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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

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06 報復

「後は、任せろ!」

俺はニガルズ達にそう告げると、目の前に迫ってきているネルガルの岩棘を棍で弾き飛ばし一気に距離を詰める。


手持ちを棍から炎の剣に替え、それに上がった魔力をぶち込みながら振り抜くと大きな炎を放出しながらネルガルに迫ってゆく。だがそれはまたも岩壁によって阻まれる。


魔力の動きを見るかぎり、どうせその先には居ないであろうネルガルの次の出現ポイントを探りそこ目掛け走る。


タイミングを合わせて剣を振り抜こうとした場所には、ネルガルではなく黒い炎の塊が地面から吹き上がるように出現して慌てて飛びのいた。炎が地面を黒く焼き、炎が消えたその後ろにはネルガルの姿が見えた。

腹の立つことに俺の方を見て笑っているようだった。


「メビオスに言われて報復にでも来たか?」

「ふん!魔王様はそのような小さきことなど気にしてはおらんわ!」

そう言いながらネルガルが岩棘を飛ばしてくるので剣の炎で焼き崩す。


「じゃあなんで来たんだよ……めんどくさいなお前……」

「うっさいわ!魔王様は新米魔王が何やらやっているようだなと笑っておられただけだ!話を聞いてお前にひと泡食わせてやろうと思い、こうして私自ら態々(わざわざ)出向いてやったんだ!」

こんな夜も遅い時間に迷惑なこって……俺はネルガルの思惑通りとなって少し悔しいが、心の底から湧き上がる苛立ちを覚えた。


「だが、その顔を見れただけでも来た甲斐が有ったというものだな!」

「うっせー!」

俺は再び剣に魔力を流し込みながら睨みつけ、再びネルガルへと走りならが炎を叩きつけた。しかしそれもまた空を切る。


魔力の流れで次の出現ポイントに顔を向けるとすぐ横に風を感じて体をこわばらせた。


「おい大丈夫か!」

俺の横にはエステマが立っていた。


「ぐっ!いきなり現れたと思ったら……卑怯者め!」

少し離れた場所に姿を見せたネルガルが肩口から大量の血を流してこちらを恨めしそうに見ていた。エステマがすれ違いざまに切りつけでもしたのだろう。ざまーみろと叫びたい気持ちだった。


「魔族に卑怯者呼ばわりされるとはな……それより真司!いきなり飛び出して行くから時間がかかっただろ!行く方向だけでも言えよ!」

「す、すまん」

「おいこら!それよりとはなんだ!私を無視するとはいい度胸だ!」

俺は凄い勢いで怒られたのでとりあえず謝っておいた。半ば無視された形のネルガルは少しイラついたようで大声でエステマに叫んでいた。


「ふう……まあいいでしょう。この程度の傷……」

回復魔法なのか肩口に手をあてスキルを発動しているようだった。


「治りが遅い……その剣……聖剣ですね。それにその赤髪……ではお前のような卑怯で野蛮な者が今代の勇者ということか、なんと嘆かわしいことだ!」

「なあ、アイツ俺が貰っていいか?ぶっ殺してやるよ……」

ネルガルの言葉にエステマが静かにブチ切れていた。


「ああ、あのバカは殺っちゃって良いから、こっちにもその殺気飛ばすのやめてくれ。マジで心臓に悪いからな」

心臓が止まりそうな感覚を覚えながらこちらに飛び火するのは勘弁とその怒りをネルガルに向けさせる。能力値では近いところ行っているはずなのに……これが経験の差か。一体どんな修羅場を経験してらこうなれるのか……


「さすがに、勇者も一緒に相手するのは分が悪いですね……」

そう言うや否やネルガルが消えた。


魔力を探るがもう近くには居ないようだった。俺はホッとしたような少し残念のような複雑な気持ちになりながらドカリと地面に座り込んだ。エステマが居れば勝てそうだったのにな。

そのエステマは怒りの矛先が無くなり、聖剣を地面に叩きつけていた。ちょっと地面に裂け目ができていたのを見て、八つ当たりが飛んで来ない事を祈った。


「で、どういう状況なんだ?」

一度深呼吸して落ち着いたように見えるエステマが、俺の前に仁王立ちしながらそう尋ねるので俺は見たままを話した。


「そうか。眷属が殺されると何となく方角とかも分かると。じゃあ昼間突然魔人たちが凶暴化したのはメビオスが気付いてやったのだと言う仮定が成立するな」

「そうなるな」

「今後は眷属たちも対策が必要になるな……」

「ああ。ネルガルは個人的に報復に来たらしいが、それだって今後はメビオスの命令で来ることもあるかもしれないし……」

俺は深いため息をつくしか無かった。


折角手に入れた眷属が殺される不快感。4人の魔人が殺されたことで力の減少も感じたが何よりその不快感に怒りが込み上げる。できればメビオスにもっとそれを味わわせてやりたいものだ。


結局その日は俺がその魔人たちと一緒に大講堂で雑魚寝して一夜を明かすことになった。エステマは「ネルガル!今度会ったら100回殺す!」とか言いながら宿へと戻って行った。

俺も柔らかいベットで寝たかったな……


しかし今後は眷属魔人とは別行動の方が良い気がする。

一緒に行動するとメビオス達に補足されやすいから、次の街で眷属化した魔人たちとは速やかに別の場所で活動をするように何か考えた方が良いのだろう。


次々と問題が発生するこの状況に俺は気疲れをしながらも、気づけば固い床の上でも深く眠りに落ちていた。



Side:???


「で、では、どうしたら良いと思います?」

「そんなことを聞かれてもな。俺にも分からんよ」

破壊された城の中、幸い被害の無かった1階付近に設けられた会議室で話す男が二人、疲れた顔で話し合っていた。


ネルガル扮した宰相、ガリント・サレコウベの部下であった法務部の二人である。


髭を蓄え引き締まった体の老年の男が侯爵家の次男、セイドリ・アルセイドスは「困ったものだ」と深いため息をついていた。

まだ若く、文官学校を首席で卒業した若手のホープであった男爵家の3男坊のリカルド・ウルスマンは狼狽えるばかりであった。


何も考えられないのは当然だろう。二人ともそろそろ仕事をとまだ寛いでいた最中さなか、爆音を聞き急いで外を出ると、城の上部は破壊され青い空が見えていたのだから……


それから丸一日、碌に考えも出せぬまま日が過ぎ、今朝方、聖女付きのメイドであったはずのリザという女がやってきて、国王様は魔王メビオス、宰相様と聖騎士様もその側近であり聖女とその仲間により追い払ったと聞いた。


ゆえに今後の予定は未定である。

そのリザも今はいない。聖女と勇者、一緒になって魔王を討つための準備を始めるのだという。その時に纏わせた強者のオーラは冒険者でもない二人にもはっきりと分かるほどのものであった。


二人は小脇に角兎の入った檻を持ったリザを、震えながら見送るしかなかった。


「いっそ復旧や市民への報告なども勇者様に丸投げをしては……」

「それが一番無難ではあるがな、一度連絡をしてみたのだが、しばし待てと言われて切られてしまった。どうしたものか……」

二人は想像もしていなかった事態に唯々ため息をつくことしかできていなかった。


「とりあえず、冒険者ギルドには連絡をしなくてはいけないですね」

「そうだな」

数分後にやっと気持ちを切り替えることのできたリカルドはそう口を開く。


本当は昨日のうちにでも連絡せねばならないところであったギルドへの連絡、当然この情報はある程度は伝わっているだろうがこちらからも報告と相談もして、少しでも連携を取っておきたい。


リカルドが重い腰を上げ直接報告するために部屋を出ていった。

セイドリはその後に続くように部屋を出て、消し飛んだ城の上部と一緒に、王含む三人がいなくなったことでやる気を失った他の城勤めの者たちに、今さらだが片付けなどを改めて指示してからある場所へと向かった。


「いるか?」

セイドリが王宮魔導士の私室、つまりはあのドロウンズ・エラシスの部屋へと訪れた。ここは2階のため少しだけ天井がそげ、青い空が見えていた。


「ああ。私の行き場などどこにもないのだ」

その空を惚けながら見つめているドロウンズ。その頭には包帯が巻かれている。


昨日の城の破損でまだ寝ぼけていた彼は、落ちてきた天井の一部によりケガをしてしまう。幸い命に別状は無くすでにポーションを文句を言いながらも飲んでいるので治っているはずなのだが……

それから何をするでもなくこうして自室で時間を浪費しているのようだ。


「そろそろ王宮魔導士としてできることをしてもらわんと困るな」

「俺に、何ができるというのだ……」

首だけでセイドリを見ながらそう力なく話すドロウンズ。どうしてこう無気力になっているのかセイドリには分からなかった。


「一体何だって言うんだ!そんなにケガをしたのがショックなのか!」

「そんな事じゃない!」

苛立ちながらドロウンズに怒鳴ってみたセイドリだったが、それ以上の勢いで返されてしまった。


「俺は……すべてを失ったのだ……」

「話してみろ。おいぼれだが何か解決の糸口があるやもしれん。この困難を乗り切るには、王宮魔導士としてのお前の力も必要なのだ」

セイドリはあくまで王宮魔導士だという看板により、市民への安心感を与えてほしと思っての言葉だった。


「俺は……もう何を目指してゆけば良いのかわからない。昨日はケガをしたこともあって痛みに呻いていたが、今朝方……弟から連絡が来た……」

そう言って話し始めたドロウンズ。


弟からの通信具で魔王が復活したこと、王国は一時混乱するが準備はしてあるので難民は全て受け入れる算段だということ、そして「手伝えることもあるだろうから領地へ帰る」と言った俺に「そちらでも仕事があるでしょう」と遠回しに来るなと言われたらしい。

そしてスライス帝国の渡りなんぞ後回しと言われたことを聞いたそうだが、一番ショックだったのが従順だと思っていた弟からの拒絶の言葉と、実は勇者と連携して色々と準備を進めていたことが悔しかったようだ。


「俺は、あいつにとっても不要な存在だったのだろうか……」

セイドリは面倒くさいと思ってしまった。こんな時に自分の事しか考えられない奴など……いらないのかもしれないな。そう思ってしまう。


「はあ……自分自身でもう一度何をすべきか、考てみれば良いと思うぞ」

そう告げて部屋を出たセイドリ。市民を鼓舞する看板としての役目を担ってもらうことを諦め、重くなった足を引きずるように市民たちが集まってきている城の外へと歩き出していた。

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