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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

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13 孤独

Side:真司


盗賊騒動から二週間ほど経過した。

俺は一人でひたすら魔窟に潜って修行に没頭している。


当然のように魔界の東側に位置するあの魔窟である。

魔界自体が魔力の元になる魔素が多く湧き出る土地というので、魔窟の方もどんどん成長するらしい。そのためかなりの階層に育っていっている様で、潜っても潜っても底にはたどり着けない。


幸い食料は大量にある。浄化用の風を送る魔道具はあるので衛生面も万全だ。だが日本人としては湯船に浸かりたい……そして何より戦うことに飽きた。昼夜を問わず狩り続けているので感覚がおかしくなっているのを感じる。

魔道具で時間は分かるのだが、つい狩りに夢中になっていると気づけば深夜だったりする。


することが狩りしかない状況で、強くならなきゃみんな死んでしまうと思うと寝るのは疲れた時に眠れる分だけ寝るという生活にになってしまう。そして最近では時計を見るのをやめた。

それによりさらに不規則な生活に拍車がかかっている気がする。


魔法を覚えたことで狩りの効率も格段に良くなったと思える。

例の魔法講座の次の日、リザに雷とか氷、それと何故か基本と思うのに教えられなかった風属性についても聞いてみた。その三つはレアな魔法書に記されているという事で一般的ではないという。

一応は火と水と土、そして光を組み合わせてどちらも再現することが出来ると言うが、複雑すぎて実用的ではないと言っていた。だがそれもエステマに話を振ったらすぐに解決してしまった。


「魔導書なら余ってるぞ?」

そんな感じで魔導書を手に入れた俺達は、少し複雑になった紋様と句を覚え、それぞれが修行に励み、すでに実践で活用できる程度に習得している。


特に風属性は速度アップなどにも使えるため多様していた。

そしてレベルアップと同時に『神速』も覚えてしまった。


この世界はこうやって覚えることも多いようで剣技の方も剣を振り続けることで発現する剣技スキルは多い。ただ相性はあるので覚えるのが遅かったり、一生覚えられなかったりもするようだ。

どうやら俺は剣技などは相性が悪いようだ。


棍をメインには使っているが、魔窟では散々雷刀らいとうを使っているのに一向に剣技が覚えられていないので間違いないだろう。


そんな中、明らかに魔王ジョブによるものだと思うが『眷属召喚』というスキルを覚えた。

だが試しに使ってみたが何も起きなかった。


「そう言えば誰をとも考えてなかったな」

そう思って今度はここ最近は魔人たちの取りまとめをしているであろうニガルズの姿を思い出しながら使ってみると、目の前の床に不思議な魔方陣が光ったと思ったら跪いたニガルズが現れた。


「魔王様、お呼び頂きありがとうございます」

「お、おお」

正直びっくりしすぎて声が上擦ってしまった。


「初めて使ったが呼ばれた時はどんな感じなんだ?」

「何となく呼ばれている感じがしたので……気づけばこの場に転移したようです。初めての行使に私を選んで頂けるとはなんと嬉しい事か……」

俺の顔を真っすぐに見てそう言うニガルズに、気恥ずかしくなってしまう。そこまで考えて使ったわけではないのだが……


「そうか。で、状況はどうだ?」

「概ね順調です。一部の冒険者が徒党を組んで文句を言いに来たので、ではお前らが魔王メビオスを倒せと睨みつけたら帰って行きました」

「そうか。分かった」

俺はやはり一定数の従わない冒険者がいることにため息をついた。そして……


「なあ、召喚したは良いがこれ、元の場所には戻せるのか?」

「はい。『お前など用はないわ!』などと思いながらもう一度お使い頂ければきっと元の場所へと戻されるでしょう」

「そ、そうか……」

言い方というものがあるだろ?と思いつつ、俺はニガルズに向かって手を軽く上げ、心の中でニガルズさん来てくれてありがとうございます。お帰り下さい。と思いながら再び『眷属召喚』を発動した。


そして目の前には誰も居なくなった……


「結局あいつ、跪いて微動だにしなかったな……」

そう思いながらも少しだけでも他人と会話できた喜びに頬が緩んだ。孤独はとてもつらいのだ。そう思いながらニーヤのことを思い出しまた少し落ち込んでしまった。


だがこれでメビオスの使っていたスキルのことが少しだけ理解できた。

ネルガルを引き寄せたりしたのはこの『眷属召喚』のスキルだろう。俺も戦闘中にスムーズに使えるように近いうち、主力となるであろう眷属魔人とは連携する練習をしておきたい。


そして俺は何の気なしにあのお調子者の火猿かえんを思い出し再び『眷属召喚』を使った。

目の前に現れた火猿かえんは、周りをきょろきょろしながら思いっきり動揺していたが、俺を見て驚き、そして「ウキキ(魔王様!魔王様!)」と両手を上げて喜んでいた。

その面白い表情を見せてくれた火猿かえんを見て、また少し心が癒され落ち着くことができた俺は、やっと火猿かえんに話しかける。


「元気か?」

「ウキキ(はい!もちろんです魔王様!)」

「そうか、じゃあな!」

「ウキキ?(魔王様?)」

結局火猿(かえん)にも短時間で帰ってもらうことになった。あまり悪戯に呼び出したりするのも悪いな。と心の中で謝りながら……


孤独感を癒した俺は、その後も修行を続けた。

そしてさらに魔窟を深く潜り続け、遂には最深部、行き止まりの場所へとたどり着くことができた。


そこには空間のゆがみのような何かがあった。

あの浅い魔窟があったオルトガの最深部では見られなかったものだ。


あそこはただの行き止まりだったがこの魔窟ではここまで視認できる歪みがある。

それだけこの場所が濃い魔素が湧き出ているということだろう。もうすでに何階まで下りてきたのか分からなくなっているほどひたすら降りてきていたのだ。


「さてと……」

俺はその歪みに近づくと、丁度その歪みがぐにゃりとさらに歪みこの階層に出現するタイプの赤黒い魔人が生み出されてきた。


一瞬驚き「うぉ!」と小さく声をあげたが、それを冷静に切り裂き消滅させる。そしてやっと歪みに向かって手をかざせる距離までたどり着くことができた。


エステマに聞いていた今回の目的であるレベルアップのための秘策。レベルアップをするには強制的に大量沸きさせるのが良いだろうという案に乗って、俺は全力でその歪みに向かって魔力を注ぎ込んだ。


歯を食いしばって限界まで絞り出した俺の魔力がどんどん吸い込まれてゆく。


全ての魔力を注ぎ終わると、俺は少しふらつきながらも距離を取り、鼻をつまんで魔力ポーションを飲み干した。口に広がる不快感にえづきながらもさらにアッポジュースを飲み干した。

お腹に満腹感を感じながら魔力がゆっくりと回復してゆく。


目の前の歪みがドクンドクンと脈打つような動きを繰り返し、そしてその歪みから全身に筋を浮かばせながら興奮した様子の魔人が這い出てくる。それを俺は力いっぱい切り伏せる。


先ほど生まれた魔人とは比べ物にならない抵抗を受けながらも雷刀らいとうがめり込んでゆく。だがそれは最後まで切り裂くことはできず、その魔人が苦し紛れに差し出した手から爆炎が飛ばされる。

これはまずいと思いつつ目の前に岩壁を作ってなんとか防ぐことができた。


想像以上に強い魔人が生まれてしまったと感じたが、俺は気を取り直して『神速』を使って壁を飛び越え、重力を加えて魔人を斜めに切り裂いた。そしてすでに生まれ終わって俺を待ち構えていた新たな魔人の攻撃を横っ飛びで躱してゆく。

俺はまだこれを行うのは早かったのかもしれない、と後悔しつつも再び距離を取った。


一旦かなりの距離を『神速』で後退すると、魔力がかなりの量回復していることを確認し、再び雷刀らいとうに魔力を流しこみ強く握り締めた。

その頃にはすでに多重に設置しておいた岩壁が砕け散り、3体ほどの魔人がこちらへと向かってきているのが見える。


それらに向かって岩棘を数発生成させて攻撃を加えておく。それでもその勢いは止まらず向かってくる魔人に、魔力を籠めまくった雷刀らいとうで力いっぱい叩きつけた。今度は焼けこげながらも綺麗に裂くことができた。

さらに後続の魔人たちからは魔法による攻撃が飛んでくるが、それらもまとめて魔力を纏った雷刀らいとうで叩き切っていく。


魔力が回復したことと距離が開いて余裕ができたことにより次々と襲い掛かってくる魔人を切り倒してゆくことができるようになっていた。

これは長い戦いが始まったと確信したが、愚痴も言ってられない状態なので一心不乱で魔人たちを葬っていった。


そして1時間程度の時間が過ぎる。

やっと魔人が襲ってくるペースがおさまってゆく。正直俺の方も魔力も枯渇しかけていた時だったので少しだけ安堵しつつ連なっていた最後の1体を切り倒した。


「予想以上にキツイな」

全身に汗をかきながら足腰や腕がプルプルと震えている。


少なくとも今の段階でこれの連投は厳しいと思ったが、この1時間だけで5回ほどレベルが上がっている。最近はこの魔窟内でも1日狩って同じ程度しか上がらなくなっていたのでこれを1日2、3回行うのも良いかもしれない。


そう思ってはいるが……正直しんどい。

そんなことを考えながらも、じわりじわりと奥の方からやってきている魔人を倒しながら、休息するタイミングを窺っていた。


「そろそろ拠点に戻って誰かと話したい……」

そう言いながらもう一度歪みに魔力を多少残しつつ注ぎ込むと、多少の疲労感を感じながらも大急ぎで地上へと戻っていった。もう限界だった。主に精神面でストレスが半端なかった。


やはり2週間ほとんど会話をしていないという事に嫌気がさしてしまっていた。


俺は次に来た時には魔人が大量に溢れ出てくるかもしれないと思いつつ3人ほど魔人を『眷属召喚』で呼んで待機させる。そして拠点へと帰るためにエステマに連絡を取った。


「次に来た時は眷属がいっぱい増えていればいいな」

そんな思いを抱えながら魔窟の入り口近くにベットを出すと、飛行艇が来るまで眠ることにして布団に潜り込んだ。


――――――

古川真司 ジョブ:魔王

力1505 硬925 速1105 魔1895

パッシブスキル 『異世界語』『神の加護』『魔軍』『念話』

アクティブスキル『神速』『眷属召喚』

――――――

新スキル

『神速』疾風の風を纏いし神の如き速度で駆けぬける風の精霊の力

『眷属召喚』眷属をその場に引き寄せる魔王としての力を行使する

――――――

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