。


そう思いながら俺はエステマが家具などを収納していた魔法の袋から取り出した、ベットやパーテーションなどを設置する作業に加わった。何時まで修行をするのか分からないがまずは安心して休める場所を作るのは大事だ。


今回はクリスチアもそのままここに居てくれるようで、身の回りの世話をしてくれるようだ。その分イザベラは修行に専念してほしいとのこと。折角魔法の袋の中身を補充したのだが、使わなければそれはそれで良いだろう。


早速俺は魔人たちが主に修行しているスペースから離れた場所を、広範囲の黒炎で更地にしていた。久しぶりに広い場所で魔法をぶっぱなし少しだけスッキリする。


「じゃあ早速始めるか!」

エステマの号令でそれぞれが広がったスペースにおしゃべりをしながら歩き出した。


「じゃあ俺は、久しぶりにクロに相手してもらおうかな?」

『仕方ないわね』

クロが俺と少し距離を取って向かいあう。


「じゃあ私、どうしようかな?」

「真理はマリアとイザベラを相手に魔法の打ち合いでもしたらどうだ?真理は『結界』禁止な。さすがに二人では『結界』は壊せそうにないし」

真理の相手は茉莉亜まりあとイザベラに決まったようだ。


真理と茉莉亜まりあは嬉しそうだが、イザベラはちょっと不満そうだった。


「別に『結界』使ってもらってもいいのに!私がぶっ壊してあげるんだから!」

「そうだね。『祈祷』つかって二人で真理ちゃんやっつけちゃおうか」

茉莉亜まりあもノリノリでイザベラに乗っかっている。真理はそれを笑顔で見ていた。女子のああ言うノリっていいよね。


「では、吾輩はリザとエステマで三つ巴の戦いでもどうであるか?」

「良いなそれ!」

「そうですね」

ヴァンの提案であっちは3人でやり合うようだ。


お互い適度に感覚を空けつつ修行が始まった。


「さて、始めようかな?」

『アンタのその頭、また踏んづけてあげるわ』

相変わらず余裕のクロに先制攻撃で岩棘をガンガン飛ばしながら棍を速度重視で短めに持って振り回す。


クロはそれをスルスル躱し俺の視界から消えると、魔力の流れを見て振り向いたところに頭上から頭をぽふりと軽く叩かれた。

有言実行である。


「なんで……俺の方が能力値高いのに!」

俺は悔しさを口にして再び棍を振り回す。


我ながら棍の扱いも様になってきていると思うのだが、こうも簡単にあしらわれるのが納得できない。

それにちょっと前までそれなりに肉薄していたはずなのに……


『アンタは一直線すぎるのよ。見なくても軌道が簡単に予測できるわよ?魔窟にこもって弱くなってるのは何故かしらね?』

俺は足を止めた。


そしてその俺の頭をバシンと結構な勢いでクロに叩かれ「ぐおっ」と無様な声を上げ膝をついた。

確かに何も考えずに突っ込んでクロを目掛けて棍を振り回していた。相手の動きとか目線とかそんなのは見ていない……どうやらクロの言う通り、魔窟で格下相手に無双していたからか、行動がワンパターンになっていたようだ。


「はあ。やっぱダメだな。ありがとなクロ」

『ふん!お礼は良いから、ありがたく思うならもっと良い肉を献上することね。』

俺は「そうだな」と言いながらもまたクロに向かって棍を叩きつける。


今度は慎重にクロの動きを見ながら、棍と一緒に岩棘を地面に生えさせながら攻めて行く。それに一瞬びっくりしながらも軽やかに躱してゆくクロを少しづつ追い詰めて行く。そしてクロの体に棍がヒットしたのはその数分後であった。


「よし!」

思わずガッツポーズをした俺の腹にクロの突進が決まり、仰向けに倒れそのまま腹に座るクロに顔をペシペシされた。


まだまだ俺は未熟なのだと思い知らされた。

そして歪みが消滅した御蔭でそれを理解できたのは良い収穫だろう。


俺はリズミカルに顔を叩かれながらそう思っていた。

クロさん、そろそろ叩くのやめてもらえませんかね?

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