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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

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10 視察

Side:???


ネクサスの冒険者ギルド。

冒険者が疎らな夕刻の時間帯、誰も並んでいない受付のカウンター前までたどり着き、受付のふくよかな女性に声をかける。


「お姉さん、城の式典は見てきたかい?」

私は真司という新たな魔王の足跡を追い、城で行われた式典からこの寂れた街のギルドを訪れていた。


この冒険者ギルドが魔王真司が最初に目撃されたと言うのは王都ですでに聞いていた。そして目の前の女性に話のきっかけとしてそう問いかけてみた。


「私も行きたかったんだけどね。仕事があるから行けなかったんだよ。それよりあんたは見ない顔だね。他の街で活動している冒険者かい?」

「いや、私は冒険者ではないんだけどね。魔王の話を聞くならここだろうと興味本位に尋ねて見たって寸法さ」

「そうかい」

受付の女性は笑みを浮かべてこちらを見ていた。


「ああそうだ!あそこにいるドンガ、彼は見に行ってきたようだよ。熱狂的な真司君のファンだし話を聞いてみたらどうだい!」

「そうか。ありがとうお姉さん」

私はそう言って指差された男、食堂でエール片手に浮かれた笑顔を見せているドンガという男の元へと歩き出した。


「ここ、良いかい?」

「ん?なんだあんちゃん」

「旅の者なんだがね、午前中の王都での城の式典見てきてさ。ついさっきこの街にたどり着いたところなんだ」

「おお!そうかいそうかい!良い式典だったろ!」

ドンガと言う男は上機嫌で浮かれ、私に「まあ座れよ」と向かいの席を勧めていた。


「失礼するよ。それで……ここにも真司君という魔王の青年が来たという話を聞いたんだが本当かい?」

「ああ、まあな……」

私の一言でドンガの表情が曇ってゆく。


「アイツはな……すげーいい奴なんだよ。だけど俺は、金と名誉におかしくなっちまった。そんな俺をアイツは……」

「その話、詳しく聞いても?」

言葉を詰まらせたドンガに改めて問いかけると、ゆっくりとうなづくドンガ。


どうやら良い話が聞けそうだ。

それから手に持っていたエールをぐびぐびと飲み干したドンガがゆっくりと語り始める。


「真司君は、最初ぼろぼろになりながらこの街にやってきたんだ。なんでも森の魔物に襲われて逃げてきたって話でよ。そんでな、話をしてみると本当に常識がなくてな。ポーションのことすら知らないんだから……

一体どんなところから出てきたのか本当にびっくりしたのを覚えているよ。今考えれば異世界から来たんだから当然ではあるんだけどな。もちろんその時はそんなこと知らないから本当に不思議に思ったもんだ」

深いため息をついたドンガを見ながら、俺はさりげなくエールを注文する。


「そこで少しの時間だが色々な常識を教えたりして、ポーションも渡してやったらその味に大騒ぎしてな。んで飲んだ後に『痛みが消えてきた!』って言っては大けがした手を動かしてみて『痛い痛い』と騒いだり……

あん時はホントに変な奴だなと笑い合ったりしてよ……」

そこまで話すと泣き始めてしまうドンガ。


「そしてよ。金もねーし冒険者として活動したいというからギルドまで案内してよ、そこでベレスの姉さんに『魔王』だと言われ……俺はつい腰の短刀を抜いて追いかけたんだよ……魔王を倒せば金と名誉も手に入る……

あの時の真司君の悲しい顔は今でもたまに夢に見るんだよ。あの顔を俺は絶対に忘れちゃなんねー。そう思って生きることにしたんだ。そして俺に何ができるか分からないがせめて謝りたくてな。

彼もあのバカな国王の被害者なんだと……絶対に悪い奴じゃねーはずた!そう思って旅に出て、必死に探して、探して……そして見つけた。元気な姿を見た俺はホッ安心してよ。そして土下座して……

でもアイツはすぐにそんな俺に『土下座なんてやめてくれ』って『気にしてないから』って……俺の謝罪を快く受け入れてくれたんだ。そして今は元気にやってることも聞いて、俺は心が少しだけ軽くなったんだ」

涙を袖でぬぐったドンガは、さりげなく私が注文しておいたエールをグイッと飲みゲフっと汚い息を吐き出してた。


「そして今度は、あのバカな王は死に、真司君は勇者様と一緒に復活した魔王を倒すだとよ……あいつはスゲー奴だ!英雄だよ!俺はここで門番やってたんだけどよ、そんなもんは止めて冒険者になったんだ!

そして真司君の邪魔をしないように……他の冒険者たちにも真司君の邪魔をしないように協力しようってな……毎日そう話しながら生きてるよ……とにかくアイツはすげーんだ。すげーんだよ……」

ドンガはそんなことを語り、泣き、そしてテーブルに突っ伏してイビキをかきながら寝てしまったようだ。


私は「良い話をありがとう」と寝ている男に声をかけ、そのテールブの料金を払いギルドを後にした。


「さて、次はどこに行こうか?」

彼のおおよその足跡については調べがついている。この街を出てオルトガの街で見た目は違うがおそらくと言う情報があった。次はそこを訪ねて、そして次は王都だがそこはすでに話を聞いているし……

最後は西の都だったか……あそこも領主が彼と勇者に入れ込んでいると聞いている。どうせ街で聞いても似たように歓迎する声しか聴けなそうだな……私は今後の予定を考えながらため息をついた。


「魔王、思ったより受け入れられそうだ……忌々しい……」

私は思わず顔を歪めてしまう。


オルトガで話を聞いたら今回の視察もここまでになろう。まさか直接彼や勇者に話を聞くこともできないだろう。いや、機会があれば直接話してみたい気もするが……そこまで考えて私は身震いした。


あまりにも危うい。

彼の話を聞いて好感を持ってしまいかねない……


彼は『魔王』なのだ……滅すべき敵である!


そんな時、懐にしまい込んでいた通信具が光る。


「私だ」

『状況はどうでしょうか?』

「ああ。それなりに話は聞けているよ」

『そうですか』

「お気楽にも概ね受け入れそうな雰囲気が出ていたよ。勇者の演説は凄いね。人を引き付ける魅力がある……許されざることだ!」

『ええ。本当に』

思わず通信具を握る手に力が入る。


『では王子、話が聞けたのならそろそろ戻っていただきたいのですが……』

「分かっている。念のため後一か所だけ。それが終わればすぐに戻る。明日の夕方、行きと同じ場所で飛行艇を待たせておけ」

『かしこまりました』

私は通信を切るとため息をついた。


次の街で話を聞いたらまた国へ帰らなければならない……面倒だな。

しかしそれも王族の務め。


何より魔王と前魔王が同時に存在している。

どちらが勝つにせよ、残った方を消さねばならない。我が国の威信にかけて……願わくば共倒れとなってくれれば……そんなことを考えてしまうが、できれば自分たちで、いや、自分の手で最後は止めをさしてやりたい。


幼いころから国が抱えた積年の恨みを、いつかこの手で晴らす時がくるのを夢見ていたのだから。



Side:魔王メビオス


今や魔界と呼ばれる元ベルライト正教国の中心地にある城。

魔都の魔王城と呼ばれ魔人たちの巣窟となっていたその城では、十数年ぶりにその主である魔王メビオスが戻ってきていた。


「魔王様、順調ですね」

「ああ、そうだな。それよりネルガルよ。傷は癒えたか?」

目の前に膝をつくネルガルに声をかけるメビオス。


「はっ!忌々しくも勇者に負わされた傷、全て完治いたしております!」

「それは良かった」

メビオスは口元を緩ませ、ネルガルは思い出したように悔しそうな表情を見せていた。


「だがもう奴等への手出しは無用だ。精々強くなったと浮かれさせておけ。その方がきっと我に面白い顔を見せてくれるだろう」

「かしこまりました」

そのメビオスの眼前には巨大な魔窟の入り口が存在していた。


そこからは定期的に新しい魔人たちが這い出ている。

すぐ近くでは眷属と化した魔人たちが激しい戦いを繰り広げている。互いがスキルや魔法を打ち合い時にその命が消えてゆく。そしてメビオス自体も定期的にその集団に向かって黒い炎を飛ばしていた。


その攻撃により燃え尽きるもの、何とか耐え他の魔人に襲い掛かることを続けるものなど様々であった。

死した魔人は倒した魔人の糧となり、その力はメビオスにも還流される。


そして戦闘により常に魔力が満ちているその空間の影響で、魔窟は活発に動き出し新たな魔人や強力な魔物を次々と吐き出してゆく。より強い眷属を増やしそしてメビオス自身のレベルも上がってゆく。


それがここにメビオスが戻ってから日々繰り返されている。


「奴らも万全な準備が終わればここに来るだろう。その時は……我がその力を見せつけてやれば良い」

「さようですね!」

「魔王様!勇者は俺に譲ってくれるだろ?早く嬲ってやりたいよ!」

ネルガルはメビオスの言葉を肯定しながら岩棘を飛ばし数人の魔人を串刺しにしてゆく。ラマシュトは勇者との戦いを求めながらも、ネルガルと同様に斬撃を飛ばし魔人を屠っていた。


変えの魔人なら次々と生み出されてゆく。


「焦るなラマシュト。いつまでもやってこないのであれば、街の一つでも吹き飛ばしてやれば良い……次は勇者も参戦するだろう」

そう言いながら口元を緩めるメビオス。


その能力値の平均はすでに4000を超えていた。如何にこの凶事の効率が良いかが窺える。もちろん魔素の濃いこの場であるからできる方法ではある。


だが四六時中このようなことを続けているわけではない。

時には半日ほど瞑想をしならが眠るように意識を休め、魔力を回復させてゆくメビオス。その間も魔人たちは戦い、強くなりながら数を増やしてゆく。


次にメビオスが目覚めた時にはまた同じように屠られその数を減らしてゆく……

この場を数日の時を生きのこった精鋭たちだけが正式なメビオスの眷属となり、別の場で死なぬ程度の訓練を行えるのだ。こうして強固な魔王軍が形成されてゆく……


そして魔王メビオスは新米魔王が苦痛に顔を歪める未来を想像し、日々その気分を高揚させてゆく。

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