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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

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12 盗賊

休息日を終えた俺は今、王都の北東の小さな村へと向かっていた。


真理が『解放』を使った日、国内の隷属の首輪は全て効力を失い奴隷たちは解き放たれた。解放された者たちは戸惑いながらも不当に扱われていた者や放置されていた者たちは歓喜した。

理由があり奴隷へと身を落としていた者たちはほとんどが再契約をしているようだ。


そのため、それほどの問題は生じなかった。

はずだった……


問題は犯罪などを理由に生涯を奴隷として過酷な環境で働かされている奴隷たちであった。

それらはほとんどが隷属紋という隷属の首輪と同等の効果を持つ刺青を体に刻まれていた。


それが全てかき消されてしまったのである。

そしてその隷属紋から逃れた重犯罪者たちが王都の北東の村を占拠、要塞化して盗賊団を作ってしまったと言う。


幾人かは途中で捕獲した後、新たに隷属紋をつける予定だという。その件もギルド経由で報告を受け、勇者によりその原因が真理の使用した『解放』のスキルであることもギルドに報告されていた。

ゆえに真理には『解放』を極力使わぬように厳命されるが、その前にともう一度『解放』を、ということで試してみると、どうやら今の真理なら限定的に使用できるようで問題なしと判断された。

使うたびに王都で奴隷紋がかき消されることもないと分かってホッとする真理。これで何かの際に放置奴隷を解放してあげることもできるのだとエステマも安堵していた。


そして問題の盗賊団の討伐に話は戻る。

今回俺たちに依頼が回ってきたのは、その集まった盗賊団の中に中に元S級冒険者が居ると言うのだ。


闇剣の(ダークソード)ウロビオス』

嘗てはそう呼ばれた凄腕の剣客であったが、訓練中の事故で相棒を死なせてしまいそれを衛兵に咎められ、事故だと主張するも高圧的に取り押さえられそうになり、つい殺してしまったという。


「いや、こいつ殺したのは事実だけど?相棒の死は本当に事故だったんだよ?マジで。悲しくて悔しくてやるせなくてって時に取り押さえられたら切れちゃうよね?分かるだろ?」

後の取り調べでそう言いつつも素直に従っていたウロビオスであった。


派遣された炭鉱ではリーダーとして良い環境作りに尽力し、面倒見も良く、周りからの信頼も厚かったようだ。少し後先考えない性格が伺えるが俺も少し好感を持ってしまう。


隷属紋が外れた時には「これで俺たちは解放された!俺たちの楽園を作るチャンスがきたんだ!みんな!一緒に頑張ろう!」と拳を上げ、そしてほぼ全員がそれに付いていったそうだ。

もちろんその噂を聞きつけ、その他の場所で解放された元重犯罪者たちも集まってしまい、今やその街には200人規模で集まっているというのだ。その信頼を別な方向で発揮してほしいと思った。


そのウロビオス老いたとはいえ戦闘慣れしており危険度も高い。さらにその他にも元A級冒険者が多数いると言うので、念のため魔人だけではなく俺も参加することにした。過剰戦力とは思ったがエステマとイザベラも参加することになった。

真理と茉莉亜まりあはお留守番で西の魔窟で修業中。一応魔人を3人サポートとしてに付けておいた。真理は茉莉亜まりあとペアリングを付けてご機嫌だった。リザは所用があるとどこかへ出かけている。


そんなことを考えている間に、目的となる村が見えてきた。

見る限り強固に要塞と化しているのが分かる。


鉄板のようなものが何十にも設置してあり俺たちの侵入を阻んでいるように見える。まあ飛び越えてしまえばどうってことないのだが……普通の冒険者には厳しいだろうと感じるほどの雰囲気が漂っていた。


村が見える位置に身を潜めた俺たちは少し様子を窺いながらイザベラへ声を掛ける。


「じゃあ、頼むな」

「任せてよ」

イザベラが地面に手をあてスキル発動の魔力が地面へと流れるのを感じ取る。


そして離れた村の中では盗賊団たちの悲鳴が響いていた。

恐らく殺されてしまった村人たちもいるだろうと思い、イザベラには『輪廻の輪』を使ってもらった。想像通りに村人たちはアンデットとしてよみがえり、見境なく周りを襲っているようだ。


俺は魔人たちが先行する中、エステマも引き連れて乗り込んだ。

鉄板を飛び越え、中の様子を伺うと、村人たちに剣を振り回して抵抗する者、恐怖で頭を抱えてうずくまるもの、冷静に切り倒して周りを助けようとするものが確認できた。


「うぎゃー!」

俺やエステマが戦うまでもなく、すでに先に飛び込んだ魔人たちがほぼすべてを抑え込んだのはその数秒後であった。戦力差がありすぎだと思ったが、この様子ではウロビオスはまだこの場にいないようだと思った。

魔人たちが如何に強かろうがさすがにSランクともなればこんなあっさりは組み敷かれはしないだろう。


そう思った時には拠点としているであろう中央の大きな建物の扉が開く。


そこから一人の男が出てきたのだが、俺はその男の雰囲気に危機感を感じ身構えてしまう。この隙の無い歩き方を見てもこの男がウロビオスなのだろう。


次の瞬間、盗賊たちを押さえつけていた魔人が3人ほど体の何処かしこから血を噴き出し、その場から飛びのいて距離を取っていた。


「ほう。剣技系のスキルか……」

そうつぶやいたエステマがその男に『神速』で駆けだし聖剣を打ち付ける。


その攻撃を持っていた細身の剣で受け止めるその男。

だがその勢いを止めることはできず出てきた建物まで吹き飛ばされていたが、その建物の壁に激突する直前に体を器用に回転させると、壁に足を着き体制を整えそすぐ近くに難なく着地をしていた。


「年寄り相手にいきなりひどい事するねえ」

「すまんが勇者なもんで、悪い奴には容赦しないと決めてるんだよね」

「俺達は国に不当に扱われたからよ。安心して暮らせる街を作りたかっただけなんだけど、なっ!」

その言葉と共に、他の党則たちを組み伏せていた魔人たちも、先ほどと同様に血を流しながらもその場を飛びのいていた。かろうじて数回剣を振るのが見えただけだが、俺にも見えないほどのスキルは厄介だと感じてしまう。


「エステマ、あいつの剣、見えたか?」

「かろうじて?そう言うスキルなんだろ。でも見えなくても何とかなるけどな」

エステマが自信満々にそう言うのだが、その間に解放された盗賊たちはウロビオスの周りに集まりこちらへ身構えている。


この集団に魔人が雷撃を叩き込み、それに合わせて他の魔人たちも魔法を叩き込むが、それらはウロビオスのスキルと思われる攻撃により飛散してゆく。

そのタイミングでエステマが走り出したので俺も援護射撃として久しく使っていなかった雷槍らいそうに魔力を籠めて投擲した。ついでにと覚えたての岩棘をいくつか放り込んでおく。


何人かの悲鳴がこだました後、集まっていた盗賊たちは吹き飛んでおり、中央ではウロビオスがエステマに地面にうつ伏せに押さえつけられていた。少しだけ得意気な表情をしてこちらを見ていたが無視をしておいた。


「俺は!こいつらが不遇に扱われるのが視て居られなかっただけだ!」

「なんだよいきなり!」

押さえつけられていたウロビオスが叫ぶ。


「そうです!あの炭鉱はひどかった!私たちは人間扱いされなかった!」

「俺も何もしていないのに毎日殴られていた!」

「俺だって、食事の量を減らされて……毎日腹が減った中くたくたに働かされて……」

ウロビオスの声に呼応するように倒れていた盗賊たちが叫び出した。


「分かった分かった!」

そう言いながら、エステマが魔法の袋から隷属の首輪を取り出しウロビオスの首に嵌めると、背中から足をどけ解放する。


「言いたいことがあるなら今のうちに行って置け!」

キョトンとするウロビオスと周りの盗賊たち。


「話だけでも聞いてくれるってか?」

「ああ。話の内容によってはお前たちの要望には応えよう。だが、お前たちは重犯罪者たちだということを忘れるなよ?」

「あ、ああ分かったよ」

体を起こし胡坐をかいたウロビオスが自分の肩をもみながらゆっくりと離し始めた。


「俺は、正直イラつきに任せて兵を一人殺している。だから犯罪者と言われても文句は言えねー。だが他の奴等は違う……奴もいる」

「なんだそれ」

歯切れの悪いウロビオスについ突込みを入れる。


「わ、私は王都で水商売をしてたんだけど……店外で貴族に無理やりやられてね……それで抵抗して殴ってやったら死んじまったんだよ……」

「そ、それは正当防衛だと思うんだが……」

「正当防衛?なんだそれ?」

女性の言葉に思わず正当防衛と言ってみたのだが、エステマには通じなかった様だ。まあそりゃそうか。


「いや、俺たちの国の言葉でな、正当な理由で反撃したから無罪、みたいなやつなんだよな、もちろんやりすぎはダメだけどな」

「なるほどな、でもこっちでもそれぐらいなら無罪放免になるはずだそ?まあ相手の貴族の親族が難癖付けて犯罪者にしたって話も聞くけどな……」

「そうそれ!」

エステマの言葉に肯定の意を見せる女性。


それを見て、ラノベなんかに良くある貴族の横暴でってやつだな。なるほど分かってきたぞ!と思った俺はその女性の次の言葉を待っていた。


「それで、今勇者様が言ったように親族が衛兵を連れてきて私を捉えようとするから……店の用心棒と一緒に親族も兵も皆殺しにしてやったのさ!」

「あっその時の用心棒が俺っス」

俺はため息と共にうなだれてしまう。


「他、他にはいないのか?今の話だとあまり擁護できねーよ」

「なんでよ!あのままなら私は今頃この世にいないのよ!」

「そうだそうだ!」

活気づくその女性と隣のおっさん……


「俺は……散々貢いだアフロディーテちゃんに裏切られ……それでつい首を絞め……」

次に話を始めた細身の男。


もうこの時点で駄目な予感しかしない。


「お店の中では愛してるだなんだって言ってくれたのに!自宅に行ったら追い返されちゃってさ!」

「もういい!これ以上話すな……」

その声からエステマが若干イラついているのを感じた。


「と、とにかくだな……現場は凄い劣悪だったんだ。犯罪者とは言えあの環境はひどい!改善を要求する!」

「はあ……分かったから。最低限の人権を尊重するようには俺が言っておくから……お前らもう喋らない方が良いと思うわ……」

取り繕うように環境の改善を要求する言葉に、エステマは優しくではあったがダマレと言っていた。


こうして盗賊団の拠点はつぶされ、新たに隷属紋を施されて各地へ戻っていった。


ちなみにその村の者たちは殺されてはおらず、隣の村へと皆追い払われていたようだった。イザベラの『輪廻の輪』により使役された村人たちは過去にその土地で亡くなっていた者達だろうと言う結論になった。

そして後の聞き取り調査により、本当に3人の女性が理不尽な貴族のせいで重犯罪者とされていたという事が判明し、国から賠償金が支払われそのまま解放されることになった。

そしてその3人とも熱狂的な勇者様信者となってしまい「衣食住の保証だけで良いですから!」と屋敷に押しかけ、イザベラたちと同じように住み込みの侍女として働くことになってしまう。

あと本当に何人かの不届きな管理者がいたようでそれらは処罰されクチとなった。これで待遇も少しは改善されるだろう。何かあれば勇者が出張ってくるという噂も一緒に流れていたので今後は大丈夫そうに思えた。


こうして盗賊団騒動は解決になったのだが、拠点にしている屋敷では、夜になると「一緒にお風呂に入りましょー!」と4人の侍女に追いかけまわされるエステマを見かけるようになったという。


めでたしめでたし


「真司、私たちも一緒にお風呂入ってみる?」

「いや、それはまた、今度な」

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