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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

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16 過剰

「じゃあ次は俺の番か」

「うん。真司、頑張ってー」

俺は歪みに近づき真理の気の抜けた応援を受け魔力をこめた。


対メビオスのための修行もそろそろ最終段階でも良いだろうと、ここ数日、主力全員で魔界の東の魔窟にこもっている。


とは言っても和気藹々とした様子ではあった。

持ち回りで歪みに魔力を注ぎ込んでは生まれ出た魔人や魔物をみんなで屠ってゆく。


俺はいつもの様に岩棘と雷刀らいとうで切り伏せてゆく。

本当は黒炎あたりで焼き尽くせばいいのだが、この人数だとさすがに息苦しさを感じると禁止令が出されてた。


魔窟に入る前は「全部私に任せて!」と鼻息を荒くしていた真理は『結界』で押しつぶす方法を選んだがさすがにここの魔人には通用せず、生まれ出た魔人たちの拳で結界が破壊されていた。

結局真理は茉莉亜まりあと一緒に『ホ―リーライト』を可能な限り使い続けるという方法に切り替えてもらった。茉莉亜まりあもかなり魔力が増えたようで長時間使っていられるようになっている。

もちろん定期的に『祈祷』も使ってもらっているので俺には魔人たちが若干手ごたえが無く、単純作業のようになってきている。


イザベラは『輪廻の輪』で俺たちが倒した魂を蘇らせ、生まれ出た魔人たちを攻撃させていたのだが連発しないようにしてもらっている。

ある程度時間が経つと消えてゆくとは言え、制限をかけておかないと使役した魔人だけでここらが埋もれてしまうので、俺と同じように岩棘により魔法攻撃をメインに戦っていた。


数日前にやっと拠点に戻ってきたリザは、拳で軽々と魔人たちを破壊していく。もっともリザのところまでたどり着ける魔人はあまりいないのだが……

エステマは当然のことながら聖剣で魔人たちを細切れにしていた。リザと同じくほとんど戦えていない。どう考えても過剰戦力である。


とは言え連日魔力を注ぎ込んだ影響だろうが、歪み付近の空間があからさまに広くなっているのは感じている。

気付いたらいつの間にか広がって様な気がする程度なのだが、ここにこもり始めた頃に比べたらかなり広くなっているだろう。多分階層も深くなり、地上まで戻る道のりも長くなっていると推測できた。


最初は過剰戦力だから2か所に分けてこもろうか?と西の魔窟も利用する計画も立てたが、この際一か所を徹底的に活性化させて強い魔人を湧かせては?というエステマの意見に乗っかり全員こちらにこもっている。


お陰で生まれ出る魔人たちが強くなっている気もする。魔物の方も竜種などを中心に見たことのない魔物も増えていた。


そんな中でも俺たちはまるで別荘地で余暇を楽しんでいるように、その広場から少し下がった場所に生活スペースを充実させてゆく。魔法の袋にはベットもテーブルも調理用の魔道具も入るから衣食住に問題は無い。

俺が独りでこもっていた時は、そこまでの発想はなかったから布団を出してごろ寝だったんだが……


各自が魔力を注いでいるのだが、戦闘も余裕なので回転も速い。結局、魔力の回復にポーションを大量に飲む破目になる。『聖杯』を持つ真理を除いては……


それと今回は全員がペアリングの指輪をしている。

真理に指輪を付けてと言われた時には少し緊張した。左手の薬指にを差し出され思わず震える手でなんとか付けたのだが、つけ終わった後で「婚約指輪だね」と言われた俺は「はは。そうだな」としか返答できなかった。

嬉しいのだが突然すぎて対応に困ってしまう。


そんなことがありながらもローテーションは回ってくる。そして魔力を全力で注ぎながらポーションを飲む……今日も5巡目でギブアップした。お腹がタプタプでもう入らない。せめてポーションが美味しければ……

それは他の面々も同様に次々離脱してゆくのでその日はそこで終了となった。


時間にして5時間程度で修行を終える。

また時間が経てばお腹も減るので再開できるのだが、初日に「食事がポーションのみになってしまうのでは?」という俺の意見にみんなが賛同してくれて、一度全員がギブアップしたら止めようと決めたのだ。


後は適度に休憩しつつ回復した魔力を注いでは倒すというゆったりとしたローテーションに切り替える。


それでも今日も10回程度はレベルアップ音を聞いたと思う。

もちろんペアリングの効果で他の面々もレベルが上がったようだ。順調にみんなが強くなっているのを嬉しく感じる反面、俺はまだ眷属を強化するスキルを得ていないことを悩んでいた。


メビオスが使っていたであろうあのスキル。もちろん俺は使うつもりは無い。だが覚えていないことに不安が募る。まだあの時のメビオスすら超えるほど強くなっていないのではないか?

そんな思いで決戦の時を何時にしようか迷っていた。


もちろん同じジョブでも違うスキルを覚えるというのも理解してはいる。真理と茉莉亜まりあも違うスキルを持っているから。そしてあまり悠長にも言っていられないのも事実。

せめて何かこう、これなら!っていうスキルを覚えておきたい。そう思いながら毎日を過ごしていた。


失敗は許されない。失敗はすなわち死んだという事だ。

そう考えると不味いポーションがなんだ!腹が裂ける寸前までやればいいじゃないか!と思いながらもやはり二の足を踏んでしまう。そこまで拒絶反応が出てしまうあのポーションを恨めしく思った。


そして適度に狩りながら夕食となった。


「あのさ……」

さっきまで妙に大人しかった真理が恥ずかしそうにしながら口を開いた。


「どうした?トイレなら向こうの方で携帯トイレに痛っ!」

岩棘が飛んできた。


「真司は黙ってて。分かった?」

「おう」

頬を染めながら怒った真理も可愛いよ。


「あのさ、あの歪み?あれに魔力こめるのって私だけやれば良いと思うんだけど……」

俺は思わず持っていたお手製の箸を落としてしまう……


他のみんなも動きを止めていた。

沈黙が続く。


そうだった。何もローテーションする必要はなかったのだ……魔力が高く『聖杯』持ちの真理なら一人でも魔力を供給できるじゃないか……


「な、なんで気付かなかったのか……」

エステマの言葉にやっと「そうだな」と俺も口を動かすことができた。


「じゃあ、明日からそういうことで……」

まだ恥ずかしそうにしている真理がそう言うと、みんな言葉少なく夕食を片付け始め、俺も早々に自分のベットに潜り込んだ。


◆◇◆◇◆


翌朝、早く起きた俺は、結界用の魔道具を片付けながら溜まっていた魔人たちを黒炎で消滅させると、その轟音で飛び起きたみんなと一緒に朝食を食べ始めた。

ちょっと酸素が薄くなった気がする。やはり炎は良くないな。


朝食が終わると早速真理が歪みに近づいてゆく。


「じゃあ始めるね」

そう言って手をかざし魔力を注ぐ。このメンバーの中では一番の魔力になっている真理の全力の魔力に、歪みがうねりまくっていて若干気持ち悪い。


そして急いで距離を取る真理と入れ替わるようにエステマとリザが距離を詰め、聖剣と拳により生まれ出た魔物を倒しつつ、さらに魔力を注いでいた。

この二人は基本的にスキルや魔法を使わないため、全力で歪みに魔力を注がないのであれば魔力が余ってしまうことが多かったので、今日はこの方法で最初に大量沸きさせて後は俺たちがスキルや魔法で、と考えていた。


暫くすると生まれ出るペースが落ち着いたので、エステマとリザが戻ってきた。それに合わせるように再び真理が『聖杯』により回復した魔力を注いでゆく。

今度は俺たちの番だな、と岩棘を連発して狩り尽くす。その間も茉莉亜まりあは『ホーリーライト』と『祈祷』で援護し、イザベラが適度に『輪廻の輪』と岩棘を使って攻撃に参加している。


その後も真理が『聖杯』で魔力を回復させては注ぎ、それを持ち回りで倒していく方法を繰り替える。それはお昼を挟みつつ4時間程度狩り続けたが、正直単調な作業で飽きてくる。


「真面目にレベル上げするのが馬鹿らしくなるな」

エステマがそう言うのが分かる。今日は20回ほどレベルアップ音を聞いている。それでも今は効率重視するのが最善だとなんとかやる気を保っていた。


そして真理がもう何度目か分からない魔力をこめ、そしてほぼ魔力が回復してきたエステマとリザも加わり魔力を注ぐ。


「あっ」

突然エステマがそう口にした。俺も同じようにつぶやきそうになった。


歪みがぐにゃりとなった瞬間、大きな亀裂が空中にできたのが見えたのだ。


「真理!」

俺は叫びながら真理のところまで『神速』で走り、真理を抱き寄せながら出来るだけ距離を取りつつも、万が一に備え背中に力を入れ魔力を纏わせた。


真理もなんらかの危険があると察したのか『結界』を歪みの方に向かって何重にも構築してゆく。それを横目で確認しつつ、エステマとリザが茉莉亜まりあとイザベラの方に向かって行くのが確認できた。、

向こうは二人に任せて良いだろう。そう思いながら俺は背後で魔力が急速に膨らむのを感じ、なんとか真理を守らなければと来るかもしれない衝撃を待っていた。


バン!と一度、大きく短い破裂音がして俺の背中には強い衝撃が加えられる。背中や後頭部に強烈に痛みを感じるが意識はある。何とか即死だけは免れたようだ。


「いってー!真理、大丈夫か?」

「う、うん……」

俺は後頭部を押さえながら起き上がると周りを見渡した。


エステマとリザは背中に見える肌に所々傷を作って血が垂れている。致命傷には到底見えない。二人が茉莉亜まりあとイザベラをしっかり守ったようで、俺はホッと胸を撫でおろした。


「エステマにリザ、大丈夫か?」

「これぐれー平気だぞ」

「問題ないです」

そこまで軽い傷でも無いんだが……


「いやいや、かなり血が出てるぞ?」

「お前もな」

なるほど。俺は自分の首を手のひらで触ると、ぬるっとした血液を感じた。最強装備ジャージの影響で背中は痛みだけだったのだが……


「あっ!二人が守ってくれたんだね。ありがとう」

音にやられたのかボーっとしていた茉莉亜まりあが状況を把握したのか、泣きそうな顔をしながらエステマとリザを抱きしめ『超回復』を発動したので、ついでに俺も段々と痛みが引いてゆく。


そして気絶していたイザベラも意識を取り戻し、エステマに抱き着いて「怖かったですー」とスリスリと腹筋に頬を摺り寄せていた。嬉しそうな笑みを浮かべて……


「まあ死人が出なくて何よりだ」

俺はそう言いつつ歪みの方へと視線を向ける。


「ちょっと、まずいかな?」

そこにあったはずの歪みが無くなっていた。


「無いな」

「無いよね」

「どうしましょう」

俺たちはため息をつくしかないようだ。


「まあ、もしかしたら時間が解決してくれるかもしれないし……」

「そうだな。一気に魔力を流しすぎたせいだろうが、その内復活するんじゃねーか?知らねーけど」

俺の言葉にエステマも肯定する。もちろん復活する根拠は何も無い。


「それか、この魔窟の許容量を超えてしまったということもあるのでは?」

「ここがこの魔窟の限界だったと?」

「その可能性も有るのではないかと」

リザの意見も一理ある。


「じゃあとりあえず一旦地上に戻る?」

真理が俺の背中に抱き着きながら提案した言葉に「そうだな」と俺が返事を返すと、茉莉亜まりあとイザベラも嬉しそうに「うんうん」とうなづいていた。


「じゃあそうすっか」

エステマの言葉を合図に久方ぶりに地上へ出るため歩き出す俺達。


さて、明日からどうしたものか……

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