表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/71

15 白狐

久しぶりのログマリオンの拠点に戻る。


俺は早速館に入ると、腕にしがみ付いている真理と一緒にイザベラが食堂へと案内してくれた。

そして運ばれてきた昼食を頂きながら待機していたニガルズに話を聞くと、白狐はっこという珍しい魔物が畑を荒らすようになったとのことで、討伐依頼が来ているのだと言う。

その白狐はっこは普段は人前には滅多に出ない大人しい魔物で、基本的には山でひっそり暮らしてるのだが、今回は畑を荒らす白く小さい狐を何度か依頼主の村の住人が目撃したらしい。


そして魔人たちがそれを眷属化するために出向いたのだが、あまりに素早く捕まえることもできず、失敗を繰り返して最後にはニガルズも同行して捕獲を試みたようだ。


結果は惨敗。

まるで瞬間移動のように素早い動きで捕まらず逃げられてしまうという。


それでも人数を増やしもう一度試したのが昨日の事。

途中まではうまく追い込んだのだが今度は全方向の氷のつぶてを飛ばされ、捕獲しようとした魔人が怯んだ隙に逃げられてしまったと言う。その攻撃については大した威力で無いようだが、無傷という程の軽い攻撃でも無いようだ。


俺はそのスピート特化の狐をゲットすべく、ニガルズ含む6人の魔人たちと一緒に現地の王都東北の村へと訪れた。

つい最近あの盗賊騒動があった村のさらに先の村である。


そこの村長に軽く挨拶をすると丁寧に頭をさげられた。

俺も「いやいやこちらこそ中々解決できずに」と謝り気まずい空気が流れたので、早々に村を出発した。


まずは何も考えずにその白狐はっこをよく見かけるという近くの山の中を探索する。幸いにもすぐに遭遇することとなった。そして喜んだのもつかの間、本当にあっという間に逃げられてしまった。

逃げられたというか蜃気楼のように消えたように見えた。瞬間移動スキルでも持っているのではないだろうか?魔力感知でかろうじて移動方向が見えたぐらいという驚くほどの素早さであった。


気を取り直して再度探索を続けた。

今度は慎重に周りを見ながら数十分。やっと1匹の白狐はっこを見つけたが既にこちらに気づいたようで喜ぶ前に視界から消えていった。

だが今回はすでに警戒をしながらの探索だったため、即座に魔力の移動方向のかなり先に向け、岩壁を作りだしていた。


強度なんかは二の次に薄く大きく作り出した岩壁。

次の瞬間その壁の一部が凍り付き、バリンと音を立てて穴が開けられていた。その瞬間、白狐はっこの姿が確認できたが、あっけに取られて次の一手へと動き出すことが出来なかった。


「魔王様……良く逃げた方向が分かりましたね」

「魔力感知で追っても無理か?」

「はい。とても追いきれません」

ニガルズのその言葉を聞き、俺は今度こそはと王都の魔窟に潜っているはずの眷属魔人を5人ほど召喚した。魔力がごっそりと持っていかれたのだが、仕方がないことだと何時ものポーションという苦行を行った。


総勢12名で付近に散らばり先ほど発見した地点を囲うように白狐はっこ包囲網を作った。

そしてジリジリとその輪を狭めて行く。


白狐はっこの姿を確認したらとにかく目の前一杯に広がる炎の壁を作れと命じておいた。向こうが氷でくるなら炎だろうと。


そして俺を含めた包囲網が狭まっている中、俺の前方にいる魔人の方から炎の壁が吹き上がった。そこを中心に魔人たちが炎の壁を作りつつ警戒しながら集まってゆく。慎重に、包囲網をすり抜けないようにゆっくりと……


そしてその輪が10m程度にせばまった頃、輪の中心でオロオロしている白狐はっこが確認できた。ここからどうしたものか……と思ったが、俺は攻撃ではなく交渉することを選択した。


まずは力を示さねば……そう思って左手を大げさに上げ地面へ振ってその場に黒く巨大な炎を燃え上がらせた。ビクリと体を跳ねさせる白狐はっこ。俺はさらに右手で特大の氷の山を築き上げた。ビジュアル大事。


「驚かせてすまんな」

俺の言葉にビクリと体をはねさせる白狐はっこ


「俺は一応魔王なんだが、君を無理に戦わせることはしない。だから俺の眷属になってくれないだろうか?お前のそのスピードが欲しいんだ。あと急に人里に出てきた理由も知りたいな」

俺はそう言って白狐はっこに向かって右手を差し出した。


首を少しかしげながら反応のない白狐はっこを見て、さすがにこれじゃダメかな?と思っていのだが、しばらくすると可愛らしくも小さな歩幅で傍まで近づいてきたので思わず口元が緩んでしまう。


「キュウ(魔王様……本当に戦わなくて良いのですか?)」

白狐はっこもどうやら心を開いてくれたようだ。


「ああ、もちろんだ。俺の眷属の中には湖に生息して一度も戦わずにひっそり暮らしている眷属もいるぐらいだしな。そもそも俺が戦う相手は強大だ。眷属の数の力で俺自身の力を上乗せさせたいだけなんだ」

俺の言葉に反応するように白狐はっこがさらに近づき、俺の差し出している手に頬を摺り寄せて行く。やばいなこれ……心がほっこりとする。


「それと、一応は畑を荒らすのをやめてほしいという依頼を受けている。それで、なんで急に畑を荒らしたのか聞きたいのだが……」

「キュウ(つい最近ですが……住み家にしていた山が火事になって焼けてしまいました。だから仕方なく群れで中腹まで下りてきて、でも木の実は少ないしお腹が減っちゃいまして……)」

「そうか、火事で焼け出されたってことか。それは災難だったな」

俺は慰めるように白狐はっこの頭を撫でる。


「あの、魔王様……」

俺の近くまで来てそう話し始めたのはニガルズだった。


「つい最近この山の山頂付近で討伐依頼がありまして……その、対象がファイヤーボアでして……」

俺は気まずそうなニガルズを見て、ある程度察してしまった。


「簡単に捕まえたってわけではないんだな?」

「はい。5匹ほどいたようで依頼を受けたグループはかなり苦戦して、そのボアたちに周りを燃やしながら逃げ回られた、と報告がありました」

「わかった」

俺は白狐はっこに向き直り頭を下げた。


「聞いての通りどうやら俺たちにも責任があるようだ。どうだろう?ここだと食料に困るだろうから、群れがあるならまとめて面倒見る。少し遠いが西の森の近くに移ってはどうだろうか?

もちろん食料も充分な量を用意する。あと連絡用に眷属を付けるから何かあれば遠慮なく言ってほしい。どうだろうか?」

そう言うと俺の影の中から1匹の影鼠かげねずみが飛び出し、白狐はっこに近づくとペコリと頭を下げ、そのまま影へと入り込んでいった。


自分の影を見ながら戸惑っている白狐はっこも、暫くすると落ち着いたようで俺の方を向いた。


「キュウ(魔王様、群れは僕も併せて10匹ほどです。良いでしょうか?)」

「ああ、もちろんだ。じゃあ群れを説得して連れてきてくれるか?」

「キュウ(かしこまりました!)」

そう言ってどこかへ消えていった白狐はっこ


暫くして群れの他の9体とも顔合わせを済ませ、それぞれに影鼠かげねずみが入り込んでいた。


そしてその中の1体が再度影の中から出てくると、白狐はっこ達を先導して移動を開始した。何事も無ければ1日程度あれば西の森にたどり着けるだろう。


ホッと胸を撫でおろし依頼を出した村まで戻り、無事解決したことを告げる。前回の依頼もこの村だったようで、こちらの不手際だった事を説明し、今回の報酬は断ってその村を後にした。


帰り際にせめてお食事でも、と言われたがその村長の後ろには村娘達が目を輝かせていたいので悪い予感しかしなかったため断っていた。いや、それが無くても断っていたけどね。

こうして俺の中で素早さがほんのり底上げされた感覚を覚えながら、久しぶりに良い眷属を得られた喜びを感じながら、近くに待機していた飛行艇に乗り込み帰路についた。


◆◇◆◇◆


空がうっすら赤くなってきた頃、拠点に戻る途中に通信具で連絡した俺の話を聞いてぜひ見てみたいと真理に言われ、拠点について早々待ち構えていた真理と茉莉亜まりあと一緒に西の森へとやってきた。


森の開けた場所に飛行艇を停泊させ、降りた俺は白狐はっこを『眷属召喚』で呼びよせる。


「キャー!何これ!可愛すぎる!」

「ホント癒されるわ」

「はうー!可愛すぎます!」

10匹全員を呼び出し群がるその可愛さに女性陣が大騒ぎとなった。


クリスチアはもう地面に寝そべり、4匹ほどが体にのって頬をスリスリされて口元がだらしなく緩んでいた。初めてみる表情に少しだけドキドキしてしまう。胸に乗ってポヨンポヨンしている1匹に釘付けに……

真理と茉莉亜まりあも両手に群がる白狐はっこに癒され満面の笑みを浮かべている。


「キュウ(魔王様、今日はこの子たちと遊ぶだけで良いんですか?)」

その内の1匹が俺の方を向いて話しかけてくる。


「ああ、悪いな。移動したばかりで結局働かせてしまって……」

「キュウ(いえ、僕もこの子たち好きです!いい匂いがします!)」

そう言いながらその白狐はっこは鼻をスンスンさせながら頬を摺り寄せている。


「そ、そうか……ああ、そう言えばこれ渡しておくな。これに触れて中身を見たいと想像すると色々入ってるのが分かるから。好きなだけ食え」

そう言って俺はその白狐はっこの影に入っている影鼠かげねずみを『念話』で呼び出し、その首に魔法の袋のついた首輪を付けた。


その影鼠かげねずみ白狐はっこの前に座って待機している。

熟練した『念話』のなせる技である。


真理の手から離れ影鼠かげねずみに取り付けられた魔法の袋に鼻をちょんと押し付ける白狐はっこ……何これ可愛すぎるー!って真理のように叫びそうになり恥ずかしくなって顔に熱がこもる。


「キュウ(魔王様!中に美味しそうなのがいっぱい!)」

「ああ、足りなくなったら影鼠かげねずみに伝えれば追加で誰かに持たせるから言ってくれ」

「キュウ(ありがとうございます!魔王様最高!)」

そう言いならがその白狐はっこも真理の方へと戻ると、あざとくもキュウキュウ鳴きながら再び頬を摺り寄せていた。


こうしてしばし癒しを得た俺たちは、再び飛行艇に乗り込むと拠点へと戻って行った。

今夜はよく眠れそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ